企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

【ヨミ】ケンコウケイエイ 健康経営

「健康経営」とは、米国の経営心理学者のロバート・ローゼンが提唱した概念で、企業の持続的成長を図る観点から従業員の健康に配慮した経営手法のことです。従業員の健康が企業および社会に不可欠な資本であることを認識し、従業員への健康情報の提供や健康投資を促すしくみを構築することで、生産性の低下を防ぎ、医療費を抑えて、企業の収益性向上を目指す取り組みを指します。
(2012/3/12掲載)

健康経営のケーススタディ

健康づくりへの投資はリターン3倍
施策の整備だけでなく従業員の意識改革を

健康な従業員こそが収益性の高い会社をつくる――ローゼンによって“ヘルシー・カンパニー”(健康経営)の思想が提唱された1980年代以降、アメリカでは、企業が自社の従業員の健康づくりに積極的に取り組むことを“Fitness in Business”(企業フィットネス)と呼び、GE、テネコ石油、ペプシコ、NBCテレビ、GMなど多くの大企業がさまざまなフィットネスプログラムを導入、実施してきました。近年の研究では、企業が健康管理プログラムに1ドル投資すると3.27ドルの医療費抑制効果が上がる、つまり約3倍のリターンが得られるという結果が出ています。

日本でも従業員の健康を大切にすることで、会社の収益性を高める「健康経営」が注目を集めています。その背景には、医療費を含めた社会保障負担の増大が企業の「見えないコスト」として、日本経済の国際競争力に少なからぬ悪影響を及ぼしているという認識があるからでしょう。2007年に経済産業省産業構造審議会が示した「個人・企業の健康投資の充実を促すしくみづくりを進め、企業や社会における健康経営・健康増進の取組を促進する」との答申が起点となり、10年には日本経団連企業行動憲章(第6版)にて、「従業員の安全と健康の確保は企業経営における最優先事項の一つ」と規定されるなど、生産人口の減少が進むなかで健康に対する社会的な価値も変わってきました。

しかし、実態はどうでしょうか。生活習慣病の代表である糖尿病患者は、予備軍を加えて2000万人を突破。メンタルヘルス不調者も年々増加し続け、いまや6割近くの企業に何らかの問題を抱える不調者が存在するといいます。会社が健康増進のためのさまざまな施策を用意さえすれば、それで問題が解決するわけではありません。「いざとなれば健保がある」といったモラル・ハザードが生じている可能性もあります。従業員自身が施策をすすんで利用するよう、意識から転換を促さないかぎり、健康経営に取り組んでも十分な成果は得られないでしょう。

花王では、07年から健康づくりの支援ツールとして「健康マイレージ」を導入し、1日1万歩で10マイルを付与するなどのインセンティブを利用して、健康づくりに積極的に取り組む社員を支援しています。従来は健康を害している人のためにお金を使っていたのを、これからは健康な人に投資するということで、言い換えれば「治療から予防へ」の意識転換を図ったわけです。

また第一生命保険では、08年度の健康診断で社員の半数が血圧や血糖値などにリスクを抱えていたにもかかわらず、保健指導を行なう二次健診の受診率は27%にすぎませんでした。そこで、「保険商品を提供する職員として健康増進は競争力の源泉」とするメッセージを全社員に伝達し、健診結果統計や喫煙率、医療費などのデータも開示。健康教育を徹底し、社員の健康観の改革に務めた結果、これが奏功し、11年度の二次健診受診率は72%にまで上昇したそうです。

⇒健康経営についてもっと詳しく知りたい方はこちら

 

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

あわせて読みたい

ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチ
「ハイリスクアプローチ」と「ポピュレーションアプローチ」は、健康管理の領域で用いられる手法です。ハイリスクアプローチは、健康リスクを抱えた人をスクリーニングし、該当者に行動変容をうながすこと。ポピュレーションアプローチは、リスクの有無にかかわらず、集団に対して同一の環境整備などを指導することをいいま...
健康会計
「健康会計」とは、2008年に経済産業省(以下、経産省)が提唱した、企業による健康への取り組みを評価する新しい会計制度の呼称。従業員の健康増進のために企業がどれだけ投資したか、その「費用」と「効果」を定量的に把握、可視化するしくみで、健康投資に対する適切な意思決定を可能にするとともに、健康づくりに...
コラボヘルス
「コラボヘルス」とは、健康保険組合などの保険者と企業が積極的に協力し合い、労働者やその家族の健康増進を効果的および効率的に行うことを言います。現在国が進めている健康に関するデータを活用し、健康増進を図る「データヘルス計画」では、個人の健康診断の結果などを疾病予防や健康増進に有効に安全に活用する、保険...

関連する記事

健康経営を加速する「コラボヘルス」という新発想 企業と健保が強みを活かしあう協働の仕組みとは
社員一人ひとりの健康づくりを支援することによって、医療費の適正化と生産性の向上を図り、業績の改善を実現する「健康経営」。企業と健保との協働――「コラボヘルス」という新たな考え方にも注目が集まり、2014年4月には産学連携の研究機関「コラボヘルス研究会」が立ち上...
2016/08/29掲載注目の記事
人事マネジメント「解体新書」第105回 「健康経営」の時代 ~「コスト」から「投資」へ、健康増進への取り組みを位置付ける(前編)
従業員の健康は、企業経営を支える重要な基盤である。しかし、過重労働による心身の不調や生活習慣病の増加、それらに伴う医療費負担の増加など、その基盤を揺るがすリスクは年々高まっている。そうした中、健康増進への取り組みを経営上の「コスト」ではなく、戦略的な「投資」と...
2017/04/20掲載人事マネジメント解体新書
森永雄太さん: ただ「健康増進」を唱えるだけでは届かない  健康経営を従業員のやる気につなげる「ウェルビーイング経営」の考え方(後編)
従業員の健康につながる施策に会社をあげて取り組む「健康経営」の考え方が定着しつつありますが、一方で若い人ほど「健康」という言葉を軽くとらえてしまいがちであるのも事実です(前編参照)。健康的な食生活や生活習慣の重要性を頭では理解していても、実際には体に何の問題も...
2017/08/09掲載キーパーソンが語る“人と組織”

関連するQ&A

健康診断
入社時に健康診断は必ず実施しなくてはならないのでしょうか。 弊社では年に1度健康診断を行っていますが、雇い入れ時にはしていません。 社員から質問がありました。
雇い入れ時健康診断と定期健康診断について
平素より大変お世話になっております。 今年の4月採用の社員で雇い入れ時健康診断をなかなか受診しない者がおり、 ついに定期健康診断を受ける6月の時期になってしまいました。 今から別途外部で健康診断を受診しても定期健康診断と ほとんどの項目が重複する形となってしまいます。 そこで、6月に受診する定...
派遣社員の健康診断について
派遣社員の健康診断については、派遣会社が実施していますが、特殊健康診断については、当社が実施しています。 通常の健康診断についても、本来的には当社が実施しなければならないのでしょうか。
新たに相談する
相談する(無料)

「人事のQ&A」で相談するには、『日本の人事部』会員への登録が必要です。

新規登録する(無料) 『日本の人事部』会員の方はこちら
業務に関するちょっとした疑問から重要な人事戦略まで、
お気軽にご相談ください。
各分野のプロフェッショナルが親切・丁寧にお答えします。

関連するキーワード

分類:[ 安全衛生 ]

注目のキーワード解説をメールマガジンでお届け。

事務職派遣を検討中の担当者様へ 「よくわかる人事労務の法改正」ガイドブック無料ダウンロード

50音・英数字で用語を探す

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


いま、なぜ「ビジネスマナー」が求められるのか?<br />
~「型」を覚えることが人を成長させる

いま、なぜ「ビジネスマナー」が求められるのか?
~「型」を覚えることが人を成長させる

近年、若い人の言葉遣いや立ち振る舞いに対して、「違和感」を覚えることが...


ジェイエイシーリクルートメントが「バークレーヴァウチャーズ食事券サービス」を利用する目的とその費用対効果とは?

ジェイエイシーリクルートメントが「バークレーヴァウチャーズ食事券サービス」を利用する目的とその費用対効果とは?

企業が展開するさまざまな人事施策の中で、最近は「福利厚生」が大きな位置...