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『ビジネスガイド』提携

診断書の情報だけで判断してはいけない!
精神科産業医が教える職場でみられる「うつ」の困難事例における具体的対応
(1/4ページ)

筑波大学医学医療系助教 宇佐見 和哉

2014/5/19
ビジネスガイド表紙
『ビジネスガイド』は、昭和40年5月創刊の労働・社会保険の官庁手続、人事労務の法律実務を中心とした月刊誌(毎月10日発売)です。企業の総務・人事・労務担当者や社会保険労務士等を読者対象とし、労基法・労災保険・雇用保険・健康保険・公的年金にまつわる手続実務、助成金の改正内容と申請手続、法改正に対応した就業規則の見直し方、労働関係裁判例の実務への影響、人事・賃金制度の構築等について、最新かつ正確な情報をもとに解説しています。ここでは、同誌のご協力により、2014年5月号の記事「精神科産業医が教える職場でみられる「うつ」の困難事例における具体的対応」を掲載します。『ビジネスガイド』の詳細は、日本法令ホームページへ。

うさみ・かずや ●筑波大学医学医療系助教。福島県生まれ。2004年3月旭川医科大学医学部医学科卒業。2010年3月筑波大学大学院人間総合科学研究科修了。精神保健指定医、日本医師会認定産業医。東京都知事部局精神科健康管理医、桜台江仁会病院精神科医師、浦和神経サナトリウム精神科医師を経て2013年4月より現職。産業精神医学が専門。精神科産業医として業務する傍ら、民間病院で精神障害による休業者の復職を支援するリワークプログラムを運営した経験を持ち、現在も精神障害者の社会復帰支援に広く従事している。日本思春期学会評議員、茨城労働局局医。著書に「公務員のための部下が「うつ」になったら読む本」(学陽書房・共著)がある。

職場のメンタルヘルス対策に関わっている方は、「うつ病」や「うつ状態」という言葉をよく耳にされるでしょう。多くは主治医が記載する診断書に基づくものですが、時には患者さん本人から、「自分は『うつ』なんです」と相談されることもあります。

うつ病の方へは、古くから「励ましはダメ」「頑張らせてはいけない」という対応が望ましいとされてきました。しかし、近年ではそのような対応をしてもうまくいかない事例が増え、職場においてさらなる混乱を招いています。この背景には、「うつ」と「うつ病」とが混同されていることが大きな原因になっています。この「うつ」は、医学的には「うつ状態(抑うつ状態ともいう)」とされるものです。本記事では、職場において困難事例と考えられるうつ状態の理解と具体的対応について解説していきます。

1.「うつ状態」とは何か

(1)「うつ病」と「うつ状態」の違い
photo

うつ状態を理解するためには、うつ病とはどういったものかを知っておくとスムーズです。うつ病をはじめとする精神障害のほとんどは、検査をして異常が見つかるというものではありません。そのため精神科では、どの医師が診察をしても同じ病名になるように、診断基準といわれるものに基づいて病気が診断されます。うつ病の診断基準を表1に示します。このように、5つ以上の症状が2週間以上にわたり持続している場合に「うつ病」と診断されます。

「うつ状態」とは気分の落込みや、意欲が出ないという状態を表したもので、病名ではありません。病気としてのうつ病であれば当然うつ状態にありますが、うつ状態がうつ病であるという構図は成り立ちません。うつ状態という言葉は、うつ病も包摂する、より広い概念であると理解することが適切です。

■表1 うつ病の診断基準(抜粋)
うつ病の診断基準(抜粋)
(2)困難事例となりやすい「うつ状態」

メンタルヘルスの重要性が広く周知されたことで、職場においてうつ病への対応が丁寧に行われるようになりました。ただし、一般的なうつ病への対応をしてもうまくいかない場合には、支援者が非常に苦労することになります。

職場のメンタルヘルスにおける困難事例の1つに、一見「本当にうつなのか?」と疑わしく思われるケースがあります。この代表的なものが、いわゆる「現代型うつ病」です。古くから、うつ病は特有の性格傾向を有する者が過重労働など過度なストレスにより心身が疲弊することで発症すると考えられていました。しかし、近年、強い自己愛と根拠に乏しい万能感をもち、合理的かつ他罰的な考え方を有している者が耐えられない困難に直面することで「うつ」を発症するというケースが増加しているとされ、前者を「従来型」、後者を「現代型」と区別されるようになりました。

そしてもう1つに、復職したはずなのにパフォーマンスが一向に上がらず長期にわたって職場での配慮を要するケースがあります。この場合、うつ病の病状回復が不十分であることが考えられますが、「統合失調症に伴ううつ状態」である可能性もあります。

それでは、まず「現代型うつ病」についてみてみましょう。


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4件中 14件を表示

1. *****さん 印刷 大阪府
断片的な知識がつながり、非常にわかりやすかった。
2. ちゃあちゃんさん 情報処理・ソフトウェア 神奈川県
同じ「うつ状態」でも、元となる病気に違いがあり、治療が異なるという点で理解に役立った。
3. *****さん 医療機器 大阪府
困難事例は具体的・現実的でしたし、人事として最新の精神病理的見立てについて知っておくことは非常に重要と思いました。
4. タナゴさん 情報処理・ソフトウェア 埼玉県
判りやすい内容で今後の対応に役立つものである。

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