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あの仕事の「ヒト」と「カネ」

【トイデザイナー】
たかがおもちゃ、されどおもちゃ
子供だましでは生き残れない業界のキーパーソン

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「コップのフチ子」「スマホのおふとん」「自由すぎる女神」――ポップで不思議な“おもしろガチャ”にハマっているという人も多いのでは? カプセルトイの販売機はすでに郵便ポストの数を超え、国内に20万台もあるという。ブームを支えているのは子供よりむしろ大人で、それは驚くほど精巧な模型やフィギュア、ゲーム、ハイテク玩具など、他のおもちゃにも共通する現象だ。オトナ心までひきつけてやまない「おもちゃ」は、どのようにして創られるのか。カギは「デザイン」。トイデザイナーの腕の見せ所である。

大人に照準――少子化にあらがい、市場を広げるデザインの力

6月、国内最大の玩具展示会「東京おもちゃショー2016」(主催・日本玩具協会)が、東京ビッグサイト(東京・江東)で開催され、期間中に16万人以上が来場するにぎわいを見せた。今やおもちゃもハイテク化が目覚ましく、国内外のメーカー160社が約3万5千点の玩具を出展した今回は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)を手軽に体験できるなど、先端技術を取り入れた玩具がトレンドに。スマートフォンと連動させてバーチャルな宇宙空間を移動している気分が味わえるVR玩具や、手描きの絵が動き出すタブレッド型の知育玩具など、大人も思わず夢中になりそうな新製品が注目を集めた。

実際、玩具業界は“大人”を強く意識している。国内の玩具市場は、少子化という構造的な課題を抱えるが、日本玩具協会の調べによると、2014年度に過去10年間で最高の売り上げを記録し、翌15年度もほぼ同水準を達成するなど堅調に推移。「少子化の中でも玩具関連市場と玩具業界の可能性は大きなものがある」(同協会)のは、ハイテク玩具の台頭が示すように、各社が顧客層を子ども以外にも積極的に広げているからだ。たとえば、タミヤの自動車模型のロングセラー「ミニ四駆」は現在3度目のブーム再来に沸いているが、人気を支えているのは発売当時に小学生だった30代の大人だという。タカラトミーが先頃投入した定番商品「リカちゃん人形」の新製品も、20~30代前後の“オトナ女子”を主な購買層と設定。従来タイプより大人っぽいファッションや凝ったデザイン小物を使い、2倍近い価格で売り出した。

トイデザイナー イメージ

精巧なミニチュア・フィギュアは国内だけでなく、
海外でも大人気だ。

“子供だまし”ではもはや売れない、生き残れない――。大人向けの、あるいはマニア向けのマーケットの確立・拡大に伴い、業界内でますます存在感を高めているのが「トイデザイナー」の仕事である。トイデザイナーとは、おもちゃ専門のプロダクトデザイナー。商品の企画意図やコンセプトを理解した上で、全体のフォルムや細部の質感、素材や価格、使い方や安全性、収納するパーツや附属品の取り扱いなども念頭に置きながらデザインを突き詰め、アイデアを形にしていく。大人の嗜好と鑑賞にも堪えるプロダクトとしての完成度は、トイデザイナーのスキルにかかっているといっても過言ではない。その最たるものが、近年は“クールジャパン玩具”として訪日外国人の爆買いの対象にもなっている“ガチャガチャ”=カプセルトイや、プチサンプルと呼ばれる精巧なミニチュア・フィギュアだろう。凝った仕掛けやハイテク要素などがない分、大人の遊び心をくすぐるポップな発想やデザインセンス、高度な造形力がなおさら求められるのだ。

トイデザイナーは通常、玩具メーカーやその周辺企業の社内デザイナーであるため、個人の仕事が注目される機会は少ないが、大人のファンやマニアが増えるにつれて彼らの間で名前を知られるデザイナーが現れるなど、昨今はプロダクトデザイナーの中でも徐々に脚光を浴びる存在になってきている。

ダメ出しの連続を乗り越えた先に、モノづくりの真髄が見える

子どもの情操をはぐくむ知育玩具やぬいぐるみから、ホビー色の強い大人向け、マニア向けのフィギュアや模型、プラモデルまで、トイデザイナーがデザインする対象は多岐にわたり、それぞれ専門ジャンルが決まっていることも少なくない。何のデザインを手がけるにしても、トイデザイナーに最も求められる資質は、「おもちゃが好き」「とにかくおもちゃが創りたい」という情熱と挑戦意欲、そしてそれらを具体的な製品に落とし込む実力――卓越したデザインスキルである。ブロックの「レゴ」で世界的に知られるデンマークの玩具会社レゴでは、デザイナー職を採用するにあたり、正式な面接などは実施しないという。オンラインのテストなどで絞り込んだ志望者を世界中からデンマークの本社に招き、シニアデザイナーたちの目の前でレゴセットのスケッチと組み立てをひたすら行わせるのだ。人材の見極めにおいて、何よりもデザイナーとしての純然たる実力を重視する、同社の姿勢がうかがえるだろう。

トイデザイナー イメージ

デザインだけでなく、安心・安全、機能面など、多くの要件を満たした上で、初めて商品として発売される

トイデザイナーはプロダクトデザイナーの一種であり、当然のことながら、ファインアート(純粋芸術)のアーティストとはその目的が異なる。製品をデザインする際、外観の美しさやインパクトは求められるが、最優先される目的は製品の機能や安全性、そして市場のニーズにある。どんなにかわいくても、かっこよくても、製品のスペックを満たさないデザインや売れないデザインは使いものにならない。その意味では、商品開発や製造、販売など各担当者との緊密な連携は必須であり、それぞれの要望を聞き入れた上でなおかつすぐれたデザインを実現するために、円滑なコミュニケーション能力やバランス感覚が求められる。また、市場にどのようなニーズが眠っているのか、次なるトレンドをいち早く察知できることも、適性としては重要だ。デザイナー自身にも、マーケティングの視点やスキルは欠かせない。

トイデザイナーの仕事には、他のプロダクトデザイン同様、経験を重ねるごとに腕が上がる“職人”的な側面がある。そのため、かけ出しの頃はデザイン案をいくつ出しても採用されず、ラフスケッチを無数に繰り返すことも。上司だけでなく、先述の各担当者やクライアントなどからもダメ出しの連続で、精神的にも体力的にもきつい思いをすることが多い。しかしその分、デザインが採用され、実際に製品化されたときの喜びは大きい。おもちゃ創りの現場では、数百円程度の“ガチャガチャ”にも、多くの関係者がクリエイティブの粋を結集させる。それを自らのデザインで形にできるやりがいは、まさにモノづくりの醍醐味(だいごみ)といっていい。

必要な知識やスキルを学ぶ道はあるが、就職先は“狭き門”

トイデザイナーを目指す進路には、芸術系の大学・短大・専門学校でプロダクトデザインやデジタルデザインなどを習得し、デザインのプロになる道か、あるいは工学系の学校・学科で学び、おもちゃのしくみやメカニズムに強いクリエイターになる道があり、どちらも基礎的な教養として、幼児・児童教育に関わる知識があると有利になることが多い。ただし、トイデザイナーの就職先そのものは、非常に狭き門である。一般的な就職先は、玩具メーカーと企画・デザイン専門の制作会社に分かれるが、社内にデザイン部門を抱える大手メーカーでも、デザイナー職の定期採用枠は年に数名のところがほとんどだろう。

トイデザイナーは、実力が成果に直結する仕事であるため、専門職として比較的高めの給与水準に設定されていることが多く、大手メーカーに勤務する人なら、平均年収は700万円程度になるといわれている。社内デザイナーの場合、デザインした商品がヒットしても個人の成果にはなりにくいが、社内あるいは業界内の評価にはつながるので、そうした実績をもとに独立して、フリーランスで活躍したり、会社を起こしたりする人もいる。独立して成功を収めれば、数千万円といった年収を手にすることも不可能ではない。

この仕事のポイント
やりがい デザインが採用され、実際に製品化されたときの喜び
就く方法 芸術系の大学・短大・専門学校でプロダクトデザインやデジタルデザインなどを習得。または、工学系の学校・学科でおもちゃのしくみやメカニズムを学び、玩具メーカーや企画・デザイン専門の制作会社に就職する
必要な適性・能力 ・「おもちゃが好き」「おもちゃが創りたい」という情熱と挑戦意欲
・各種条件を具体的な製品に落とし込む卓越したデザインスキル
・円滑なコミュニケーション能力やバランス感覚
・次なるトレンドをいち早く察知するマーケティングの視点やスキル
収入 大手メーカー勤務で平均年収700万円程度
独立して成功すれば、年収数千万円も

 


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