タナケン教授の「プロティアン・キャリア」ゼミ【第9回】
組織人でありながら、キャリア・オーナーシップを持つために――プロティアンの6タイプを意識しよう
法政大学 教授
田中 研之輔さん
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私は、プロティアン・キャリアを、以下の六つのタイプにまとめています。
プロティアン・キャリアモデル | キャリアの経路 |
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(1)トランスファー型 プロティアン・キャリア |
企業で働きながらビジネス資本を形成し、あるタイミングで転職し、これまで形成してきたビジネス資本をさらに蓄積しながら、新たな職場で社会関係資本を増やすキャリア |
(2)ハイブリッド型 プロティアン・キャリア |
企業で働きながら複数のビジネス資本を蓄積し、異なる ビジネス資本との掛け算で、その人にしかなし得ないユニークな市場価値をつくっていくキャリア |
(3)プロフェッショナル型 プロティアン・キャリア |
一つの専門性を深めてビジネス資本を形成。その専門性に関する新たな知見や動向をキャッチアップしながら、さらに専門性を深化させるキャリア |
(4)イントラプレナー型 プロティアン・キャリア |
社内資源を利用しながらビジネス資本を更新し、社内の機会を開き、外部との交流を重ねながら社会関係資本を増やすキャリア |
(5)セルフエンプロイ型 プロティアン・キャリア |
ある組織で形成したビジネス資本、社会関係資本、経済資本を元手に独立し、自分が得意な領域を形成するキャリア |
(6)コネクター型 プロティアン・キャリア |
社会関係資本の形成を大切にしながら、人と人をつな いでビジネスを生み出したり、人が集まるコミュニティをつくったりするキャリア |
(出典:田中研之輔 『プロティアン』 p.162)
この6類型にあるように、例えば転職とは、プロティアン・キャリア形成の一つの選択肢であるに過ぎません。社内研修を通じて、個人と組織の関係性をより良くしていくのがプロティアン・キャリア。特に (4)のイントラプレナー型プロティアン・キャリアは、社内資源を最大限に生かしながら、キャリア・オーナーシップを持つ、組織にとっても貢献度の高い働き方になります。
大切なことは、組織のことと個人のことを「同じだけ」考えることです。これまでのキャリア研修は、「個人のキャリアのみ」にフォーカスしすぎたことも反省点ですね。だから、研修の「中」だけの形式的なものになったのです。
キャリア研修も事業戦略の一環として、現場で必要とされることをキャリアとともに考え抜いていく。チャットに書き込んだり、KJ法で見える化したりするなど、諸々の手法を用いて実践していくのです。
その意味は、働き方の「トランスフォーム(変身)」にあります。
研修を通じて、「組織人として働きながら、自らキャリア・オーナーシップを持つビジネスパーソンへ変身する」のです。いつからでも、何歳からでも、いずれの職位からでも、それは可能です。やらないで悩むより、やってPDCAをまわしましょう。ビジネスシーンでの戦略的思考は、キャリアについても適応できます。
ウィズコロナの新時代、人事担当者の方々の社会的役割はますます高まっています。一人でも多くのビジネスパーソンが、組織への貢献と自らのキャリア形成を両立させることができるように職場を支え、人事制度を柔軟に変化に適応させていく――。人事には、日本型雇用2.0を創出していくことが求められているのです。
- 田中 研之輔
法政大学 教授
たなか・けんのすけ/博士:社会学。一橋大学大学院社会学研究科博士課程を経て、メルボルン大学、カリフォルニア大学バークレー校で客員研究員をつとめる。2008年に帰国し、現在、法政大学キャリアデザイン学部教授。専門はキャリア論、組織論。<経営と社会>に関する組織エスノグラフィーに取り組んでいる。著書25冊。『辞める研修 辞めない研修–新人育成の組織エスノグラフィー』『先生は教えてくれない就活のトリセツ』『ルポ不法移民』『丼家の経営』『都市に刻む軌跡』『走らないトヨタ』、訳書に『ボディ&ソウル』『ストリートのコード』など。ソフトバンクアカデミア外部一期生。専門社会調査士。社外取締役・社外顧問を18社歴任。新刊『プロティアン―70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』。最新刊に『ビジトレ−今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』
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HR領域のオピニオンリーダーによる金言・名言。人事部に立ちはだかる悩みや課題を克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。