社内コミュニケーションに関する若手社員意識調査
若手が望む上司・先輩と交流を深める手段、1位「就業時間内の雑談」59.7%
累計20,000社450万人以上の組織開発・人材育成を支援するALL DIFFERENT(オールディファレント)株式会社および「人と組織の未来創り🄬」に関する調査・研究を行うラーニングイノベーション総合研究所🄬は、若手社員の社内コミュニケーションに関する調査を分析しました 。
背景
日本のビジネス文化では、1年の労をねぎらい、社員同士の親睦を深める「忘年会」という慣習が大切にされてきました 。社内コミュニケーションは、信頼関係の構築やチームの一体感、イノベーションの創出にもつながる重要な要素です 。近年は、リモートワークやフレックス制度が普及する一方で、一部の企業ではオフィス回帰・出社回帰の動きも見られ、リアルコミュニケーションの重要性が再評価されています 。
他方で、「業務外の飲み会」や「職場でのプライベートの共有」に対して心理的なハードルを感じる若手社員もおり、多様な価値観やライフスタイルを尊重しながら、どのように若手社員と交流を促進していくべきか、模索している企業も多いことでしょう 。そこで、当社では、若手社員が社内コミュニケーションに対してどのようなニーズを持っているか調査しました 。
調査結果の概要
- 若手社員が最も交流したい相手は「仕事で直接関わる先輩」、6割以上が回答
- 若手社員が求める社内交流の手段、「就業時間内の雑談」「就業時間外の雑談」が上位に
- 「職場の人間関係」重視の若手社員、求める社内交流の手段は「就業時間内の雑談」が最大
- 「仕事を通じた成長」重視の若手社員、求める社内交流の手段は「就業時間外の雑談」が最大
- 今の会社で働き続けたくない若手社員、「面談」を求める傾向に
- 上司と良好な関係を築く若手社員は、周囲の先輩と業務外の交流が「頻繁にある」傾向に
- 考察 若手社員と相互理解・信頼関係を深める取り組みとは
調査結果の詳細
1. 若手社員が最も交流したい相手は「仕事で直接関わる先輩」、6割以上が回答
まず初めに、社内のどのような相手と交流を深めていきたいと考えているか、質問しました 。結果、「仕事で直接関わる先輩」と64.5%が回答し、最大の割合となりました 。次に、「自部署の、役職が1つ上の上司」(45.1%)、「性格や価値観、趣味などが合う先輩」(43.8%)と続きました 。
2. 若手社員が求める社内交流の手段、「就業時間内の雑談」「就業時間外の雑談」が上位に
次に、上司や先輩とどのような手段で交流を深めていきたいかを質問しました 。結果、「就業時間内の雑談」と回答した割合が59.7%と最大となりました 。次に、「休憩時間や就業時間前後の雑談」(57.0%)、「平日のランチ」(40.0%)と続きました 。一方で、「SNS」(8.2%)や「メールやチャット」(16.1%)による交流を求める人は、少ないことがわかりました 。
3. 「職場の人間関係」重視の若手社員、求める社内交流の手段は「就業時間内の雑談」が最大
ここからは、求める社内交流の手段について、働き続ける上で重視することにより違いがあるかを調査しました 。
まずは、どのような状況であれば、今の会社で働き続けたいと思うかという質問に対し、「職場の人間関係」と回答した新入社員2,585人を取り上げて、求める社内交流の手段を調査しました 。結果、職場の人間関係を重視する社員は、「就業時間内の雑談」(62.5%)と「休憩時間や就業時間前後の雑談」(61.7%)の回答が、どちらも6割超が回答する結果となりました 。次に、「平日のランチ」(41.9%)、「平日の飲み会」(41.6%)が続きました 。
3,930人全体の回答割合と比較すると、「休憩時間や就業時間前後の雑談」は4.7ポイント、「平日の飲み会」は3.3ポイント、「就業時間内の雑談」は2.8ポイント高くなり、働き続ける上で「職場の人間関係」を重視する社員は、業務内外問わず、雑談を重視することがわかりました 。
4. 「仕事を通じた成長」重視の若手社員、求める社内交流の手段は「就業時間外の雑談」が最大
次に、どのような状況であれば、今の会社で働き続けたいと思うかという質問に対し、「仕事を通じた成長」と回答した新入社員1,318人を取り上げて、求める社内交流の手段を調査しました 。結果、仕事を通じた成長を重視する社員は、「休憩時間や就業時間前後の雑談」と回答した割合が最も高く、61.8%となりました 。次に、「就業時間内の雑談」(60.9%)、「面談」(42.3%)と続きました 。
3,930人全体の回答割合と比較すると、「休憩時間や就業時間前後の雑談」と回答した割合は4.8ポイント、「面談」と回答した割合は、4.2ポイント高くなりました 。働き続ける上で「仕事を通じた成長」を重視する社員は、業務内外の雑談だけでなく、「面談」も重視することがわかりました 。
5. 今の会社で働き続けたくない若手社員、「面談」を求める傾向に
どのような状況であれば今の会社で働き続けたいと思うかという質問に対し、「今の会社で働き続けたいとは全く思わない」と回答した新入社員30人を取り上げて、求める社内交流の手段を調査しました 。
結果、働き続けたいと思わない層では「就業時間内の雑談」が53.3%と最も高い割合となったものの、3,930人全体の回答割合と比較すると、6.4ポイント低くなりました 。次に、「面談」と回答した割合が43.3%で続き、全体の回答割合と比べて5.2ポイント高くなりました 。
全体の社員と最も差が開いた項目では、「休憩時間や就業時間前後の雑談」(40.0%)が、17.0ポイント低い結果となりました 。今の会社で働き続けたいと思わない社員は、就業時間外の雑談より「面談」による交流を求めることがわかりました 。
6. 上司と良好な関係を築く若手社員は、周囲の先輩と業務外の交流が「頻繁にある」傾向に
最後に、若手社員と上司の関係と、職場の交流環境の関係性について、調査しました 。社会人1年目の若手社員335人に対して、周囲の社員と業務以外のコミュニケーションをとる頻度について質問したところ、上司と「良好な関係を築けている」と回答した若手社員のうち、44.2%が周囲の先輩と業務以外のコミュニケーションをとる機会が「頻繁にある」と回答しました 。
一方、上司と「良好な関係ではない」と回答した若手社員のうち、65.1%が周囲の先輩と業務以外のコミュニケーションをとることが「ない」と回答しました 。
まとめ
本調査結果より、若手社員、特に新入社員が最も交流したい相手は「仕事で直接関わる先輩」と「1つ上の上司」であることがわかりました 。これは、実務で指導を受ける相手とは良好な関係でいたいという意識の表れと考えられるでしょう 。一方で、性格や価値観が合う人とのつながりも重視しており、共感できる相手を見つけ、職場でより心地よく過ごしたいという思いもあるのではないでしょうか 。
求める交流手段としては、職場での雑談に関する項目が上位に挙がり、カジュアルな会話を通じて関係を深めたい傾向が見られました 。逆に、SNSやチャットなどのデジタルツールを介した交流はあまり求められていないことも判明しました 。
また、働き続けるために「職場の人間関係」を重視する社員は、雑談を通じた交流を求める傾向が強く、日常的なコミュニケーションを信頼関係の土台にしたいことが示唆されます 。一方、「自身の成長」を重視する社員は、雑談に加え、面談の機会を重視する傾向があり、業務に即したコミュニケーションを求めていることが特徴的です 。「働き続けたいと思わない」社員は、業務時間外の雑談や会議での交流をあまり求めない傾向がありましたが、面談の機会は一定のニーズが確認されました 。
さらに、上司と良好な関係を築けている若手社員ほど、周囲の社員と業務以外のコミュニケーションを積極的に取る傾向があることもわかりました 。上司は若手社員と、業務に即したコミュニケーションだけでなく、職場での雑談などを通じて、日常的に交流を深めることが重要です 。こうした取り組みにより、多様な価値観を持つ若手社員が社内で信頼関係の基盤を築くだけでなく、社内コミュニケーションの活性化につなげられるでしょう 。
考察 若手社員と相互理解・信頼関係を深める取り組みとは
本調査より、若手社員、特に新入社員は、社内交流において「業務に関する先輩や上司」と「気の合う先輩」とのつながりを求める傾向が見られました 。求める交流方法では、就業時間内に限らず、就業時間外の「雑談」を通じて関係を深めたいと考える割合が高いことも特徴的でした 。ただし、上司や先輩社員が雑談する際、心理的安全性や多様な価値観などについて配慮せず接してしまうと、信頼関係の構築につながらないことを理解する必要があります 。
さらに、「面談」のニーズも高く、特に「今の会社で働き続けたいと思っていない」と回答した社員ほど、面談での交流を重視する傾向が見られました 。これは、成長やキャリアへの不安を解消する場を求めている可能性を示唆しています 。
近年、仕事の高度化・複雑化に伴い、トップダウン型の組織ではなく、メンバーが自発的に知識や経験を共有し、新たなイノベーションを創発していく「創発型組織」が求められています 。そのためには、社員間の相互理解が不可欠です 。そこで、上司や先輩と若手社員が相互理解・信頼関係を深めるため、企業が取り組むべき施策をご紹介します 。
① 心理的安全性の正しい理解を共有
まず、上司・先輩社員含めた全員が「心理的安全性」を正しく理解することが重要です 。ハラスメントのリスクを恐れて、コミュニケーションを避けることは組織の弱体化にもつながりかねません 。心理的安全性が高い職場とは「成果を出す」「組織目標を達成する」ために必要な意見を出し合える状態を指します 。まずは、心理的安全性の定義とそのメリットを、組織内で共有することから始めるのが良いでしょう 。
心理的安全性を高める具体的な取り組みでは、カジュアルな朝会やランチ会の開催、部署メンバー全員が自席にいる時間帯を設定し、話しかけやすい雰囲気をつくるなどが効果的です 。さらに、日常的に感謝の言葉やポジティブなフィードバックを伝えることで、挑戦を歓迎する文化を浸透させることも大切です 。
② 面談の制度化
定期的なキャリア面談やフィードバック面談、1on1の実施などを通じ、評価だけでなく、組織のミッション・ビジョンを共有し、若手社員の意見を傾聴する場を設けることが望ましいです 。
③ コミュニケーションスキルの強化
雑談力やコミュニケーション力を高めるため、上司・部下双方に対して、傾聴力・質問力・読解力を高める研修を行うとよいでしょう 。上司向けには、面談の質を高めるために「理解・納得してもらうための伝え方」などのスキル強化が効果的です 。若手社員には、「フィードバックを受け止める力」を養う研修を実施することで、成長に向けた建設的なコミュニケーションを実現できるでしょう 。
ALL DIFFERENT株式会社
ラーニングイノベーション総合研究所 研究員
兼 事業開発推進本部 企画部 PR広報 チーフ
加藤 理夏(かとう・りか)
調査概要
▼図1~5
調査対象者:当社が提供する新入社員研修に参加した 2025年度入社の新入社員
調査時期:2025年3月25日~4月24日
調査方法:Web・マークシート記入式、または自記式でのアンケート調査
サンプルサイズ:3,933人
▼図6
調査対象者:社会人1年目の就労者
調査時期:2025年8月1~27日
調査方法:調査会社によるインターネット調査
サンプルサイズ:社会人1年目社員335人
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(ALL DIFFERENT株式会社 /2025年12月4日発表・同社プレスリリースより転載)
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