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いま、なぜ「ビジネスマナー」が求められるのか?
ビジネスマナーという「型」を覚えることが、人を成長させる

注目の記事研修・人材育成[ PR ]掲載日:2010/01/28

近年、若い人の言葉遣いや立ち振る舞いに対して、「違和感」を覚えることが少なくない。困ったことにビジネスの場でも、社会人としての自覚やモラルに欠けた、いわゆる「ビジネスマナー」が欠如した若手社員は多く、会社に悪影響を及ぼしている。そうした事態になる前に、いかに「型」としてビジネスマナーを覚えてもらい、ビジネスパーソンとして独り立ちしてもらうか。ビジネスマナーを学ぶことの意味を、今一度、考えていきたい。

気になる、最近の若い人の「ビジネスマナー」

毎年、社会経済生産性本部では「新入社員タイプ」の特徴を記したネーミングを行っている。平成21年度は「エコバッグ型」と名付けられた。

環境問題(エコ)に関心が強く、節約志向(エコ)で無駄を嫌う傾向があり、折り目正しい。小さくたためて便利だが、使うときには大きく広げる(育成する)必要がある。 酷使すると長持ちしない(早期離職)が、意外に耐久性に優れた面もあり、活用次第で有用となるだろう。早く消費を上向かせ、エコバッグを活用する機会を増やしたいものである。

ここ数年も「ブログ型」(様々な思いを内に秘めている)「デイトレーダー型」(安定株主になりにくい)「カーリング型」(こするのをやめると止まってしまう)と称されるように、現場の先輩社員などからは「扱いにくい」という評価が強くなっている。これも、社会に出る前の準備段階で、「しつけ」の問題も含め、教えるべきこと、やるべきことをやってこなかったツケが、出てきているように感じる。先日も、若手社員を部下に持つマネジャーから、こんな問題行動について聞かされた。

「携帯電話に関してはもはや必須アイテムです。だからこそ公私混同しないように、会社では仕事だけに使用を限定した携帯電話を貸与しています。ところが、私の部署の若いメンバーのプライベートでの使用が目に余ったので、何気なく注意しました。ところが、悪びれる様子もなく、電話番号やメールアドレスの登録名を、仕事用のものに見せかけて、引き続き私用で使っているのです。さらにはPCでのメールも、タイトルを“事務連絡”として、平然と友人とのやり取りに使っている。いくら注意しても、罪悪感がないのか、あるいは常識がないのか、すぐまた同じようなことを繰り返します。あまり注意をすると事態がこじれそうで、この先、いったいどう対応したらいいのか分かりません」(中堅システム会社:課長職)

こんな話はとても信じられないと思うかもしれないが、公私混同した携帯電話やメールの使い方をする若者は少なくない。というのも、彼らは、とりわけ「悪いこと」だとは認識していないからだ。今では、大人の社会人が当たり前だと思っていても、若い世代には通用しない事項が増えてきている。要は、「ビジネスマナー」に欠けた若手社員が増えてきたからだが、問題なのは、その欠如がビジネスの大切な場面で思いがけず出てくることである。

例えば、基本的なあいさつや連絡ができなくて、お客様が立腹するようなケース。ビジネスの場では、たとえ営業センスやITスキルが優れていても、言葉遣いや立ち振る舞いがぞんざいであるというだけで、お客様からの信頼や信用を失うことが少なくない。コミュニケーションを取ることにも支障が出てきて、本来の業務がうまく遂行できなくなってしまうこともある。また、ビジネスマナーの欠如は、対顧客への悪影響のみならず、職場の生産性、効率性にもダメージを与える。

このようにビジネスマナーというのは、対外的企業活動をする上でも、社内の組織運営を円滑に進める上でも、極めて問題となってくる。何より、ビジネスの常識を知らないということは、こうした仕事先や職場でのトラブルが続出する大きな原因となっていることを、まずは知ってほしい。

しかし、頭が痛いのは、若手社員本人が「自分の置かれている状況」や「自分の言動の影響」を正しく理解していないことである。結局、本人が何も気づいていないので、ますます状況は悪化していくことになる。そのため、OJTで失敗を重ねても反省しないし、ましてや改善も期待できない。何より、このままでは本人が成長しないだろう。

なぜ、「ビジネスマナー」なのか

そこで重要になってくるのが、ビジネスマナーを学ぶことの「意味」である。これを丁寧に教え、自覚してもらうことで、その後のビジネスパーソンとしての「成長」が期待できるようになる。

ビジネスマナーと言っても、それは非常に多岐な項目(メニュー)に渡る。後述するが、それらは仕事の成果を出すための「型」とも言うべきものでもある。ある意味、「コンピテンシー」(優れた業績を上げている人の「行動特性」)と言ってもいいかもしれない。というのは、それらを一つひとつ、確実に身に付けていくことにより、「仕事ができるようになる」「仕事がはかどる」という実感を持つことができるからだ。またそれは、周囲から「感謝される」「褒められる」という評価にもつながっていく。この確かな実感とフィードバックが、とても重要である。

自分自身が感じた「自信」と、周囲からの「好評価」によって、本人の「嬉しい」という気持ちは強くなっていく。職場での自分の「存在価値」や「有用感」を見出すことができ、仕事への「モチベーション」も高まって、「やる気」が育まれていくだろう。そうすると、仕事に対する「充実感」や「達成感」を覚えることになる。その結果、組織に対する「貢献」や「期待」を強く意識していくようになっていく。「意味」を知ることで、こうした成長の連鎖が期待できるのだ。

社会人となった早期の段階でビジネスマナーを会得することで、職場や取引先と良い関係が構築され、「成果」もあげることができる。そうした「成功体験」が自信を生み、責任と自覚が芽生え、一人前のビジネスパーソンを作っていくのである。

何よりも、この段階で得た自信や結果は、その先の本人のキャリア形成、仕事の成果向上などに大きな影響を与えていくことになる。ビジネスマナーという「型」を覚えることが、人を大きく成長させるのだ。さらには、社員の定着率にも良い結果を招くことになる。その有用性を意識してか、最近では「内定者研修」にビジネスマナーを必須とする企業が増えてきている。

今、学ぶべき「ビジネスマナー」とは?

では、実際に学ぶべきビジネスマナーにはどのようなものがあるのか。ここでは大きく、「基本」と「実践」に分けて、考えてみたい。

(1)基本編:必要条件としてのビジネスマナー・ビジネス常識

ビジネスパーソンとして、これだけは絶対に知っておかなければならないビジネスマナー・ビジネス常識には、以下のような項目(メニュー)が考えられる。

【礼儀マナー】

健康管理をはじめ、身だしなみ・服装、挨拶・お辞儀の仕方、言葉遣い、役職の上下関係、冠婚葬祭など、社会人として必要最低限の礼儀マナーは、必須事項と言える。

【ビジネスマナー】

ビジネス・仕事の基本、電話・携帯電話や電子メール・PC、FAXのマナーや名刺交換の仕方、上座と下座のマナー、ビジネス文書の書き方、ビジネス会話などが該当する。ビジネスパーソンとして当然、習得しておくべきビジネスマナー・常識である。

【職場の人間関係マナー】

社会人となると、職場での付き合い方がとても大切になってくる。同僚との人間関係でのトラブルを招かないためにも、「人間関係の基本」「職場のマナー」など、職場での人間関係マナーは最初に学んでおきたい。

【職場のルール】

会社の人間関係や報連相、タイムマネジメントの基本、飲み会・宴会のマナー、会議・ミーティングでの心構えなど、職場のルールも最初の段階で学んでおく必要がある。

(2)実践編:十分条件としてのコミュニケーションスキル

次に、社会人生活を円滑、かつ効率よく送るためのスキルも、ビジネスマナーとして重要なものと考えられる。特に、コミュニケーションが苦手な若手社員が知っておくべきコミュニケーションスキルには、以下のような項目(メニュー)がある。

【対顧客スキル】

電話対応、テレアポの取り方、来客対応、訪問時のマナー、接待のマナーなどは対顧客スキルの中心をなすものである。顧客に対して失礼のない対応の仕方を学び、次のビジネスチャンスへとつながる仕方を身に付けていく。

【対職場スキル】

一方、対職場については、社内行動の基本、指示の受け方と報告、話し方と動作、各種書類の書き方、事後処理など、職場での行動をスムーズに進めるためのスキルを学んでいく。

【コミュニケーションスキル】

正しいコミュニケーションを取るには、すべからく「相手の立場」から全てを想起することである。その点からも、「傾聴」「共感」といったコーチングスキルを意識して身に付けたい。

これらのビジネスマナーを習得することで、学生から社会人へ、さらには新入社員から中堅社員へとソフトランディングが図られることだろう。

もちろん、ビジネスマナーについては、これだけで十分というわけではない。この他にも、グローバル時代にあっては「外国人との付き合い方」「国際マナー」があり、対顧客でも「クレーム対応」や「社内外トラブル対処法」「断り方・謝り方」など、数多くのものがある。ポイントは、消化不良とならないよう、自社にとっての優先順位を付け、それを一つひとつ丁寧に教えていき、十分な理解をしてもらい、正しい言動を伴ってもらうことである。

「ビジネスマナー」をよりよく学ぶ方法

ビジネスマナーを正しく理解・習得してもらうには、第一に「新入社員研修」のプログラムの中に必ず盛り込むことである。その際、「座学」で勉強するだけでなく、できるだけ「実習」を交えながらその「意味」や「影響」というものを理解し、繰り返し練習を行うことが重要である。「型」を覚えるわけだから「習うより慣れろ」の考え方である。そして、半年か1年後の「新人フォロー研修」でも、仕事に対する意識や取り組み方に関するフォローと合わせて、ビジネスマナーについての見直しを行うと、より効果的である。

ビジネスマナーや自社なりの「マナースタンダード」を意識づけるためには、定期的に「マナーチェック」を実施するのが効果的と思われる。簡易版でもいいから、自社としての「マナーチェック」を作成したり、Web上でオープンになっている「チェックリスト」などを使ったりして、自社のビジネスマナー度を定点観測することである。

そして、ビジネスマナーを教える側(先輩・上司)が注意すべきなのは、まずは自分自身が見本にならなければならない存在であることを意識することである。全社を挙げてビジネスマナーに取り組むとともに、教える際には、とにかくよく聴いて、できたときには褒めるなど、コーチングマインドを持って、やる気にさせていくことが大切である。

なお、ビジネスマナーに関して、社内で有効な「コンテンツ」を持っていない場合では、教育研修会社などが提供する「ツール」を活用するのもいいだろう。その際、ビジネスマナーの正しい理解を促し、実際に身に付けてもらうためには、「文字テキスト」だけでなく、「映像コンテンツ」を活用するのが効果的である。何よりも映像で学ぶことで、次のようなメリットが期待できる。

  • 場所を選ばず、繰り返し学べる
  • ドラマ仕立てになっているので、理解が容易
  • 見て即、言動に結び付けられる

このように見ていくと、ビジネスマナーはビジネスパーソンにとって、「パスポート」のようなものであることが分かる。これを身に付けていることによって、どこでも対等な立場でビジネスの世界に入っていくことができ、周囲と調和することができる。だからこそ新入社員に限らず、中堅以上の社員になっても、ビジネスマナーを学ぶことの意味はとても大きい。それはまさに、パスポートを更新することになるからだ。

<特別コラム>
特別コラム若い人だけではないビジネスマナーの欠如。
教える際には、「なぜ、必要なのか」を必ず言うこと
所 由紀
(人事コンサルタント・中小企業診断士・研修講師)
東京外国語大学外国語学部卒業。株式会社リクルート入社後、人事・マーケティング関連調査の企画・分析・レポーティングを担当する。その後フリーとして活動を開始し、1999年に中小企業診断士登録。人事コンサルタントとして企業のコンサルティングや研修を行なうかたわら、講演や雑誌の原稿執筆を行っている。著書に「偶キャリ。」(経済界)

若手社員を中心に、ビジネスマナーの欠如が言われていますが、それは彼らだけに限ったことではありません。実際問題として、新任の管理職研修などでも、「平気で遅刻をする」「研修中、携帯電話を切らない」など、基本的なルールが守れていない中堅どころの社員が結構います。

そもそも研修を行う施設や会議室というのは、off-JT(Off The Job Training =通常の仕事を一時的に離れて行う教育訓練)であり、非日常の場。仕事から離れて、そこで集中して何かを学ぶ重要な機会なのですが、そういう意識や配慮が希薄だと思います。常に「外」とつながっていないと不安なのでしょうか、休み時間となるとすぐにPCをチェックしたりします。さらには、ワークをしている最中でも、目を盗んでお客様に連絡したりする人もいます。仕事熱心なのは分かりますが、これでは研修に集中できないし、その効果も期待薄です。何より、彼らを見ていて集中していないのが分かりますから。

いったい、何のために研修に来ているのか。会社は少なからぬお金と時間を使って、知識やノウハウを教え、人材育成や能力開発をしているわけです。研修期間中は連絡が取れなくても大丈夫なように、前もって準備をして臨むのがビジネスパーソンとして当たり前のことでしょう。それができていない。さらには、事前にやっておくように頼んでおいた宿題をしないで、平気で参加する人もいます。

管理職になろうとする人たちがこうなのですから、若い人のビジネスマナーができていないのも、ある意味、当然のことかもしれません。問題は、若いときにビジネスマナーをはじめとしたビジネスの基本をちゃんと学んでいないと、そのままで行ってしまうこと。これでは、伸びる人も伸びません。というのもある年齢以上になると、ビジネスマナーを身に付けるのはなかなか難しいからです。鉄は、熱いうちに打たなければ意味がありません。

経験から言うと、こうしたビジネスマナーが守られなくなってきたのは、携帯電話が普及してからでしょうか。それ以前は、こうした問題は少なかったように思います。携帯電話は、自分のプライベートを形あるものとしたわけですが、便利なゆえに、onとoffの境界線が希薄になってしまいました。現在では、電車の中であろうが、会社や研修所であろうが、携帯電話があるとほとんど自分の家に入るのと同じ感覚。当然のごとく気もゆるみがちになり、マナーを守るという意識が低くなっていきます。いつでも通じているからこそ、ビジネスマナーが問われるわけなのに…。

ちょっとしたことかもしれませんが、「自己チュー」と言われるこうした若い世代を中心とした自分本位の言動が、思わぬ不注意や集中力の低下を招き、さまざまなミスやトラブルの原因となってきます。さらには、周囲への配慮や思いやりという「チームプレー」の原則にも悪影響を与えます。

こんなことが起きるのも、「なぜ、何々をしてはいけないのか」「なぜ、何々を守るのか」といったビジネスマナーについて、その意味を十分に理解していないからです。考えてみれば、昔はそんなことを説明する必要がありませんでした。皆が、当たり前だと思っていたからです。しかし、今は必ずしもそうではない。だったら、「なぜ、必要なのか」について、上司や人事部の人たちがそれこそ“親代わり”になって、丁寧に説明するしかありません。それができないと、コミュニケーションが悪くなり、「報連相」も徹底せず、職場での信頼関係が薄れてきます。そうなると、単にビジネスマナーの欠如にとどまらず、モラルハザードを招き、「不機嫌な職場」となりかねません。そうなってからでは遅いのです。このような意味からも、ビジネスマナーを正しく教えていくことには、とても大切な意義があります。
日本経済新聞出版社タイアップ企画

いま職場に求められる「ハラスメント対策」

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