早出を残業として扱うべきか
企業によっては、始業前にミーティングを行うこともあれば、掃除や業務の準備で始業前よりも早く出社することもあります。このとき、制服の着替えの時間や朝のミーティングが労働時間になるのかどうかが問題になることがあります。早出を残業として取り扱うべきか、早出が労働時間に該当するのであれば残業代はどのように計算すべきかについて解説します。
早出とは
早出とは始業時間より早く仕事の場所につくことです。ただ単に早く出社したからといって、労働をしていなければ労働時間にはなりません。
労働時間は「使用者の指揮命令下に置かれている時間」を指し、厚生労働省が2017年1月に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、「客観的に見て、労働者の行為が使用者から義務づけられたものといえるか否か」を判断基準にしています。つまり、終業時刻以降の居残り残業だけではなく、始業時刻前の早出も、使用者から義務付けられていれば、労働時間に該当すると考えられます。
ガイドラインでは、労働時間に該当する例として以下のケースを紹介しています。
- (1)使用者の指示・命令による業務上必要な準備行為
- 着用義務がある制服などの所定の服装への着替える時間
- 業務終了後に必要な清掃や後始末を事業場内で行った時間
- (2)使用者からの指示で即時に業務へ従事することや対応を求められていて、労働から離れる自由が保障されていない待機時間(手待ち時間)
- (3)業務上参加の義務がある研修・教育訓練の受講時間や、使用者からの指示・命令により行った学習時間
昼休みの電話当番などで、電話がかかってくることがなかったとしても自由に外出することができず、所定の場所で待機するように命じられているケースは、労働時間になると考えられます。早出時間も、使用者の指示・命令で行って業務に従事していれば、労働時間に該当します。
労働者が自身の判断で朝早く出勤するケース、通信教育の受講が義務付けられているが、労働者が受講する時間を選べるケースなどは、「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とは言えず、労働時間に該当しないと考えられます。
早出を残業と判断すべきか
早出時間も、業務上必要で上司からの命令で出勤しているのであれば、労働時間として扱うべきです。早出した時間と始業から終業までの実労働時間を合計して、所定労働時間や1日8時間となる法定労働時間を超えていたら、残業時間が発生し、残業代を支払う必要があります。
早出を労働時間とするケース
所定労働時間の前や後の時間は一般的には労働時間に該当しませんが、特別な事情があれば、労働時間に該当すると考えます。たとえば、上司から指示された、早出しないことが遅刻として取り扱われる、注意指導・懲戒処分などのペナルティの要因になる、といったことがあれば、労働時間に該当すると言えます。
黙示の指示とは
部下が自主的に早出を繰り返していて、上司がその行為を認識しているにもかかわらず止めさせないのであれば、「黙示の指示」として労働時間とみなされる可能性があります。上司が何も言わないことは「承認している」と判断されることがあるため、必要がなければ早出をしないように指示することが重要です。
朝のミーティングを行うケース
朝礼や会議を早朝に実施し、参加が義務付けられている場合は、労働時間に該当します。自由参加で普段から参加しない人がいるケースでは労働時間とならない可能性がありますが、営業ミーティングや職場全体に周知する目的で朝礼を行うのであれば、労働時間として取り扱う必要があります。
テレワークの早出はどう扱うか
テレワークでの早出についても同様です。テレワークでも始業時刻と終業時刻が定められているはずであり、始業時刻前にオンラインでミーティングや業務の準備・作業をしていれば労働時間に該当します。
早出を残業として扱う場合の残業代計算
早出の時間を残業として扱う場合、基本的に通常の残業代と同じ方法で計算します。労働基準法では1日の労働時間を8時間以内と定めており、早出した時間と始業から就業までの実労働時間を合計して8時間を超えていれば、時間外労働の割増賃金の支払いが必要です。
実際には早出の時間が残業として時間外労働の時間になるわけではなく、実労働時間で計算して1日8時間の法定労働時間を超えた時間から時間外労働に該当します。早出をして業務を始めた時間からカウントして、8時間を超えた部分から割増賃金の支払い義務が生じます。
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