「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」を実施
新卒採用選考プロセスにおける採用力強化のポイントは「誠実さ」
企業における経営・人事課題の解決および、事業・戦略の推進を支援する株式会社リクルートマネジメントソリューションズ(本社:東京都港区 代表取締役社長:山﨑 淳 以下、当社)は、2026年卒業予定の学生を対象に、「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」を実施しました。
採用CX(Candidate Experience)とは、広義には採用選考プロセスを通じて候補者が抱く選考プロセスや企業への印象のことを指しています。本調査では「参加しやすさ」を含む評価観点を6つ用意し、新卒採用選考プロセスと、選考への参加意欲・姿勢との関係を調査しました。
今回の調査からは、採用候補者である学生は選考プロセスに対して「誠実さ」や「納得感」を強く求めており、選考プロセスを通じた候補者(以降、学生)と企業との対等なコミュニケーションが選考参加意欲に直結していることが明らかとなりました。企業においては、候補者体験の質を損なわないよう、重要な判断プロセスにおける人の関与や、学生との信頼関係をいかに構築するかが今後の採用力強化の鍵となります。
【エグゼクティブサマリ】
Topic1:「誠実さ」が2年連続で選考参加意欲への影響度1位。学生が最も評価する選考プロセスは個人面接
- 選考参加意欲への影響が最も大きい評価観点は、25卒に引き続き「誠実さ」
- 学生からの評価が高い選考プロセスは2年連続で個人面接
- 面接で重視されているのは1位「誠実さ」、2位「実力発揮感」、3位「納得感」
Topic2:個人面接実施後の辞退要因上位は「やりたい仕事ができない」と感じたこと
- 面接実施後の辞退理由1位は、個人面接では「やりたい仕事ができない」、グループ面接・AI面接では「面接方法への納得感のなさ」
- 適性検査で重視されているのは同率1位に「公平性」・「実力発揮感」、3位に「誠実さ」
Topic3:AI面接経験者は25卒に引き続き3割弱。全体の6割超は「人による評価」を希望
- AI面接経験者は、25卒・26卒ともに全体の3割弱
- AI面接は、対人面接と比較して「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」を感じにくい、という割合が25卒より増加
- 面接場面で人に評価されたい学生は63.0%、AIに評価されたい学生は15.8%。人に評価されたい理由は、情報収集と見極め不安
- 学生のAI活用度(高・低)によって、企業が採用場面でAIを活用することに抱く印象が変わる
Topic4:ネガティブ情報の過度な開示が志望度低下を招く。学生の性格タイプ別コミュニケーション設計が重要
- ネガティブな情報が多すぎると学生の志望度が下がる可能性がある
- 学生の性格タイプによって志望度が下がる理由は異なる。タイプや価値観に合わせたコミュニケーション設計が重要
1. 調査担当のコメント
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
技術開発統括部測定技術研究所 研究員
甲斐 江里
近年の採用難を背景に、採用CX(候補者体験)の重要性に対する認識は日本でも広がりつつあります。しかし、「どのような体験を、いつ候補者に提供すべきか」という問いに対する明確な答えは定まっておらず、その答えは時代とともに変化し続けると考えています。本調査は、継続的な調査を通じて日本の新卒採用における候補者体験の解像度を高めることを目的としています。この調査結果の活用により、企業と候補者の双方にとってより良い選考体験が生まれることを期待し、調査結果を公開いたします。
株式会社リクルートマネジメントソリューションズ
技術開発統括部測定技術研究所 マネジャー
渡辺 かおり
今回の調査から明らかになったのは、採用CX(候補者体験)における「誠実さ」の重要性です。候補者は、採用担当者や面接者の一挙一動から企業姿勢を敏感に読み取っています。これは、候補者が就職活動を「単なる選抜の場」ではなく、「自らの未来を託せる企業かどうかを見極める場」として捉えていることの表れと言えます。
また、候補者が選考に前向きになる背景には、対等な関係性や人間的な配慮が大きく作用しています。一人ひとりにあわせた面接での細やかな気配りやフィードバック、個別の事情を考慮した柔軟な対応などは、候補者に「自分が大切に扱われている」という実感を与えます。一方で、不透明な選考プロセスや一方的な面接態度、過度な負担感は、候補者体験を著しく損ない、辞退やネガティブな印象につながりやすいことが浮き彫りとなりました。
こうした結果から見えてくるのは、候補者は合理性や利便性だけではなく、「誠実さ」と「納得感」を強く求めているという事実です。AIやデジタル技術の導入が進む中でも、人を尊重し信頼関係を築く姿勢が欠かせないことを今回の調査は示唆しています。効率化と同時に候補者一人ひとりとの真摯な対話をどのように担保するのかが、今後の採用競争力を左右するカギとなるでしょう。
2. 調査の結果
選考参加意欲への影響が最も大きい評価観点は、25卒に引き続き「誠実さ」
- 各選考プロセスについて、学生が評価観点(「誠実さ」「納得感」「実力発揮感」「参加しやすさ」「妥当感」「公平性」の6つの観点)を感じられた場合と、損なわれたと感じた場合に、選考参加意欲がどのように変化するかを選択してもらった。選考参加意欲が“上がる”ことへの影響については、全ての観点で過半数が「選考参加意欲が上がる」と回答していることから、どの観点も重要であることが分かった。中でも最も影響が大きかったのは「誠実さ」、次いで「納得感」「実力発揮感」の順となった。前年の25卒調査では「誠実さ」「実力発揮感」「納得感」の順であったため、1位の「誠実さ」は変わらず、2位と3位が入れ替わる結果となった。
⇒「誠実さ」は、感じられた場合/損なわれた場合のいずれにおいても、6観点の中でトップとなり、学生にとって選考意欲を左右する重要なキーファクターであると言えるだろう。
⇒特に選考を進める企業を厳選している学生にとっては、誠実さが感じられないことが選考辞退に直結する可能性もあり、改めて企業には学生と真摯に向き合う姿勢が求められている。誠実さに代表されるような、学生を尊重し、対等な関係を築こうとする姿勢や、企業がその人自身を求めていると伝わることが、選考参加意欲向上に影響していることが伺える。またそれらは人事担当者や面接者など対人接点場面でのやりとりから感じ取ることが多いようだ。
学生からの評価が高い選考プロセスは2年連続個人面接
- 25卒でも学生からの評価が高かった個人面接が、26卒でも最も評価が高い結果に。参加しやすさ以外の全ての観点が同様の評価を得ていることから、個人面接が採用CX向上における重要な要素を持っていることがうかがえる。
- 「参加しやすさ」の観点のみ異なる動き方で、「履歴書・成績証明書」の評価が最も高い。面接やグループディスカッション、動画選考など、「話す」ことが必要となる選考プロセスは「参加しやすさ」への評価が低くなる傾向があった。
面接で重視されているのは1位「誠実さ」、2位「実力発揮感」、3位「納得感」
- 面接に対して学生が重視する評価観点として、昨年の25卒で1位だった「誠実さ」が26卒でも1位、また「実力発揮感」「納得感」がそれに次ぐ結果となった。26卒は25卒と比較し、「参加しやすさ」以外の5観点で有意に得点が上がっていたが、特に25卒からの差が大きかったのは「実力発揮感」「妥当感」だった。
⇒言語コミュニケーションを介して学生を評価する面接という場に対して、妥当な質問ができているのか、人となりを引き出すような場づくりができているのかを学生は重視しているよう。
面接実施後の辞退理由1位は、個人面接では「やりたい仕事ができない」、グループ面接・AI面接では「面接方法への納得感のなさ」
- 個人面接・グループ面接・AI面接で、選考辞退の経験があるか、またそのきっかけは何か確認したところ、各面接形態の経験者のうち41.7~47.5%に辞退経験があり、そのうち個人面接の辞退経験が一番多い結果となった。
- 面接前に辞退した理由をみると、個人面接は「面接タイミングが他の予定と被っていた」、グループ面接は「面接に参加するための事前準備(企業研究や面接練習など)が手間と感じた」、AI面接は「面接に参加するための事前準備(企業研究や面接練習など)が手間と感じた」と「面接実施までの段取り(会場に行くなど)が手間だった」が同率1位となっている。
⇒個人面接の場合は、面接を通じて学生のセルフスクリーニングが働いているため、学生にあわせた要望の確認や動機づけにより改善する可能性がある。
適性検査で重視されているのは同率1位に「公平性」「実力発揮感」、3位に「誠実さ」
- 適性検査に対して学生が重視する評価観点として、25卒では1位「誠実さ」、2位「実力発揮感」、3位「公平性」だったが、26卒では順位が入れ替わり、同率1位で「公平性」「実力発揮感」、次いで「誠実さ」となった。26卒は25卒と比較しすべての項目で有意に得点が上がっていたが、特に25卒からの差が大きかったのは「妥当感」だった。
⇒昨今はオンライン上で人が受検状況を監視する適性検査が登場し、多くの学生が経験している。監視による受検の公平性担保の意識の高まりを学生が肌で感じることで、公平性の重要性を強く意識する結果となった可能性がある。
AI面接経験者は、25卒・26卒ともに全体の3割弱
- 近年増加しているAI面接への学生からの評価結果を確認するためにAI面接経験有無を確認したところ、調査対象全体のうちAI面接経験者は26.8%と、25卒の28.4%から1.6ポイント減少した。
AI面接は、対人面接と比較して「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」を感じにくい、という割合が50%超
- 人による面接と比較した際のAI面接に対する学生の評価を尋ねた。その結果、「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」については「人による面接よりも、感じにくい」と回答した割合がいずれも50%を超える結果となった。
- 「納得感」については「人による面接よりも、感じにくい」と回答した割合が25卒よりも増加。一方、「公平性」については「人による面接よりも、感じやすい」と回答した割合が25卒よりも増加していた。
⇒貴重な対人接点の選考機会として、人による面接はAI面接よりも根強く好まれる結果となったと考えられる。従来の対人面接をAI面接へ置き換える際は、「妥当感」「実力発揮感」「納得感」「誠実さ」の観点で学生からの評価が低下するリスクがあることを念頭に慎重に判断する必要がある。
面接場面で人に評価されたい学生は63.0%、AIに評価されたい学生は15.8%。人に評価されたい理由は、情報収集と見極め不安
- AIと人のどちらに面接を評価されたいかを確認したところ、 26卒では人に評価されたい学生は63.0%、AIに評価されたい学生は15.8%となった。25卒は人:65.6%、AI:12.8%で、昨年度と比較すると、AIに評価されたい学生が若干増えた。
- 人に評価されたい学生(全体の63.0%)が上げる理由としては「社員に直接会うことで、その企業や社員の雰囲気を知りたい」「人の面接のほうが、自分のことをうまく伝えられそう」と回答する割合が高く、情報収集と見極め不安の両方の観点が重視されていることがわかった。
学生自身のAI活用度(高・低)によって、企業が採用場面でAIを活用することに抱く印象が変わる
- 企業が採用においてAIを活用することに悪い印象を抱くかを確認したところ、評価場面でAIを活用することに学生の28.6%が悪い印象を抱くことがわかった。一方、広報物の制作や選考手続きの効率化、応募者への個別最適化に活用する場合は、悪い印象を抱く割合が12.8~15.3%と評価場面より低い割合だった。
⇒評価場面でのAI活用においては、AI活用度が高い学生であっても22.8%が悪い印象を抱く結果となり、採用選考場面という学生にとって非常に重要なシーンにおいて、評価基準やロジックがわかりづらいAIに評価されることに抵抗を感じる人が多いと想定できる。
ネガティブな情報が多すぎると学生の志望度が下がる可能性がある
- 本選考中に志望度が上がった理由を確認したところ、「自分自身のために十分な時間を割いてくれた」「自分のことをよく理解しようとしてくれた」など、企業の学生への姿勢が影響していた。
学生の性格タイプによって志望度が下がる理由は異なる。タイプや価値観に合わせたコミュニケーション設計が重要
- 学生の性格タイプ別に志望度が下がった理由を確認したところ、タイプにより志望度低下の理由に違いが見られた。
⇒学生の動機づけには、タイプや価値観に合わせたコミュニケーション設計が重要である。
3. 調査概要
調査名:「採用CX(候補者体験)に関する意識調査(2025)」
調査日: 2025年7月
調査手法: Web調査会社を用いたインターネット調査
対象者: 以下全てを経験したことのある大学生4年生もしくは大学院2年生
・自由応募による就職活動
・内定獲得
・個人面接、適性検査(能力・性格とも)の選考プロセス
有効回答数:685名
◆本調査の詳細は、こちらをご覧ください。
(株式会社リクルートマネジメントソリューションズ /2025年10月29日発表・同社プレスリリースより転載)
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