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英会話スクールの運営を通じて思いついたアイデアを具現化して起業
夢とアイデアと情熱で、ネット求人事業に道を拓いたベンチャー魂

ディップ株式会社

冨田英揮さん

“求人ビジネス+インターネット”で急成長、そして上場へ

「無料カタログ送付サービス」のカテゴリーには、車、ブライダル、各種スクール、旅行などさまざまなジャンルがありましたが、なかでもクライアントの予想以上に反響が大きかったのが「人材派遣」でした。派遣で働きたい人々が、登録する派遣会社を探していたんです。パソナさんにお世話になるまでは、派遣業界のことをよく知らなかったのですが、パソナ社内にオフィスを間借りし、身近に接してみると、その市場の成長性には目を見張るばかりでした。そして営業に回る中で、ある大手派遣会社の方から貴重なアドバイスをいただいたんです。「私たち(派遣会社)が発信したいのは派遣会社のカタログよりも、求職者が求めている仕事の情報」だと。これを聞いてすぐに立ち上げたのが「人材派遣お仕事情報サービス」というコンテンツ。現在の弊社事業の中核をなす「はたらこねっと」の前身です。

 冨田社長はインターネットの可能性にも早くから注目していたそうですね。「お仕事情報サービス」の開始直後から、同サービスのネット配信を構想。2000年10月には、求人広告業界初の派遣情報ポータルサイト「はたらこねっと」を立ち上げました。

ネット事業については、ずっと参入のタイミングを計っていたんです。当時、自宅でのネットユーザーは人口の2割程度まで達しており、そろそろいいだろうと。そこからさらに拡大するのも、目に見えていましたからね。コンビニの端末からネットにつながるようにすれば、ネット環境がない残り8割の求職者もカバーできる。そう考えて、両方のサービスの併用でスタートしました。これが当たり、新規のクライアントが続々と参加。膨大な量の求職情報が集まるようになり、それをポータル最大手のヤフーでも配信しようということになったのです。01年11月からアルバイト・請負情報を、02年1月から派遣情報を提供し始めましたが、特に派遣情報は当社の独占でした。ヤフーとの提携で「はたらこねっと」へのアクセス数は一気に上昇。営業での手ごたえも明らかに変わりました。事業そのものの成長に加速がつくような感覚を覚えたのは、このころです。

 そしていよいよ上場。会社成立から7年目という、すごい成長スピードですね。

当社が東証マザーズへの株式公開を果たしたのは04年5月ですが、実は前年の12月にいったん上場の承認を得ていながら、直前に辞退した経緯がありました。わずか3日前に、ヤフーから提携解消を通告されたからです。上場当日には、東京湾のディナークルーズを借り切って“上場パーティー”をする予定でした。普通ならキャンセルでしょうね。しかし提携も上場もなくなったところに、楽しみにしていたイベントまで中止では、社員の士気も下がり、会社全体が悪い流れにはまってしまうかもしれません。そう考えた私はあえてパーティーを決行し、その場で今後の方針・計画を社員にきちんと説明したのです。「提携がなくなっても大丈夫、すでに備えはできているから」と。ヤフーの集客力で業績が急伸したとき、私はむしろ怖さを感じていました。ヤフーに依存してしまうことへの危機感です。提携効果が高いうちに、脱ヤフーを図っておかなければ――そのために注力したのが、自社ブランディングでした。人気女優をイメージキャラクターに起用するなどして知名度を高め、ディップとしての自立を着々と進めていたのです。だから私は、船上で社員に向けてこう言いました。「今日は、ヤフーからの卒業パーティーだ」と。

 なるほど。盛り上がったでしょうね。

期待以上でした。このパーティーを機に、社内の士気がかえって高まったのですから。営業活動もより活気づき、ヤフーとの提携解消が業績に影を落とすことはありませんでした。そして辞退から最短の5ヵ月後、ディップは晴れて東証マザーズへの株式上場を果たしたのです。あの父も涙を流して喜んでくれました。「英揮は俺を超えた」と言われたときは、本当にうれしかったですね。

 その後も、ディップの勢いは衰えることを知りません。最近では「はたらこねっと」から独立したアルバイト情報サイト「バイトル」が絶好調。人気アイドルを起用したブランド戦略も功を奏しています。ネットに特化した情報発信で求人広告ビジネスをけん引する貴社と、業界の今後について、展望をお聞かせください。

当社のメインビジネスは、派遣社員やアルバイトなど非正規雇用の方々を対象にした求人情報サービスです。現在、企業は人員増加に意欲的ですが、正規雇用が守られ過ぎている日本では、正社員の採用が経営リスクになりやすいため、今後も、非正規雇用市場の拡大が続くのは間違いないでしょう。むしろ問題なのは、非正規雇用の方々がこれだけ増えているのに、その待遇がなかなか向上しないこと。同一労働・同一賃金といいますが、場合によっては、非正規の人が“同一以上”の賃金をもらったとしてもおかしくはありません。当社では、非正規社員の待遇改善とそれに伴う経済活性化に向けて、2013年5月から「レイズ・ザ・サラリーキャンペーン」をスタートしました。これは求人広告掲載時に、弊社の採用コンサルタントから各企業へ募集時の時給アップをお願いし、ご賛同いただいた企業のお仕事情報には、キャンペーンマークを表示して積極的にその取り組みをPRしていくというものです。ただ法制面の改革を訴えるだけでなく、待遇格差の是正に向けて、われわれには何ができるのか――「夢とアイデアと情熱で社会を改善する存在となる」という企業理念に基づき、これからも熱い想いで取り組んでいきます。

 ありがとうございました。最後に、人材サービス業界に現在携わっている方々、今後携わろう、あるいは起業しようとしている方々に向けて、メッセージをお願いします。

冒頭で触れたように、リーマンショックの際にも、我々はリストラを行いませんでした。人材ビジネスという人と企業をつなぐ仕事のプロフェッショナルである限り、景気が悪くなっても、私は社員を守り通したいと思ったのです。人材ビジネスは、どこまでいっても人が中心。どんな時でも人を大切にし、幸せにすることを考えている会社こそが、結局は成長できると信じています。

また、これから皆様の人生の中で、いいこともあれば悪いこともあると思います。ピンチだと思った時、正面から見たらそうかもしれないが、角度を変えて見てみるとチャンスだったということがよくあります。私もそのような経験をたくさんしました。ピンチだと思った時は、チャンスになる可能性があるという意識を持って、自分自身でピンチをチャンスに変えていってください。

冨田 英揮さん インタビュー photo

(2016年1月5日 東京・港区・ディップ東京本社にて)

社名ディップ株式会社
本社所在地東京都港区六本木1-6-1 泉ガーデンタワー32F
事業内容求人広告事業/人材紹介事業
設立1997年

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル アルバイト・パート採用

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