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邂逅がキャリアを拓く【第7回】
陶芸との邂逅

株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

西田 政之氏

株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

時代の変化とともに人事に関する課題が増えるなか、自身の学びやキャリアについて想いを巡らせる人事パーソンも多いのではないでしょうか。長年にわたり人事の要職を務めてきたブレインパッドの西田政之氏は、これまでにさまざまな「邂逅」があり、それらが今の自分をつくってきたと言います。偶然のめぐり逢いや思いがけない出逢いから何を学び、どう行動すべきなのか……。西田氏が人事パーソンに必要な学びについて語ります。

陶芸というアートフォームは、創作の行為そのものにおいて、数多(あまた)の邂逅を経験する場となり得ます。今回は、陶芸における邂逅の瞬間とその美学、そして、それが私たちの内面とどのように対話するかについて考えてみたいと思います。

作陶のプロセス

日曜日の朝10時過ぎ、自宅から車で10分ほどの距離にある陶芸教室に向かうのが、週末のルーティンの一つになっています。

今日使う粘土を決めたら、まずはテーブルの上で、菊練りと呼ばれる手法で粘土から空気を抜く作業をします(写真1)。そば打ちでそば粉に水を混ぜてこねていく作業を想像するとよいかもしれません。

その後、電動轆轤(ろくろ)の円盤にこねて砲弾状にした粘土(写真2)を上向きに備えて、右回転する粘土を右の手のひらで受けるようにして、上へ上へと棒状にせり延ばします(写真3)。ある程度の長さになったところで、上から押さえつけて砲弾状に戻し、そこから再び同じように上へ上へとせり延ばします。この“土殺し”と呼ばれる作業を何度か繰り返し、粘土全体のブレを取って芯を出した後、ようやく成型に入ります。

器をつくる場合は、最初に内側の底になる部分を親指でつぶして成型した後、外側の壁になる部分を内と外から指で押さえながら、上へ上へとせり延ばしていきます(写真4)。このとき、外側の壁は厚みを均等にすることが理想です。この作業を何度か繰り返し、上の部分が水平になるようにカットして、なめし皮で整えて成型を終えます(写真5)

後日、粘土がある程度乾いたところで、形を整えたり、模様を付けたりする「削り」という作業をします(写真6)。高台と呼ばれる土台を切り出した後、厚みの調整をしながら最終的な形を整えていきます。取っ手などの装飾をするのもこの過程です。

陶芸の工程

削りを終えると、素焼きを行います。素の粘土のまま、800度程度の低温で焼く作業です。素焼きが終わって、窯から出てきたら、紙やすりで丁寧に表面を滑らかにし、テーブルと接する底の部分に撥水材を塗ります。

そこまで終えると、最後の仕上げとして色や模様を出すために釉薬(ゆうやく)をかけます。粘土との相性を考えながら、出来上がりの色合いを想像して釉薬を決めます。釉薬は、単色の場合も、複数を重ねる合かけの場合もあります。付け方は通常、器を釉薬に浸しますが、吹きかける場合もあります。釉薬の組み合わせや濃度によって、また、この後の本焼きの際の窯の中に備える位置や灰のかかり具合によって、出来上がりの色合いや風味が決まります。まさに、思い通りにならない、予測できない原因がこの過程にあります。

本焼きは温度1200度~1250度程度で、酸素を十分に供給する酸化と、酸素を制限する還元と呼ばれる成焼手法があり、それぞれに風合いが異なるのもまた面白いところです。

観光地で陶芸を体験された方も少なくないのではないかと思います。もうすでにお分かりのように、体験するのは最初の成型のごく一部の過程です。大切なところは、実は陶芸教室の先生が全てやってくれているのです。手元に届いた完成品を手に取って、「私、意外と才能あるじゃん!」と思われる方もいるかもしれませんが、そこで過信してはいけないんですね(笑)。陶芸は完成するまでのプロセス、時間と、思い通りにいかないもどかしさを楽しむものでもあります。

淋しいおじさんになりたくない……

さて、私が陶芸に出会ったのは、横浜市へ越してきてすぐの頃です。厄年というのは、心身も環境も本当に転換点が訪れるもので、私が40歳になった頃に、ある先輩から次のように言われました。

「西田さん、定年後にあれこれ好きなことをしようと思ってもダメだよ。歳をとると頭も手足も思ったとおりに動かなくなる。時間があって、さあ、これに挑戦しようと意気込んでも、身体が頭についていかず、うまくならない。うまくならないから、面白くなくなり、いつのまにかやめてしまう。そうなると、これといった趣味もなく、ただ時間が過ぎていくのを待つだけの“淋しいおじさん”になってしまう。趣味を持つなら若いうちがいい。ある程度できるようになっておくと、歳をとっても惰性でできてしまうから……」

これ以上はない説得力のある言葉でした。他の回でも言及しましたが、今の私の多趣味は、このアドバイスがきっかけです。

陶芸を選んだのは、サックスと同様に、漠然とした憧れのようなものがあったからです。子供の頃から何かを作ることは嫌いではありませんでした。自分で作った器で食事をする。自分の作った器を人へプレゼントする。そんな、密かな期待もありました。

陶芸をはじめて、かれこれ二十数年。曲がりなりにも日常使いとしてなら耐えうる作品ができるようになったことから、会社の同僚が結婚したり、退職したりするタイミングで、ささやかな気持ちのあらわれとして愚作を受け取っていただくようになりました。それは、夫婦茶碗であったり、コーヒーカップであったり、どんぶりであったり、いろいろです。

前職の在籍中には、オフィスDIYの一環として自分たちで自部門のオフィスを改装するプロジェクトがあったのですが、夕方以降のライトアップの趣向にそって、陶器のランプシェードを作陶したりしました。本心はわからないながらも、皆が喜んでくれる姿を見ると、陶芸が一つのコミュニケーションツールの役割を果たしているという実感もありました。

予測不能を受け入れ、楽しむ

陶芸は、土という自然からの素材との直接的な対話を通じて、創作者の内面と外界が交わる瞬間を創出します。この過程において、偶然の形成や予期せぬ色の変化が生まれることもあります。これらは邂逅と見なすことができ、陶芸家はこれらの偶然性を受け入れ、作品に取り入れることで、一層深みのある表現を追求することになります。

冒頭の過程で触れたように、例えば、窯の中での化学的変化により、予想もしなかった色や質感が生み出されることがあります。また、手仕事による不均一性が作品に独特の個性や味わいを与え、それが見る人に異なる感情や想像を喚起させます。このような偶然性は、作品に生命を吹き込み、それが陶芸作品に固有の魅力を与える要因となっていると言えるでしょう。

さらに、陶芸は時間との対話でもあります。土を形作り、乾燥させ、焼成するまでのプロセスは、時間との協働とも言えます。この長いプロセスの中で、特にプロの陶芸家であればなおさらですが、素人であったとしても、自身の内面と向き合い、それを作品に映し出すという感覚が顕著になるのは想像に難くありません。

そして、完成した作品は、作陶の過程でのさまざまな邂逅の記録ともなるのです。邂逅の瞬間は、陶芸家にとってインスピレーションの源泉となります。偶然性を受け入れ、それを自身の作品に取り込むことで、陶芸家は自らの創造性を拡張し、観る者にも新たな体験を提供することができるからです。

陶芸との邂逅

陶芸からの学び

このように、陶芸と邂逅は互いに影響を及ぼし合い、豊かな芸術体験を創出します。そして、私たちが日常生活で経験する偶然性や不確定性に対する新たな視点を提供します。

考えてみると、私たちの日常も、仕事も、思うようにならないことだらけです。どんなに努力を重ねても成功するとは限りません。その理不尽さを受け止めながら、それでも諦めずにチャレンジし続ける姿勢が大切です。なぜなら、成功するタイミングは人それぞれだからです。その意味で陶芸は、制御できない要素を受け入れ、それを価値あるものとして受け止めることの美しさを教えてくれるものといえます。

もう一つ、轆轤(ろくろ)と向き合う時間は大切な内省機会にもなっています。哲学者の谷川嘉浩さんは著書の『スマホ時代の哲学』(ディスカバリー・トゥエンティワン)の中で、スマホの普及は孤独という大切な内省機会を奪ってしまった。それを補うためには何かを作ったり、育てたりするのが良いとおっしゃっています。まさに私にとって土をいじっている間は、ある意味、孤独であり、自分と向き合う大切な時間にもなっています。タイパ、コスパを意識するがあまり、無自覚に自らが束縛されてしまう今の時代において、自らの成長・成熟化のために、孤独になる機会を意識的に作ることが益々必要となってくるでしょう。

さらに言うと、作陶はイマジネーションそのものでもあります。発想できないものは発明できません。クリエイティブの原点は発想にあります。五感で土と向き合い、試行錯誤を繰り返して、無から一つの作品を生み出す過程そのものの体験を繰り返すことは、イマジネーション力を強化することにもつながります。既成のモノを買い求めるだけでは決して身に付かない感覚ではないでしょうか。

このように、学びはいたるところにあるのです。

西田 政之氏
西田 政之氏
株式会社ブレインパッド 常務執行役員 CHRO

にしだ・まさゆき/1987年に金融分野からキャリアをスタート。1993年米国社費留学を経て、内外の投資会社でファンドマネージャー、金融法人営業、事業開発担当ディレクターなどを経験。2004年に人事コンサルティング会社マーサーへ転じたのを機に、人事・経営分野へキャリアを転換。2006年に同社取締役クライアントサービス代表を経て、2013年同社取締役COOに就任。その後、2015年にライフネット生命保険株式会社へ移籍し、同社取締役副社長兼CHROに就任。2021年6月に株式会社カインズ執行役員CHRO(最高人事責任者)兼 CAINZアカデミア学長に就任。2023年7月より現職。日本証券アナリスト協会検定会員、MBTI認定ユーザー、幕別町森林組合員。日本CHRO協会 理事、日本アンガーマネジメント協会 顧問も務める。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「HRペディア「人事辞典」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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この記事ジャンル 人材育成概論

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【用語解説 人事辞典】
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アサーションを実践するために
ローカス・オブ・コントロール
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パースペクティブ・テイキング
アンカリング効果
グローバル人材
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コミュニケーション