KDDI株式会社:
なでしこ銘柄もグローバル化も「信頼ある人事」から
「現地現物」で変革を加速するKDDIの「アクティブHR」とは(後編)[前編を読む]
KDDI株式会社 理事 コーポレート統括本部 総務・人事本部 副本部長
白岩 徹氏
女性活躍の壁は女性自身のマインドセットと男性上司の無理解
「KDDIフィロソフィ」の中には、「ダイバーシティが基本」との理念も掲げられていますが、貴社は特に女性活躍の面で、その取り組みが注目されています。2012年度から4年連続の「なでしこ銘柄」選定は、貴社を含め3社だけという快挙でした。
フィロソフィ策定の際に侃々諤々の議論があったといいましたが、ダイバーシティの項目を入れることに異論を挟む人は、誰もいませんでした。特に女性活躍推進については、お客さんの半分は女性なのですから、社内の意思決定の場や戦略的なポジションに女性がどんどん進出することは、顧客満足度を高め、会社を強くすることにつながっていくはずです。私自身、“男社会”である営業部門出身ですが、次に異動したCS部門では、逆に女性の活躍がかなり進んでいて、目からうろこでした。女性のリーダーがいるだけで会議も活性化し、斬新な意見やアイデアが出てくるのです。
また、男性中心の職場には、長時間労働を美徳とする旧弊も根強く残っていますよね。女性はそれを見て、「あんな働き方は無理だ」とリーダーになることをあきらめがちですが、女性は本来、時間の使い方がうまい。短時間でアウトプットを出す、女性なりの働き方でリーダーを目指せばいいのです。そういう女性が増えることで、生産性よりも仕事にかけた時間の長さが評価され、美化されるような悪しき伝統も変えられるのではないか。働き方改革も、女性活躍推進の狙いの一つとして位置付けています。とはいえ実際に取り組んでみると、現場の抵抗や阻害要因は決して小さくありませんでした。
どういう抵抗があったのですか。
一つは、上長の大半を占める男性社員の抵抗です。表立って反対はしないものの、内心、「何が女性活躍だ」と思っている男性上司がいるのも事実。そこを突破するためにトップを巻き込みながら、いやが応でも女性の部下を育成して、引き上げなければならない環境や仕組みをつくってきました。各部門長が女性の部下の中からライン長にしたい人材を推薦し、集合研修や経営陣とのコミュニケーションなどで育成する「女性ライン長登用プログラム」もその一つ。各部門でリーダーや管理職に推薦された女性社員については、「いつ、どの部署に登用するのか」までイメージして個々の課題を洗い出し、上司に名指しで育成計画書を作成するよう求めています。そしてわれわれ人事も、推薦リストをもって現場へ出向き、各部門長に「誰を上げますか」「いつまでに上げられますか」と、状況を直接聞いて回っているのです。女性登用に関する具体的な数字を、経営会議などの場に上げることも効果的。目標や計画が“ノルマ”になりますからね。
もう一つの阻害要因として、「管理職にまでなりたいとは思わない」という女性自身のマインドセットが挙げられます。これを何としても変えなければいけません。要するに、意識改革です。そのために、先述した管理職候補の女性社員200名とわれわれ人事との個別面談や、トップ自らが彼女たちと対面し、なぜ当社には女性活躍が必要なのかを直接語りかける「ダイレクトミーティング」などの取り組みも地道に行ってきました。
女性活躍推進については、15年度に女性のライン長比率を90名登用まで上げるという目標を公式に掲げ、達成することはできましたが、まだまだ物足りなく、これだけで当社の意思決定や社員の働き方を劇的に変えられるとは思っていません。