企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

『ビジネスガイド』提携

政省令・告示等を踏まえた
「改正労働者派遣法」求められる実務対応 (1/5ページ)

弁護士 藤田 進太郎(弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士)

2016/3/4

平成27年9月11日、改正労働者派遣法が成立し、同月18日に公布されて同月30日に施行されました。関係政省令・告示についても、同月29日に公布され、同月30日から施行されています。さらに、平成24年改正で創設された労働契約申込みみなし制度についても、適用対象となる期間制限違反の内容が変更されたうえで平成27年10月1日から施行されており、重大な関心事となっています。

本稿では、政省令・告示、附帯決議等を踏まえつつ、改正労働者派遣法および労働契約申込みみなし制度のポイントについて解説します。

1 改正労働者派遣法の主な内容

改正労働者派遣法の主な内容には、以下のようなものがあります。いずれも重要な改正ですが、派遣先にとっては、[2]労働者派遣の期間制限の見直しと労働契約申込みみなし制度施行の影響が特に大きいと考えられます。

[1] 労働者派遣事業の許可制への一本化
[2] 労働者派遣の期間制限の見直し
[3] 雇用安定措置
[4] 均衡待遇の推進
[5] キャリアアップ措置

2 労働者派遣事業の許可制への一本化

(1)概要

平成26年6月1日の時点において、労働者派遣事業は、届出制の特定労働者派遣事業が約76%、許可制の一般労働者派遣事業が約24%を占めていましたが、改正労働者派遣法は、派遣業界全体の健全化等の観点から、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業の区別を廃止し、すべての労働者派遣事業を許可制とすることにしました。

(2)新たな許可基準

以下の[1][2]が新たに許可基準として追加されました。派遣労働者のキャリアアップ、雇用の安定等を、許可基準を通じて実現しようとする立法者の意思をうかがい知ることができます。

[1] 派遣労働者のキャリアの形成を支援する制度(厚生労働大臣が定める基準を満たすものに限る)を有すること。
[2] 派遣労働者に係る雇用管理を適正に行うための体制が整備されていること。

[1]に関しては、派遣労働者のキャリア形成を念頭に置いた段階的かつ体系的な教育訓練の実施計画を定めていること、キャリア・コンサルティングの相談窓口を設置していること、キャリア形成を念頭に置いた派遣先の提供を行う手続きが規定されていること等が必要となります。

[2]に関しては、派遣労働者の保護および雇用の安定を図るため、以下の事項についても判断されます。

  • 無期雇用派遣労働者を労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。また、有期雇用派遣労働者についても、労働者派遣契約終了時に労働契約が存続している派遣労働者については、労働者派遣契約の終了のみを理由として解雇できる旨の規定がないこと。
  • 無期雇用派遣労働者または有期雇用派遣労働者であるが労働契約期間内に労働者派遣契約が終了した派遣労働者について、次の派遣先を見付けられない等、使用者の責に帰すべき事由により休業させた場合には、労働基準法26条に基づく手当を支払う旨の規定があること。
  • 派遣労働者に対して、労働安全衛生法59条に基づき実施が義務付けられている安全衛生教育の実施体制を整備していること。
  • すでに事業を行っている者であって、雇用安定措置の義務を免れることを目的とした行為を行っており、労働局から指導され、それを是正していない者ではないこと。

(3)経過措置・小規模派遣元事業主に対する暫定的な配慮措置

施行日時点で特定労働者派遣事業を行っている事業主は、施行日から3年間(平成30年9月29日まで)は現在の特定労働者派遣事業を行うことができます。3年以内に許可の申請をすれば、判断が出るまでの間も許可を得たのと同じ扱いになります。

photo

また、従来は資産要件のない届出制で済んでいたのが、許可制となると一定の資産要件が課されることになります。従前の資産要件だと厳しくて3年の経過措置では対応できない小規模派遣元事業主もありますので、施行日後に新たに許可を受けようとする小規模派遣元事業主に対しては、新たな許可要件のうち資産要件について以下のような軽減を行う暫定的な配慮措置がなされています。

(原則)
基準資産額(資産-負債)≧2,000万円×事業所数
現金・預金額≧1,500万円×事業所数

(1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が10人以下である中小企業事業主)
当分の間、
基準資産額(資産-負債)≧1,000万円
現金・預金額≧800万円

(1つの事業所のみを有し、常時雇用している派遣労働者が5人以下である中小企業事業主)
平成30年9月29日までの間、
基準資産額(資産-負債)≧500万円
現金・預金額≧400万円

他方、施行日時点で一般労働者派遣事業を行っている事業主は、施行日に改正法の労働者派遣事業の許可を受けたものとみなされます。有効期間は従来の許可の残存期間です。

施行日前にした許可・更新の申請で、施行日時点でまだ決定がなされていないものは、改正法に基づく申請として扱われます。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事にコメントする

この記事に対するご意見・ご感想のコメントをご投稿ください。
※コメントの投稿をするにはログインが必要です。

  • 1

1件中 11件を表示

1. ちゃあちゃんさん 情報処理・ソフトウェア 神奈川県
詳細まで踏み込んだ 且つ 一覧性がある 資料と感じました。

※コメントのほか、ニックネーム、業種、所在地(都道府県まで)がサイト上に公開されます。

※投稿をしたコメントは、『日本の人事部』事務局で確認後、掲載されます。投稿後すぐには掲載されませんので予めご了承ください。

人事・労務関連コラムのバックナンバー

人事労務管理の視点から見る ネット上の誹謗中傷対策
近年、ネットの匿名性を悪用し、会社や上司、同僚を誹謗中傷する事例や、従業員の安易な投稿により世間からの批判が殺到する、いわゆる炎上と呼ばれる事案が増えている。で...
2017/11/06掲載
ミドル層採用時の情報収集・経歴詐称・ミスマッチ等への対応
人材不足で売り手市場の現在、転職市場では、豊富なキャリアやビジネススキルを持つミドル層の転職者割合も上昇しています。そんなミドル層の中途採用をめぐるトラブルを踏...
2017/09/21掲載
“働き方改革”で注目を集める
勤務間インターバル 制度設計と就業規則
現在、長時間労働是正の策の一つとして注目されている「勤務間インターバル」制度。どのような制度で、先行企業ではどのように導入されているのでしょうか。また、導入の際...
2017/07/10掲載

関連する記事

派遣スタッフへの対応
派遣スタッフに気持ちよく働いてもらうために心掛けておくこと
2016/10/31掲載よくわかる講座
人材派遣会社の選び方
特徴や専門性から見極める、パートナーに最適な人材派遣会社とは
2016/10/31掲載よくわかる講座
派遣の終了・更新・解除の実務
スタッフの雇用安定措置にかかわる法律を把握した上で、講ずべき対応とは
2016/10/31掲載よくわかる講座
派遣開始と就業の実務
実際に派遣労働者を受け入れる際の実務と注意点をまとめた
2016/10/31掲載よくわかる講座
人材派遣の「戦略的活用」
雇用の多角化が進む中、人材派遣を戦略的に利用するためのポイントをチェック
2016/10/31掲載よくわかる講座
【用語解説 人事辞典】
グループ内派遣
従業員の健康づくりを通じて生産性向上を目指す!健康経営特集

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

社宅でもUR賃貸住宅
<アンケートのお願い>採用マーケットの構造変化に関する意識調査

記事アクセスランキング

注目コンテンツ


『日本の人事部』受けさせたいスキルアップ系講座特集

コミュニケーションや英語力、個人の生産性やPCスキルなど、ビジネス上必須となる多彩なプログラムをご紹介



「健康経営特集」
従業員の健康づくりを通じて生産性向上を目指す!

健康経営の推進に役立つ多彩なプログラムをご紹介。資料請求のお申込みや資料のダウンロードも可能です。


【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


「採用」×「AI」で、採用成果を実現する これからの人事に必要なもの

「採用」×「AI」で、採用成果を実現する これからの人事に必要なもの

HRの領域ではその時々、トレンドとなるワードがあります。最近は「AI」...


なぜヤマシンフィルタは“急成長”を遂げたのか 組織変革を実現する「評価制度」と「タレントマネジメント」

なぜヤマシンフィルタは“急成長”を遂げたのか 組織変革を実現する「評価制度」と「タレントマネジメント」

成長過程にある企業では、現状に合う組織づくりや人の育成が後追いになって...