「きめ細かいサポート」と「大きなお世話」の境界線
キャリアコンサルタントのジレンマ 細心の注意が必要な転職者へのアドバイス
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ある程度の年齢からは自己責任
結局、私はCさんにまばたきのクセのことを伝えるのはやめた。Cさんを紹介できる企業はいくつかあったので、細かいことを伝えて信頼を失ってしまうのは惜しいと思ったのである。とはいえ、面接の場でどうだったのかも気になる。
「先日は、ありがとうございました。Cさんの印象はいかがでしたか」
私は人事担当者に連絡してヒアリングしてみた。
「後日、正式に連絡しますが、おそらく2次面接に進んでいたたくことになると思います」
企業側の印象は悪くないようだ。
「面接の際に、何か気になった点はありましたか」
それとなくCさんのクセが面接に影響しなかったか、探りを入れてみる。
「いえ、特にはないですね」
もちろん企業側が「まばたきのクセが気になりますね」などと言うはずがない。仮にその理由で不採用になったと候補者本人に伝われば、どんな問題になるかわからない。ネットに書き込まれ、炎上すれば大きな損害が出ることだってある。
結果的にCさんは2次面接で不採用になってしまった。「他の候補者との比較検討により」という理由で、これには文句のつけようがない。
「今回は残念な結果でしたが、また条件のいい企業をご紹介します。今後もよろしくお願いします」
Cさんは了解してくれたが、私の中では「あのクセのことも伝えればよかったかもしれない」という気持ちが残っていた。もし他の候補者との差が紙一重だとしたら、クセは出さない方がいいだろう。Cさんと今よりも率直に話せる関係ができたら、ソフトに伝えてあげるべきかもしれないと私は思った。
似たようなケースはたまにある。小指の爪だけ長く伸ばしている人、薄いサングラスをかけている人、髪型やメイクが派手な人……。どれも「面接での好印象」を考えると何らかのアドバイスをしたくなるのだが、ひとつ間違えると「余計なお世話」になってしまう類のものである。
20代の若い人ならアドバイスするが、ある程度の年齢の場合は自己責任と考えて触れないのが実情なのである。
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