聞きにくいこともしっかり確認、代理人としての紹介会社の役割
人材は弱い立場になりがち 面接時の服装で悩んでいた候補者
景気の回復傾向を受け、多くの企業が人材獲得に注力している。中途採用の市場も、少しずつ「売り手市場」の傾向が表れてきているようだ。ところが面接・選考という場面になると、どうしても企業側の立場が強く、人材側の立場は弱くなってしまう。本来は対等のはずなのだが、ちょっとした交渉や調整でも人材側は「こんなことをたずねて大丈夫なのだろうか?」と弱気になってしまうものだ。そんなとき、代理人として役立つのが人材紹介会社ということになる。
30分で十分到着できるはずなのに……
「土日に面接してもらうのは、やはり無理ですよね。今の仕事は残業が多く、平日はどうしても面接にいけないんですよ」
Yさんの面接日がなかなか決まらない。在職中なので、企業側からは「可能な日をいくつか出してください。少し遅めの時間帯になっても対応しますよ」と言ってもらっている。例えば19時スタート、場合によっては20時スタートでも面接してもらえそうだ。そこで、Yさんの都合のよい日をきいてみたのだが、毎日のように残業があるため、すぐには決められないという。調整後、メールをもらうことになった。
「やはり平日の定時前に退社するのは難しいです。P社到着は早くても20時30分以降になりそうですが、大丈夫でしょうか?」
Yさんの勤務先は18時が定時ときいている。面接予定のP社まで2時間以上もかかるものだろうか。インターネットの地図サービスで路線を検索してみると、30分もあれば十分到着できる距離だった。いったいどうなっているのだろうか? その理由は「服装」だった。
「現在、弊社では非常にカジュアルな服装で勤務しているので、いったん帰宅して着替えてからP社に向かう必要があると考えました。2時間半ほど時間がかかるのはそのためです」
Yさんからのメールを読むと、以前たまたまスーツを着て出勤したところ、同僚に「どうしたの? 今日面接でもあるの?」と散々からかわれたことがあったのだという。その時は、まだ転職活動はしていなかったのだが周囲の視線が気になって仕方がなかった。それはYさんにとって一種のトラウマになっていた。
「今は実際に転職活動をしているわけですから、もし以前と同じようなことになれば絶対に態度に出て、会社にあやしまれてしまうと思います。そのようなリスクは、何としても避けたいのです」
たしかにYさんの気持ちはよくわかる。普段忙しい職場では定時に退社するというだけでも、相当目立つ行為に違いない。ましてや、びしっとスーツで決めていれば「何かある」と思われても仕方ないだろう。
「わかりました。服装の件はP社さんに交渉してみます。まかせてください」
私はさっそくYさんに返信した。こういう仕事は人材紹介会社の得意分野なのだ。