Sansan株式会社:
全ての人事施策は「生産性向上」のために
~Sansanが進めるミッション・ドリブンな働き方改革とは~(前編)
Sansan株式会社 人事部 部長 大間 祐太さん
ただの保養所じゃない!? 田舎のサテライトオフィスで好成績
貴社にはユニークな人事制度がたくさん設けられていますが、そのねらいもすべて、「生産性向上に資する」という点で一貫性があるわけですね。
その通りです。「どうすればミッション実現に近づけるか」だけを考えていますから。誤解を恐れずに言うと、いわゆる「いい会社」や「働きやすい会社」になることを目的化した、単なる経済支援や福利厚生のみの制度は、Sansanにはありません。福利厚生のように見えるものでも、実際は生産性向上に寄与しているからこそ、制度として成立しているのです。わかりやすい事例として、当社には、徳島県神山町の古民家を借り受けサテライトオフィスとして開設した、「Sansan神山ラボ」という施設があります。
メディアでもよく取り上げられていますね。自然豊かな環境でうらやましい限りです。
ありがとうございます。私も大好きな場所で、つい先日も今年の新入社員を連れて1週間、研修を行ってきました。 神山ラボには常駐のメンバーも二人います。一人は現地採用。もう一人はもともと東京にいた社員で、「結婚を機に東京から離れたい」と転職を申し出てきたのですが、「それなら神山で働けばいいんじゃないか」ということになり、夫婦揃って神山へ移住しました。
そういうのどかなエピソードをうかがうと、やはり福利厚生のための保養施設では、という印象も持ってしまうのですが。
もちろん、ある一面から見れば保養施設であり、健康施策という面もあるでしょう。しかし、本来は社員全体の生産性向上を目的に始めた施策であり、それ以外は副次的なメリットと位置づけています。何しろあそこには豊かな自然があるだけで、雑音や喧噪もなければ、遊びの誘惑もない。一方で、インターネット環境などのビジネスインフラは充実しているので、仕事に集中できる。やはりそれが一番のメリットです。現地へ行ってみると、そのことを痛感しますね。私も営業時代に、部門メンバー8人で約1週間神山にこもって、神山から営業活動をしたことがあるのですが、たしかに成果は上がりました。1週間で30件ぐらい受注を頂きましたから。
エンジニアの方が集中できて生産性が上がるというのはよくわかりますが、営業でも同様とは意外です。そもそも、どうやって遠隔地から営業をかけるのですか。
営業はオンラインのみで行います。「何時何分になったらこのURLをクリックしてください」というようなアポイントの取り方をして、あとはウェブカメラとネット電話。先方から「どこにいるのですか?」「家からですか?」といった反応があり、そこでまず話が盛り上がります。他社の営業の方からは、オンライン上の会話だけでクロージングまで行うのは難しいのでは、と聞かれることも多いのですが、やってみると案外、問題なく進められます。緑が多くて、空気もきれいなので、外へ出るだけですごくリフレッシュでき、仕事への集中も高まりました。
移動時間のロスがないことも、生産性を高める大きなポイントです。営業でトップクラスの成績を上げるメンバーは、神山ラボにいる間、新規アポを1日に9件ぐらいこなします。訪問先ごとに移動を伴うリアルの営業活動では、この件数を達成することはほぼ不可能。移動だけで、1日2時間半や3時間ぐらいかかってしまいますから。オンライン営業にはそれがないので、時間のロスからも心身の疲労からも解放され、生産性が上がるわけです。実は、もともとオンライン営業は商談数を増やすために東京本社で始めた取り組みでした。それがうまくいったので、神山でのオンライン営業にも違和感なく取り組むことができたのです。
「移動のロスを解消して生産性を上げる」ことに着目した取り組みとしてもう一つ、当社には「H2O」(エイチツーオー)という制度があります。H2O はHome to Officeの略。会社の最寄り駅から2駅以内に引っ越せば、毎月3万円の家賃補助が4年間受け取れるというもので、現在、全社員の約3分の1が利用しています。これも福利厚生に思われがちですが、実際は通勤にかかる時間と疲労を軽減し、生産性高く働いてもらうのがねらいです。現に、H2O を使っているメンバーからはハイパフォーマーが多く出ています。