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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【機能訓練指導員】
お年寄りの笑顔を、自らの喜びに
老いと向き合った瞬間から始まる新しい成長をサポート

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介護業界の人材不足は深刻で、2025年度には253万人の需要に対し、およそ38万人が不足すると、厚生労働省は推計している。3K(きつい、汚い、危険)で魅力に乏しい職場というネガティブなイメージが先行、定着していることも人材確保を難しくしている一因だろう。しかし介護の現場には、高齢者をただ受け入れて面倒を見るだけでなく、もっと元気にしようというポジティブな動きも広がっている。そのキーパーソンとして期待されているのが「機能訓練指導員」である。

「介護予防」の主役には七つの国家資格のいずれかが必要

高齢者の危険運転による悲惨な交通事故が全国で相次いでいる。これまで被害に遭いやすい“交通弱者”といわれた高齢者が逆に加害者となる事例が後を絶たないのは、高齢化の進行で高齢ドライバーの数自体が増えているからだけではない。背景には、高齢者独特の身体特性や心理特性が深く関わっているという。ある調査によると、「自分の運転テクニックであれば、十分危険を回避できる」と答えた人の割合は、現役世代よりもむしろ65歳以上の高齢者のほうが高く、驚くべきことに、75歳以上では53%と半数以上にも達している。運転歴が長い分、自分の技術や経験を過信して心身の衰えを軽視する傾向があり、そうしたズレが危険運転の原因となりやすいというのだ。10年後には国民の五人に一人が75歳以上の後期高齢者になるという超高齢社会の中で、シニア世代は病気だけでなく、加齢による身体機能の低下とも日々戦っていかなければならない。急増する自動車事故の教訓に学ぶとすれば、大切なのは心身の衰えを早い段階で自覚し、受け入れ、それと正しく向き合うことだろう。

機能訓練指導員 イメージ

超高齢化社会を迎える日本においては、
“介護予防”の普及・推進が必要だ

2006年4月の介護保険法改正において、高齢者が要介護状態になることを防ぐとともに、要介護状態にあっても、その改善や悪化防止を目指す「介護予防」のアプローチが、国の制度として導入された。これを普及・推進するために、同法第4条は、国民自らも「加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して、つねに健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービスおよび福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする」と定めている。増大する介護予防のニーズ――その現場において重要な役割を担うと期待されているのが、「機能訓練指導員」と呼ばれる専門職である。

機能訓練指導員とは、介護施設や病院において、施設利用者を対象とした「機能訓練」――日常生活を営むために必要な機能の改善および減退防止のための訓練――を行う能力を有し、その指導を専門的に行うスタッフのことをいう。特別養護老人ホームやデイサービスセンター(通所介護施設)では、行政が定める配置要件として、必要な資格をもつ人員を必ず1名以上配置しなければならない、重要な職種である。ただし、「機能訓練指導員」という名称の資格があるわけではなく、機能訓練指導員として各施設で勤務するためには、医療・福祉に関わる国家資格のうち、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、按摩マッサージ指圧師、看護師・准看護師のいずれかを有することが要件となる。

ただ世話をするだけではない、高齢者の成長をサポート

転倒による骨折やケガ、認知症、脳卒中による身体機能の低下など、加齢に伴うさまざまな機能障害のリスクに対して早めにケアすることが、介護予防における重要なポイントであり、機能訓練指導員の業務の主眼でもある。具体的な内容としては、利用者一人ひとりの介護度や症状、目的などに合わせた機能訓練計画書(運動プログラムや訓練内容)を作成した上で、たとえば、杖なしで歩きたいという人には歩行訓練を、もっと体力をつけたい人にはストレッチや筋力トレーニング、食べ物をしっかり噛めるようになりたいという人にはあごを鍛えて口腔ケアを実施するなど、それぞれの生活の質の維持・向上に資する機能回復訓練を指導し、その評価を実施する。また最近では、機能訓練用の最新リハビリ機器を利用したり、ダンスやレクリエーションを取り入れたり、各施設の特色や創意工夫を生かしたメニューも増えている。

機能訓練指導員 イメージ

世話をするのではなく、“元気にする介護”
を行うのが、機能訓練指導員の仕事

もっとも、そうした訓練をすすんで受ける利用者ばかりではない。冒頭の高齢ドライバーの例と同様に、自らの心身の衰えと向き合えず、「自分はまだまだ元気だ、年寄り扱いされたくない」「体操なんてばかばかしい」と真面目に取り組もうとしない人はどこの施設にもいる。デイサービスで訓練を始めたばかりの高齢者が、集団で一緒に行うメニューについていけず、意欲を失ったり、通所自体を苦痛に感じてしまったりすることも少なくないという。そうしたとき、高齢者一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、信頼関係を築いていくことができるかが、機能訓練指導員の試金石となる。機能訓練の知識やお年寄りをサポートしたいという思いだけでは務まらない。人を元気にする明るさや朗らかさとともに、粘り強いコミュニケーション能力や的確なカウンセリング能力も求められる、プロフェッショナルな仕事なのだ。

一般に介護職というと、要支援・要介護状態にある高齢者の生活を、状態の進行に合わせて支援し、世話をする仕事というイメージがあるが、機能訓練による介護予防のアプローチは、単に世話をするだけではなく、状態を積極的に改善する介護、いわば高齢者を“元気にする介護”である。歩けなかった人が歩けるようになった、弱々しかった人が背筋もピンとして、動作がテキパキとしてきた――そんな場面に出会ったとき、機能訓練指導員は、何物にも換えがたい喜びを味わうだろう。いくつになっても成長できる人間の素晴らしさを日々実感できることこそ、この仕事の最大の魅力に違いない。

求人数はつねに豊富、パートで柔軟に働けるメリットも

先述のとおり、機能訓練指導員として働くためには、要件に該当する資格のいずれかを取得しなければならない。活躍の場としては、デイサービスセンターや特別養護老人ホーム、有料老人ホームなどの介護施設が一般的だが、近年は介護予防やリハビリなどをメインにした機能訓練特化型デイサービスという業態が増えており、社会的ニーズも大きい。こうした施設では、機能訓練指導員の能力がより強く求められている。

給料は、所得資格の種類や勤務先によって異なる。一般に介護施設は、病院のリハビリ施設などに比べて低いといわれるが、介護職として働く場合でも資格手当がつくので、介護業界の中では比較的高いほうである。資格別では、理学療法士・作業療法士で月収22万円~32万円/年収330万円~450万円、柔道整復師・あん摩マッサージ師で月収21万円~31万円 /年収300万円~420万円、言語聴覚士で月収20万円~30万円/年収280万円~400万円、看護師・准看護師で月収28万円~35万円/年収400万円~550万円が相場のようだ。もともと機能訓練指導員は配置基準が1名以上と定められており、各施設に欠かせない職種であることから、求人数はつねに多い。また、配置要件を確実に満たすために複数名を雇用しているケースも多く、施設によってはパートとして融通の利く働き方ができるのも魅力である。

この仕事のポイント
やりがい 歩けなかった人が歩けるようになった、弱々しかった人が背筋もピンとして、動作がテキパキとしてきた――そんな場面に出会い、いくつになっても成長できる人間の素晴らしさを日々実感できること
就く方法 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、按摩マッサージ指圧師、看護師・准看護師のいずれかを有し、介護施設や病院に機能訓練指導員として雇用
必要な適性・能力 ・機能訓練の知識
・お年寄りをサポートしたいという思い
・人を元気にする明るさや朗らかさ
・粘り強いコミュニケーション能力
・的確なカウンセリング能力
収入 理学療法士・作業療法士で月収22万円~32万円/年収330万円~450万円
柔道整復師・あん摩マッサージ師で月収21万円~31万円 /年収300万円~420万円
言語聴覚士で月収20万円~30万円/年収280万円~400万円
看護師・准看護師で月収28万円~35万円/年収400万円~550万円

 


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