株式会社ハブ:
内定時から「英国研修」を実施。
現場で働く人の自律性を引き出し、強い店長を作る
“ハブ流”人財育成術
総務人事部 マネジャー
余田 佳子さん
クルーへの心遣いを忘れない
今後の人財育成における課題として、どのようなことを認識されていますか。
今年から、いわゆる「ゆとり世代」の人たちが入社してくることとなりました。採用面接などを通して感じるのは、彼らがメンタル面において強くはない傾向があるということ。その部分を強化できるような要素を、研修に入れなければならないと考えています。例えば、新入社員のフォロー研修がありますが、その時にメンタル面をフォローするプログラムを入れていくことが必要になるかもしれません。現場では、店長に言えないような悩み事を持つ人もいるでしょう。そのような状態をケアしていくプログラムも、あったほうがいいと考えます。とにかく1年を過ぎれば、現場にも慣れてきますが、最初の1年間はきめ細かくフォローしていくことが重要です。
現場での仕事を抱えながら、かなり中身の濃い研修を行っているわけですが、それに対して社員から「厳しい」という声は特にありません。店にいると店の仲間たちとしか顔を合わせないことになります。店を離れた研修という場があることで、同期入社のメンバーと会うことができ、横のつながりが強化されます。また、現場で直面している問題も、研修の場では同期の皆で話し合うことができます。そうした効果・効用があるため、研修後のアンケートでも、多くの満足の声をもらっています。
この他に総務人事部として実施している、現場への支援策はありますか。
福利厚生施策をいくつか行っていますが、その中でも特に大きいのが「従業員総会」です。日々、頑張って働いてくれているクルーの人たちに感謝の気持ちを込めて、年に2回、関東と関西、名古屋の三つのエリアで全従業員が集まるイベントを開催しています。関西、名古屋ではハブの店舗で行っていますが、東京では参加者が450人にも及ぶため、外部の会場を貸し切って実施しています。他の店舗の人たちと交流を図ることができるので、楽しみにしているクルーの人たちが非常に多く、私たちもやりがいを感じています。
何よりもお店自体が元気で、明るく楽しく仕事ができる。そうした雰囲気を演出できる人財を、現場の目線で育てていく。それが貴社の特徴のように感じます。
当社では、何よりも人を大事にしています。だからこそ、さまざまな研修をはじめとして、従業員総会なども相当なコストをかけて行っているわけです。また、飲食業界の中では休暇制度が充実していると思います。夏季連続休暇が9日間、冬季連続休暇が5日間あるほか、勤続年数に合わせた連続リフレッシュ休暇(勤続10年―7日間、15年―14日間、20年―21日間)を報奨金・旅行券などを合わせて付与しています。
強い店長を作るためにも、持続的な成長を実現していく
何よりもハブの経営理念には、「英国PUB文化」を日本に広く普及させることがありますね。
しかし、人を育てていくにはそれなりの時間がかかるので、急展開はしない方針です。あくまで「人ありき」の出店計画を考えています。チェーン店ではなく、いわば“地縁店”を目指しています。地域の文化にしっかりと根付いたそれぞれ個性のあるお店であってほしい。店長は、それを支える人。だからこそ、店長には自ら考えて店舗運営のできる人財であることを求めているのです。私たちの業界は、そういう意味で人財育成事業でもあります。
現在、当社は69店舗。2017年に向けての長期ビジョンとして、130店舗、売り上げ100億円を掲げています。また、将来的に日本に「英国PUB文化」を根付かせるには相当数の店舗が必要となってくるでしょう。しかし、今までと同じように持続的なペースで成長していけば、実現は可能なはずです。
そのためにも、強い店長を着実に育てていく必要があります。ハブ大学のカリキュラムを実施し、自分で問題解決ができて、自分の店舗をしっかりと管理できる店長を育てていくこと。これが、これからの目標です。
近い将来、本物の「英国PUB文化」を日本の至るところで楽しめる日が来ることを楽しみにしています。本日は長い時間、ありがとうございました。
(取材は2011年9月21日、東京・千代田区のハブ本社にて)