企業における「懲戒処分」の実態
――横領の場合、8割近い企業が最も重い「懲戒解雇」を適用
多数の人が働く企業組織では、日々さまざまな問題が起き、企業秩序維持のため懲戒を検討しなければならないこともあります。しかし、社員が起こす非違行為は多様であり、それらに対してどのような処分をするか、懲戒規程に定められた基準だけでは判断に迷うことも多いでしょう。本記事では、民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)が2007年以降5年ぶりに実施した、「懲戒制度に関する実態調査」より、「モデルケース別に見た懲戒措置」「最近1年間における懲戒処分の発生件数」「解雇における退職金の支給状況」について、取り上げます。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
◎調査名:「懲戒制度に関する実態調査」
1. 調査時期・方法:2012年4月9日~6月1日。調査票の郵送により調査
2. 調査・集計対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3454社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)311社の合計3765社に送付。そのうち、回答のあった170社を集計
モデルケース別に見た懲戒措置
【図表1】に挙げた30のモデルケースが起こった場合、どのような懲戒処分をとるのか、過去の事案等から判断して回答いただきました(複数回答)。
最も重い懲戒処分である「懲戒解雇」を適用するという回答が多かったケースは、順に「(1)売上金100万 円を使い込んだ」(77.9%)「(9)無断欠勤が2週間に及んだ」(69.1%)「(17)社外秘の重要機密事項を意図的に漏えいさせた」 (66.4%)でした。そのほか、「(2)取引先から個人的に謝礼金等を受領していた」といった金銭が絡む非違行為については、懲戒解雇をはじめとする重 い処分を適用する傾向が見られます。
集計(回答)企業は異なりますが、前回2007年の調査結果と比較すると、「(5)事故は起こさなかった が、酒酔い運転のため検挙された」「(6)終業時刻後に酒酔い運転で物損事故を起こし、逮捕された」という飲酒運転の事案について、処分内容が重くなる傾 向が見られます。社会問題化している飲酒運転に対し、企業としても看過できず、より重い処分を課す傾向にあるといえるでしょう。
最近1年間における懲戒処分の発生件数
最近1年間に実際に発生した懲戒処分の件数は、最も軽い段階の処分である「戒告・譴責」が61社の合計で221件。一方、最も重い処分である「懲戒解雇」は19社の合計で40件です。
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