職場における喫煙対策の実態
喫煙や受動喫煙が身体に及ぼす有害性についての知識の普及や健康志向の高まりなどから、公共の場での禁煙化が進んでいます。企業においても、職場環境面や社員の健康対策の観点から、喫煙対策に取り組むところが多くなっています。こうした中、民間調査機関の労務行政研究所(理事長:矢田敏雄)では、「職場における喫煙対策に関するアンケート」を実施。本記事では、その中から喫煙対策や禁煙に関する意識啓発の実施状況、喫煙対策における今後の方針について、取り上げます。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
◎調査名:「職場における喫煙対策に関するアンケート」
1. 調査対象:労務行政研究所ホームページ上で「労政時報クラブ」(現「WEB労政時報」)に登録いただいている民間企業から抽出した人事労務担当者5615人
2. 調査期間:2011年2月2~9日
3. 調査方法:ウェブによるアンケート(本アンケートは(株)マクロミルのアンケートシステムを使用)
4. 集計対象:前記調査対象のうち,有効回答541社(1社1人)
就業場所における喫煙対策の実施状況
過半数の企業が「喫煙室」を設置。「全館禁煙」も4社に1社
厚生労働省の「職場における受動喫煙防止対策に関する検討会」が2010年5月にまとめた報告書(以下「報告書」という。こちらからご覧いただけます)によると、職場における受動喫煙を防止するためには、タバコの煙に曝露(ばくろ)(さらされること)しない対策を講ずる必要があり、その方法として「全面禁煙または空間分煙とすることが必要」とされています。
そこでまず、就業場所における喫煙対策の実施状況を尋ねました。なお、本社・支社・工場・店舗等で異なる場合は、回答者が勤務している場所について回答いただきました。
今回のアンケートに回答のあった541社では、「就業場所については、特に喫煙対策を実施していない」はわずか3社(0.6%)にとどまり、ほとんどの企業が何らかの喫煙対策を行っている結果が得られました。
具体的には、「喫煙室(※)を設置している」が最も多く、回答企業全体の57.3%と過半数を占めています。「喫煙コーナー(※)を設置している」は25.1%、「換気等により、有害物質濃度を低くする等の措置をとっている」は18.7%でした(複数回答)。
(※)アンケートでは、「喫煙室」「喫煙コーナー」を以下のように定義した。 喫煙室…出入り口以外には非喫煙場所に対する開口面がほとんどない、喫煙のための独立した部屋。 喫煙コーナー…壁やついたて等で区画された、喫煙可能な区域。
さらに、25.7%と4社に1社が「全館禁煙としている(社屋内に喫煙可能な場所は設けていない)」と回答。「喫煙室の設置」は規模が大きいほうで、「全館禁煙」は反対に規模が小さいほうで多くなっています。
なお、「その他の喫煙対策を行っている」(6.7%)の内容は、“(全館禁煙で)ビルから離れたところに喫煙場所がある”“(喫煙室を設置したうえで)喫煙タイムを設けている”といったケースでした。
ちなみに、「就業場所については、特に喫煙対策を実施していない」と回答のあった3社にその理由を尋ねたところ、「喫煙室等を設けるスペースがないため」「社内の合意が得られないため」といった内容が挙げられました。
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