職場のモヤモヤ解決図鑑【第65回】
モチベーションアップにつながる社内イベントとは?
他社事例も紹介
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
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石井 直樹(いしい なおき)
人事労務や総務、経理の大ベテラン42歳。部長であり、吉田さんたちのよき理解者。
新しい社内イベントの企画を任された吉田さん。どうすれば従業員のモチベーションアップにつながる社内イベントを開催することができるのでしょうか。イベントを企画する際に注意するべきポイントや、成功している他社事例を紹介します。
従業員のモチベーションアップにつながる社内イベントとは?
従業員のモチベーションアップのために、社内イベントを開催する会社は少なくありません。モチベーション向上の要素を押さえておくことで、より効果の高い社内イベントを企画することができます。
外発的動機付けと内発的動機付け
モチベーションアップの要素は、一般的に外発的動機付けと内発的動機付けの2種類に分けられます。
外発的動機付けとは、外部からの働きかけによって、従業員の成長意欲や組織への満足度を高める要因のこと。一方、内発的動機付けとは、本人の意思が原動力となってモチベーションの向上につながる要因のことをいいます。例えば、目標を達成すればボーナスが出るという制度は外発的動機付けに該当します。そのほか、新たな業務を覚える際に生じる好奇心や、より責任のあるポジションに進むことを望む挑戦心などは、内発的動機付けに該当します。
外発的動機付けの例 |
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内発的動機付けの例 |
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外発的動機付けから従業員のモチベーション向上を狙う社内イベントとして、MVP表彰制度が挙げられます。そのほかには、サンクスカードのように他者から感謝の言葉をもらえる制度もあります。
内発的動機付けに主軸を置くものとして、会社のビジョンやミッションを共有するイベントが挙げられるでしょう。モチベーション向上だけではなく、個人と組織の成長の方向性が連動し、互いに貢献し合うようなエンゲージメント向上にもつながります。
このように、社内イベントはデザインの仕方次第で、さまざまな角度から従業員のモチベーション向上に働きかけることができます。
社内イベントの定義と効果
自社で企画し、従業員を対象として行われるイベントのことを社内イベントと呼びます。正社員だけでなく、目的に応じてパートやアルバイト、派遣や業務委託などさまざまな雇用形態の従業員が参加することもあります。一般的には自社の従業員のみを対象としますが、取引先などの外部関係者を招くケースもあるようです。
社内イベントを開催することで、従業員のコミュニケーション活性化や会社のビジョン浸透、組織の一体感の醸成といった効果を期待できます。イベントを通じて従業員の相互理解が深まるため、組織にポジティブな影響をもたらすのです。短期的には効果が見えなくても、定期的に開催することで早期離職の防止や生産性の向上、イノベーションの創出といった効果が期待できます。
社内イベントの種類
企業では、目的に応じてさまざまな社内イベントが行われています。
- 表彰制度
- 社内コンペティション
- 歓迎会、交流会、懇親会
- 〇周年イベント
- 社員旅行
- 子どもの職場体験やキャンプなど、従業員の家族ぐるみのイベント
表彰制度は、従業員のエンゲージメント向上につながるという調査結果があります。株式会社サイバーエージェントが実施した調査によれば、過去5年間のうちに表彰された従業員は、表彰されなかった従業員と比較してエンゲージメントが高い数値を示しました。
社内イベントは、従業員が集まって対面で実施されることが主流でしたが、コロナ禍以降、オンラインで完結する社内イベントや、オンラインと対面を組み合わせたイベントが増えています。オンラインで集まったメンバーと一緒にヨガや料理に取り組んだり、読書や執筆など黙々と共通の物事を行ったりするなど、距離を超えた交流が可能です。
社内イベントを成功させるポイント
多くの従業員に社内イベントに参加してもらうには、目的を明確にし、参加のハードルを下げるなど、さまざまな工夫が必要です。以下にポイントを紹介します。
開催の目的を明確にする
まず、運営チームで社内イベントの目的を明確にします。目的を事前に決めることで、より効果的な内容を設定できます。例えば、部署やチームをまたいで従業員のコミュニケーションを活性化させたい狙いがある場合は、趣味をきっかけにつながるような社内イベントを開催するとよいでしょう。
表彰制度は、達成感や働きがいを実感するきっかけとなるだけではなく、若手や新しく入った従業員にロールモデルを示す機会にもなります。「組織の一体感を強めたい」「経営目標を浸透させたい」など、目的を明確にした上で社内イベントを企画することが重要です。
参加のハードルを下げる
少しの工夫で、参加へのハードルが下がります。物理的な参加のハードルがあるハード面と、心理的な参加のハードルがあるソフト面の両方で工夫するといいでしょう。
ハード面の工夫として、例えばリモートワークの従業員はオンラインで参加可能にしたり、会場までの交通費を支給したりすると参加しやすくなります。イベント開催日は各部署の繁忙期を避けるなどの配慮も大事です。
ソフト面の工夫としては、事前にイベントの目的や内容を共有することが重要です。知らないイベントにはなかなか足が向きません。社内のイントラネットや掲示などで、従業員の目のつくように周知し、イベントへの雰囲気を盛り上げていくことが大事です。管理部門など、一部だけで運営を担うのではなく、広く従業員を募集してプロジェクトチームを発足するのもいいでしょう。メンバーとなった従業員はイベントについて意見を提案するなど、自分ごととして楽しむことが期待できます。
また、参加可否を問う案内は1回で終わりにせず、複数回に分けて送ることで参加率の向上が期待できます。
運営マニュアルを作成する
当日のスムーズな運営に向けて、スタッフの役割や当日のタイムテーブルなどを記載した運営マニュアルを作成します。運営を担う従業員がそれぞれの役割について理解できるほか、今後イベントを実施する際のナレッジとして蓄積されます。
景品や賞品を用意する
従業員交流など、イベントの目的に合わせて景品や賞品を用意します。景品は必ずしも高価なものである必要はありません。例えば、簡単な景品を用意し、日頃から「がんばっている人」や「お世話になっている人」に景品を贈るイベントなら、多くの人がイベントを楽しめます。ほかにも、賞品や景品を設けてチームで競い合うイベントを行えば、勝つ喜びのほか、一体感も醸成されるでしょう。
社内イベントの成功事例
最後に、従業員のモチベーション向上に効果を挙げている社内イベントの事例を紹介します。
従業員が「目指したい場所」として全社総会を演出|サイバーエージェント
サイバーエージェントでは、舞台や演出にこだわった全社総会を実施。全社総会では、活躍した個人やチーム、プロジェクトなどが表彰されます。オリジナルのトロフィーや金銭インセンティブの授与を行い、従業員が目指すべき「憧れの場所」として演出。モチベーションを刺激しています。そのほか、職務が細分化されているエンジニアやクリエイターを対象に、エンジニア・クリエイター向けの表彰制度を別途設け、事業の要である技術者の成長を支援しています。
グループ横断の最新ナレッジの共有で新しい価値を創造|リクルート
リクルートでは、社内イベントを通じて個人の成長を支援しています。新規事業提案制度『Ring』は、グループの全従業員を対象としています。新たなアイデアを発表する場があることで、従業員のモチベーション向上、組織の成長につながっています。また、グループ横断イベントの『FORUM』では、イノベーティブな仕事をした従業員を選出し、約1000人の観客を前にプレゼンテーション(大自慢大会)を実施。成功事例の共有につながっています。
家族に働く姿を見せることで働きやすい職場づくり|Sansan株式会社
Sansan株式会社では、子どもが職場を訪問し、親の働く姿を見るファミリーデーを開催。ファミリーデーの目的を、「子どもに両親の働く姿を見てもらう」「家族の仕事に対する理解を深め、従業員が働きやすい場を作る」というように明確に位置付け、さまざまな工夫を凝らしています。子ども用の名刺作成もその一つ。家族と仕事を切り分けないイベントだからこそ、従業員エンゲージメントの向上につながります。
【まとめ】
- 社内イベントは、成績優秀者の表彰、ボーナス授与といった外発的動機付けとなるものと、会社のビジョン共有、成長支援といった内発的動機付けとなるものがある
- 優秀者を表彰する制度は、表彰された従業員のエンゲージメント向上に効果がある。また表彰されることを目指し、他の従業員のやる気が上がる
- 懇親会や歓迎会など交流が目的の社内イベントでは多くの参加者が景品をもらえるように工夫するなど、全員が楽しめる内容にする
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!