指針にそぐわない新卒採用の実情
関 夏海(せき・なつみ)
パートタイマー白書や学生を対象にした就職活動に関する意識調査など、当研究所が独自で行っている調査から見えてくることを考察します。
7月の終わりに、文部科学省と全国の国公私立大などで構成される「就職問題懇談会」から、緊急メッセージが発信されました。メッセージの内容は、8月1日から開始となっている「採用選考活動」について、公平・公正な採用選考活動を担保するよう、企業に要請するものでした。
緊急メッセージの発信があった翌日には、文部科学大臣からも公平・公正な採用選考活動の実施に関するメッセージの発信がありました。
緊急メッセージが発信された背景のひとつには、今年の新卒採用で特に話題になっている「おわハラ」の問題化があります。また、政府の意向を受けた日本経済団体連合会の発信した「採用選考に関する指針」にそぐわない実情がみられるためです。
当社が実施した「2016年度新卒採用に関する企業調査(2015年6月状況)」では、新卒採用を行っている企業に、内々定者に対して内定承諾書や誓約書といった「内定受諾意思確認書類」の提出を求めているかを尋ねています。結果は、提出を「求めている」企業が62.9%となり、「求めていない」企業を上回りました。
また、提出を「求めている」企業に対して、提出期限について尋ねました。最も多かった回答は「概ね2週間以内」で29.1%でした。「概ね1週間以内」「概ね2週間以内」「概ね1ヶ月以内」を足し合わせた、1ヶ月以内に回答を求める企業は、74.0%となりました。さらに、「概ね2~3ヶ月以内」という回答をあわせると78.3%となり、回答企業全体の約半数が、「採用選考に関する指針」で定めた10月1日の内定解禁の前に意思確認書類の提出を求めていることになります。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。