内定後に「雲隠れ」する転職者の心理
辞退を伝えるとどうなる――? 紹介会社と転職者の信頼関係
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強引な説得は内定者には迷惑
「人材紹介会社の担当者から、『内定したら入社すると言ったはず。絶対に入社してもらわないと困る』と延々と説得されたんです」
人材紹介会社に辞退を伝えたら、担当者がいきなり怒りだして、強い口調で説得された……そんな話が一昔まではまことしやかに伝わっていた。私自身が直接見聞きしたことはないが、転職相談を受けた人たちの口から、「こんな経験をした人を知っている」という話を聞いたこともある。
確かに以前は、職人気質のコンサルタントが一人でやっているような紹介会社も多く、そういうところでは、「言った、言わない」という話になることも考えられる。それが今も転職希望者の間に伝わっていて、「人材紹介会社に辞退を伝えると、ものすごい勢いで説得される」「自分の希望とは違う会社に無理に入社させられる」と思っている人がいるのかもしれない。そのため、内定後の雲隠れにつながっているのだろう。
「内定した企業に、必ず入社しなければならないということはないですよね?」
転職相談の時に、紹介会社の仕組みについて確認する人は今も少なくない。利用者が増えてきたとはいえ、まだ人材紹介というサービスがよく知られていないのが実情のようだ。
「そんなことはありません。私たちは転職希望者の意思を最優先しています。それに今は、SNSなどが発達していますから、強引に入社をすすめたりしたら、あっという間に広まってしまいますよ」
そう答えるとたいていの転職希望者は、「確かにそうですね」と安心してくれるようだ。今は基本的にどこの紹介会社も、転職希望者の意向優先を掲げている。辞退されても、その後に友人・知人を紹介してもらったり、再度転職する時にまた利用してもらったりする方がいいと考える人材紹介会社が増えているのだろう。しかし、雲隠れされてしまってはそれもできない。
どんな時でも腹を割って相談してもらえる信頼関係を、転職希望者との間で築いておくことが重要なのだろう。
「Hさんとは信頼関係が築けなかったのかな……」
入社の意向を確認する何度目かのメールを送った後、ふと自省するのであった。
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