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2016学生の傾向は?

古橋 孝美(ふるはし たかみ)

パートタイマー白書や学生を対象にした就職活動に関する意識調査など、当研究所が独自で行っている調査から見えてくることを考察します。

2016年卒学生への広報活動解禁日は、従来の12月1日から3月1日に3ヵ月繰り下げられ、実質的な採用期間は短縮されました。短期化へどう対応するか、効果的な採用手法は何か、頭を抱えた企業も多いのではないでしょうか。
さらに、経済状況も好転の兆しを見せ始め、昨年よりも売り手市場となっています。企業は、採用期間の変化だけでなく、人材獲得競争の激化にも対応していかなければなりません。

一方、このような社会変化を受けて、当事者である2016年卒学生に何か変化はあるのでしょうか。今回は、「2016年3月卒業予定者の就職活動に関する調査(2014年11月1日状況)」から、2016年卒学生が、2015年卒学生とどのような違いがあるのかを明らかにしていきます。

大手志向・安定志向 再び!?

昨年に引き続き、いや昨年以上に売り手市場が予測される新卒採用市場。その影響か、2016年卒学生の意識にも若干の変化が見られます。「2016年3月卒業予定者の就職活動に関する調査(2014年11月1日状況)」では、学生を対象に、就職活動を行うにあたって大企業と中小企業のどちらを志望する気持ちが強いかを聞きました。

■企業規模に対する志向:前年比較
図:企業規模に対する志向:前年比較

結果は、「大企業」「どちらかと言えば大企業」が、合わせて55.3%に上りました。「中小企業」「どちらかと言えば中小企業」と回答した学生は、合わせて21.6%、「企業の規模は全く意識していない」学生は23.1%です。2015年卒学生を対象に行った調査の平均値と比較すると、2015年卒学生のうち、大企業志向(「大企業」+「どちらかと言えば大企業」の合計)の学生は47.9%でしたが、2016年卒学生では55.3%とやや高くなっています。まだ就職活動が本格化していないため、現実に直面していない学生の理想が反映されている可能性もありますが、昨年よりも大手企業への就職を希望する学生の割合は高いようです。

また、本調査では、学生に「キャリアアンカー」について聞いています。キャリアアンカーとは、アメリカの組織心理学者エドガー・H・シャイン博士によって提唱されたキャリア理論の概念で、「自身のキャリアを選択する際に、最も大切で他に譲ることのできない価値観・欲求」のことを指します。本調査では、キャリアアンカーの下記8項目について、各5点満点で合計が25点となるように点数をつけてもらいました。それぞれ平均が3点とすると、全24点。25点にするには、どれか1つを4点にしなければならず、回答者が考える優先順位が、自ずと表れてきます。

■キャリアアンカー:前年比較
図:キャリアアンカー:前年比較
  1. (1)管理能力:組織の中で責任ある役割を担いたい/3.1点(3.2)
  2. (2)技術的・機能的能力:自分の専門性や技術を高めたい/3.7点(3.9)
  3. (3)安全性:安定的に1つの組織に属していたい/3.3点(3.0)
  4. (4)創造性:クリエイティブに新しいことを生み出したい/ 3.0点(2.7)
  5. (5)自律と独立:自分で独立したい/1.5点(1.5)
  6. (6)奉仕・社会献身:仕事を通じて社会を良くしたり、他人に奉仕したい/3.5点(3.6)
  7. (7)純粋な挑戦:解決困難な問題にも挑戦していきたい/2.8点(3.0)
  8. (8)ワーク・ライフ・バランス:個人的な活動、家族、仕事のバランスをうまくとりたい/4.2点(4.1)

※( )内の数値は、2015年卒学生を対象に行った調査の平均値

2015年卒学生の平均点よりも高くなったのは、「(3)安全性:安定的に1つの組織に属していたい」という意識。3.0点から3.3点と0.3点高くなっており、一番の増加幅です。また、「(4)創造性:クリエイティブに新しいことを生み出したい」という回答も、2.7点から3.0点に増加していました。その一方、「(2)技術的・機能的能力:自分の専門性や技術を高めたい」は、3.9点から3.7点へ、「(7)純粋な挑戦:解決困難な問題にも挑戦していきたい」は3.0点から2.8点へと、それぞれ0.2点低くなっています。

こうしてみると、2016年卒学生が2015年卒学生とどのように違うのかが少し見えてきます。前述の大企業志向者の増加や安定性を求める姿勢からも、“大手企業で安定的に働きたい”という意識が、2015年卒学生よりも強く滲み出ているように感じられます。その一方、自身を高めていこうとする意欲やチャレンジ精神は、少し影を潜めているようです。

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