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イベントレポート

SHRM 2012 Annual Conference
(2012/8/10掲載)

世界最大の人事プロフェッショナルのための組織、SHRM(Society for Human Resource Management)は、世界約140ヵ国に25万人以上の個人会員を有し、人事プロフェッショナルの認定制度や人事実務に関する知識・情報習得の機会の提供を主たる活動としています。このSHRMの年間最大のイベントとして開催されているのが、毎年6月に行われる年次大会。64回目となる今年は、6月24日(日)~27日(水)に米国ジョージア州アトランタで、13,385人もの人事プロフェッショナルが集結し、開催されました。本レポートでは、イベントの模様をダイジェストでお伝えいたします。

SHRM 2012 Annual Conference Photo

SHRM 2012 Annual Conference とは?

米国以外の国からの参加者は、全来場者のうちの1割弱ですが、参加国数は80ヵ国にも上ります。日本からは、一般社団法人日本能率協会が、日本人材マネジメント協会(JSHRM)の共催で、本大会へのラーニングツアーを主催しています。

この巨大なカンファレンスが、少数のSHRMスタッフと約700名のボランティアスタッフによって運営されていることは、注目に値します。人事・人材育成のプロフェッショナルたちが、自らの学びのための場づくりにおいても、そのプロ意識を大いに発揮していると言えるでしょう。

本大会は、約650社が出展する巨大な展示と約240のセミナーで構成されています。セミナーは、全ての参加者が一堂に会して参加するGeneral Session、上級者向けに実施されるMaster Series、そして各会場で同時並行に進行しているConcurrent Session (その中でも毎年開催されるような人気セッションをMega Session、実務家が自社の事例を紹介するセッションをPractitioner Exchangeと表記)から成ります。

General Sessionには毎年著名人がスピーカーとして招かれますが、その選定基準には、Global, Managerial, Leadership, Inspiredの四つのキーワードがあります。それぞれのキーワードを象徴するスピーカーは、開催4日間の各朝に登場します。

Concurrent Sessionは、Benefit & Compensation, Employment Law & Legislation, Business Management & Strategy, Talent Management, Personal & Leadership Development, International HR の六つのテーマに分類されています。このカテゴリーは基本的に毎年固定されていますが、数年前に加わったInternational HRのように、時代の要請に応じてテーマの見直しが行われています。

SHRMにとっては、2004年~2005年が事業のグローバル化のターニングポイントでしたが、中国・インドに支部を開設したほか、長きに亘って提供してきた人事プロフェッショナル認定制度のカテゴリーで、PHR(Professional in HR)、SPHR(Senior Professional in HR)に加えて、GPHR(Global Professional of HR)が加わったのもこの頃です。

毎年の大会には、大会を貫く統一テーマのようなメッセージは存在しません。一言で括ることが難しいほど、SHRM年次大会がカバーする範囲は、労務から人材育成まで多様です。その中でも、昨今注力しているテーマは、先述の六つのカテゴリーの内、Talent Management, Personal & Leadership Development(社員のリーダーシップ開発と、人事パーソンのリーダーシップという両面がある)と、Business Management & Strategyの中で扱われることが多いイノベーションです。

本年度の大会を振り返る

以下、本大会へのラーニングツアーのアドバイザーを務めた、JSHRM常任役員・中島豊氏に、大会から学んだことについて総括していただきます。

<ラーニングアドバイザー>
中島 豊 日本人材マネジメント協会(JSHRM) 常任役員

中島 豊氏大会初日のオープニングセレモニー。カントリーミュージックの熱唱、勇壮なドラムラインのパフォーマンスに続いて登壇したSHRM会長のホセ・ベリオス氏は、HRのプロを企業におけるドラムラインに譬えた。「ドラムは、人々の心に響きます。そして、ドラムを中心に人々は心を合わせて進んでいくのです」

SHRMが描くHRのプロの理想像は、役員会のテーブルにつき、経営に欠くべからざる存在として、企業経営のさまざまな意思決定に関わっていくことである。SHRMは、世界中のHRのプロ達のネットワークを作り、彼らに「HRプロのあるべき姿」と「経営に関わるために必要な持つべき知識や能力」を提示している組織である。

SHRMの年次大会は、米国とグローバルのHRの現状を把握するまたとない機会でもある。個々のセッションでテーマが異なっていても、多くの講演者が触れていた話題がいくつかある。

一つは、「高齢化」である。米国においても高齢化は進行している。それにともなって、企業でも、かつてビジネスパーソンが50歳過ぎから引退しはじめていたのが、今日では65歳と年齢が大幅に上昇している。そのため、職場では若手を育てるようなチャンスが減少して、計画的な後継者育成が困難になりつつある。また、高齢化にともなう年金問題も重要になってきている。

第二は、職場の多様化である。特に、世代間のギャップが注目される。高齢化にともなって、米国企業の職場では、四つの世代が共存するというかつてない時代を迎えたという。その世代とは、第二次世界大戦終了までに生まれた世代(Traditional)、戦後から1960年代台前半までに生まれたベビーブーム世代(Boomer)、1960年代半ばから70年代に生まれ、ベビーブーム世代に比べて失業と不況に苦しめられた世代(Generation X)、1980年代から2000年までに生まれたベビーブーム世代の子供たち(Generation Y)である。これらの世代間では、考え方、価値観、行動様式が異なるため、HRも組織の運営や人材の管理においてさまざまな工夫を凝らさねばならなくなっている。さらに、2000年以降生まれの世代(Millenniums)が近い将来職場に入ってくること、5世代が共存可能な組織はどのようなものになるべきかという点についての問題提起もなされていた。

三つ目は、SNSである。フェースブックやリンクイン等のSNSの発展により、個人や組織の在り方や考え方に大きな影響を及ぼしていることが盛んに取り上げられていた。先のMillennium世代は、まさにSNSによって人間関係や組織を規定する世代であり、彼らの手によるSocial Organizationとも呼ぶべき未来組織の在り方に議論が及んでいた。今回のGeneral Session のひとつで、ブッシュ政権で国務長官を務めたコンドレーザ・ライス氏は、人材育成の遅れ、特に新しい世代のMillenniumに対する教育の不足について言及した。人材に対する投資が不十分であると、企業、ひいては国家の競争力を削ぐだけでなく、国防上の危機を招くと強く訴えた。

また、別のGeneral Sessionでは、日本でも著書が多数翻訳されているSocial Science系の世界的ライターの一人である、マルコム・グラッドウェル氏が現在準備している新著の内容を紹介した。グラッドウェル氏が次の本で取り上げるのは、Social Organization、つまりSNSのようなテクノロジーが生みだす、フラットで緩やかなつながりの社会が、これまでの階層組織を核にした社会とどのように異なるかということである。そこでは、社会変革の起こり方が、これまでの階層的社会での革命のような激しいものではなく、求心力のない緩やかなうねりのようなものになりつつあることが指摘された。そして、今日の社会や組織において、そのような新しいSocial Organizationと伝統的な階層をうまく融合させるべきであると言及した。人間の学び、特に教育の場においては、SNS型の緩やかな学習では人材育成が不十分で、階層による指導が不可欠であるとも訴えた。

SHRM Annual Conferenceでは、HRのグローバルなトレンドの最前線とそれに対する取り組みの実践例など、さまざまな講演を聴いたり、世界からの参加者と交流を持ったりすることで、これからのHRのプロのあり方や、持つべきコンピテンシーなどについて多く学ぶことができる。日本国内においても、同じような学びの機会は多々あるかもしれないが、ともすれば、それは日本を中心に見た「国際」であり、世界が見る“Global”とは異なるものとなってしまっているようにも思われる。「日本から見た世界」だけでなく、「世界から見た日本」、さらには「世界から見た世界」という複眼的な視点をもつことが我々には必要であろう。


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