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経営者・人事の視点で取材!業界の傾向と対策
社宅代行関連サービスの比較と選び方

社宅代行関連サービスの比較と選び方

人事担当者の業務は幅広いが、その中でも、専門知識が必要とされ、なおかつ業務が複雑な社宅管理をサポートしてくれる借上『社宅管理』に関するサービスをご紹介する。

※この記事は2005年10月に作成し、2018年3月に各社サービスに関する情報を更新したものです。

社宅代行サービス発生の背景

1990年代半ば、日本国内でも、アウトソーシングの需要が高まるなか、人事部門の業務のアウトソーシングとして『社宅管理代行』サービスが始まった。 日本国内に進出する外資系企業における借上社宅管理のフルアウトソーシング、国内大手企業の社有社宅管理・借上社宅管理のアウトソーシングの要望が、不動産賃貸業・不動産仲介業・専業アウトソーサーに持ち込まれ、サービスが確立された。社宅管理業務のアウトソーシングのサービス内容としては、社有社宅の設備保守・入退居管理と、借上社宅の契約・解約管理、入退居管理、入金管理などがある。

社宅の目的と管理業務

法定外福利厚生費の削減や、自助努力といった福利厚生サービスのスリム化に関するキーワードを耳にすることがあるだろう。人事トレンドの中で、社宅は既に過去の遺産のようなシステムのように感じることがあるかもしれない。しかし、平成17年9月30日に人事院職員福祉局が民間企業4,600社を対象に行った「民間企業の勤務条件制度等調査」では、(1)社宅がある企業の割合は63.9%、「自社保有社宅」がある企業の割合は32.7%、「借上社宅」がある企業の割合は53.4%。(2)社宅がある企業のうち、平成15年4月1日から平成16年10月1日までの半年間に社宅を新たに設置した企業の割合は27.3%。多くの企業が社宅を従業員に提供し続けていることがわかる。

社宅分類の二つの軸

社宅には、会社が土地や建物を所有する「社有社宅」、一般賃貸物件を会社が借上げて従業員に提供する「借上社宅」との2種類があり、それぞれ管理に必要な業務が異なる。社有社宅については、2004年4月に財団法人労務行政研究所が発表した「脱・年功、成果主義志向が強まる 企業における人事労務施策の動向」によると、社有社宅の整理・売却をする企業が目立っている。90 年代に6割超の企業が社宅を保有していたが、2000 年代には4割台にまで落ち込んでいる。また、同様に、国土交通省から発表された「平成15年法人土地基本調査・平成15年法人建物調査」でも、平成5年以降、連続して、資本金規模の大きい法人ほど所有率が大きく減少していることがわかる。

社有社宅と借上社宅では、必要となる管理項目が異なる。管理項目の例は以下のようなものがある。

  • 社有社宅
    資産管理・設備管理・入退居管理など
  • 借上社宅
    物件の斡旋~入退居管理、契約管理・支払管理・預入金残高管理など

※実際の業務内容については、4の『社宅管理アウトソーシングの一般的な業務範囲』でご紹介する。

また、社宅の提供目的により、社宅を2種類に分類することができる。一つは、「厚生社宅」と呼ばれる社員満足度向上のための福利厚生の一つとしての住居提供、もう一つは「転勤社宅」とも呼ばれる、会社都合の異動・転勤による社員への赴任地での住居提供がある。

「厚生社宅」として、一般従業員が入居する場合と、「転勤社宅」として、転勤者が入居する場合とでは、一般入居者に入居の条件がつけられているケースが目立ち、企業の住居提供は、転勤者、遠距離通勤者、工場勤務者などを対象とする傾向が見られる。

こうした二つの流れを見ると、企業の社宅施策は、人員配置に合わせて、民間から物件を借上げて転勤者に提供する借上社宅が中心となっていると見ることができる。また、その一方で、保有している社宅物件の入居率を確保するため、運用上の入居基準を下げている例も見られる。

社宅代行・アウトソーシングのメリット

社宅の大部分を占めるのは、転勤借上社宅のパターンだ。また、転勤借上社宅の場合が、最も管理業務に手が掛かる。この借上社宅管理業務の辛いところは、

(1)取引先である家主は個人のケースが多く、契約や交渉に難航するケースがある
(2)即時入金が求められ、締支払通りにいかない
(3)敷金などの一時預入金の管理をする必要がある
(4)地域によって商習慣が異なる
(5)原状回復費用の交渉などに専門的な知識が求められる
(6)異動に伴う転勤者が出るタイミングで業務が集中する
(7)配属のスケジュールを遵守しなくてはいけない

などが挙げられる。借上社宅管理業務は、人事部門の業務範囲だけではなく、入金・返金管理をする経理部門、預入金残高管理をする財務部門、など影響範囲が広い。詳しく見ていくと、経理部門では、契約時の一時金振込、家主への毎月の家賃の個別振込、家主の個人名での敷金返却の入金確認、財務部門では敷金の預入金残高管理と返却率管理などの業務が発生する。

既に、社宅制度を運用し、社宅を保有、あるいは借上げている企業であれば、最新のサービス動向を確認し、もっとラクになる運用がないかどうかを検討するといいだろう。

一般によく言われていることだが、アウトソーサーを使うメリットとしては、コア業務への人的資源の集中と、業務のクオリティ向上が上げられることだ。また、社宅管理業務に関して言えば、入居時の契約や退居時の交渉に際しアウトソーサーの不動産知識を借りられることや、従業員へのサービスをアウトソーサーが行ってくれることや、支払規定外の入金作業など煩雑な事務作業が軽減されるというメリットがある。

社宅代行・アウトソーシングの一般的な業務範囲

一般的に、アウトソーサーが行う業務をご紹介する。(以下、*印は各社により内容が異なる部分)

新規契約時 ●社宅規定と転勤者の希望に合致する物件の斡旋
●物件の下見のセッティング*
●物件申込
●一時金の立替払い
●契約書内容の精査・交渉
●契約書の捺印*
●引越手配*
●鍵の受け渡し
●入居の案内
●賃貸借契約書の保管*
更新契約 ●更新スケジュール管理
●更新条件精査
●更新料・手数料の立替払い
●更新契約書作成
●更新契約書の保管
解約時 ●解約申込受付
●家主解約通知
●鍵の返却
●原状回復見積精査交渉
●敷金精算及び回収業務
●敷金残高管理業務
●解約書類保管
入居者入れ替え・退出補修業務 ●入居者入替手続き・諸連絡
●退室時ルームチェック及びリフォームの手配
●入居のご案内
入室時対応業務 ●入居者及び家主・管理会社との対応及び折衝
●社宅担当者様への定期報告
●トラブル・苦情の対応
月次業務 ●毎月の家主への分散支払(代行会社への一括入金)
●月次社宅データ報告
●入居者負担額計算*
年次業務 ●入居者及び家主、管理会社との対応及び折衝
●社宅担当者様へ連絡報告
●トラブル及び苦情の対応
●支払調書

社宅代行・アウトソーシングサービスのトレンド

従来の社宅管理代行サービスの多くは、先に挙げた内容をカバーしているが、アウトソーサーによって、サービスの内容が異なる部分について補足すると以下のような点が挙げられる。

代理捺印と捺印代行

契約に際し、期日の迫っている賃貸契約書に会社の印鑑を捺印することは、決済・承認に手間と時間のかかる企業ではとても骨の折れる作業になる。これを、代わって捺印するのがアウトソーサーの役割なのだが、2つの方法がある。二つのうち、どちらも代理捺印と呼ばれることが多いのだが、ここでは便宜上、代理捺印と捺印代行と呼びわけることにする。捺印代行とは、借上社宅契約用社印を物理的にアウトソーサーに預け、必要に応じて捺印を委託するパターン。もう一つの代理捺印とは、代理者としてアウトソーサーが契約書に捺印するパターンがある。

MEMO
Q:契約時に捺す印鑑が代表者印でなくていいのでしょうか?(社宅専用印で社宅の賃貸借契約ができますか?)
A:通常の代表者印でなくともOKです。

Q:アウトソーサーが企業から印鑑を預かって契約書に捺印することは合法でしょうか?
A:通常、合法です。

Q:代理人の捺印は契約として有効でしょうか?
A:代理人による契約もOK。契約者は、アウトソーサーを代理人として権限を付与します。原則は委任状を作成して、相手方に見せる必要がありますが、商法504条で、商行為(ビジネス)の場合は委任状を作成したり、相手に見せたりしなくても構わないことになっています。
※1. 押印代行のリスク ―アウトソーサーに悪用されるリスク この場合、原則として、企業は契約を履行しなければならなくなる可能性が高い。ただし、権限外のことをアウトソーサーがした場合は、アウトソーサーに対して損害賠償を請求することが可能。
―アウトソーサーに預けた印鑑が紛失・盗難にあった場合、代理人だと称して印鑑を悪用されるリスク
この場合、印鑑を預けた企業側は明らかに落ち度があるとされる可能性が高いので、印鑑が悪用されることによって生じた事態に関して、損害賠償を請求された場合には、不利になることが多い
※2.代理人として契約を行う場合のリスク
―アウトソーサーが勝手な契約を締結するリスク
この場合も、原則として、企業は契約を履行しなければならなくなる可能性が高い。ただし、権限外のことをアウトソーサーがした場合は、アウトソーサーに対して損害賠償を請求することが可能。

<『日本の人事部』情報掲載中 匿名社会保険労務士・行政書士先生からのアドバイス>

転貸システム

ここ数年、アウトソーサーのサービスとして、「転貸」型のサービスが始まっている。転貸システムとは、家主と賃貸契約を結ぶのは、企業ではなくアウトソーサーとなり、アウトソーサーが契約した物件を企業は「転貸」するという仕組みだ。この場合のメリットは、会計上の預入資産となる敷金を経費化できることだ。通常の敷金の預入の代替策は各社によって異なる。通常、預け入れた敷金の50%は退居時の原状回復費用と相殺されてしまうが、原状回復費用を別途精算するケースや、賃料や入居年数に応じて一定の比率で原状回復相当額を支払うケースがある。また、もう一つのメリットとして、個別の家主(個人)との取引をしないため、貸主の倒産や退居時のトラブルの回避に繋がる。

オンラインサービス

アウトソーサー毎に、様々なWEB上のサービスが展開されている。後半で詳細は紹介するが、進捗管理をWEB上で確認するサービスや、特定のサービスを受けられる物件をオンラインで検索するサービス、ネットワーク化された全国の不動産会社の店舗を検索するサービスなどがある。

社宅代行・アウトソーシング最新サービス情報

社宅管理専用システム「借上くん」

●社宅管理に特化した業務システム/社宅管理システム「借上くん」は社宅管理のために生まれた専用システムです。振込データ作成、法定調書作成など、社宅管理に必要な機能を網羅しています。

●社宅管理の業務を熟知しています/借上くん販売開始から25年。多くのお客様にご利用いただいています。この経験で培ってきた知見を活かした導入支援とサポートをご評価いただいています。

●安価に簡単に導入いただけます/導入や利用が簡単なクラウドサービス。Webブラウザがあればご利用いただけます。月額料金20,000円からご利用いただけます。

費用 初期設定費用  20万円
ランニング費用 月額200円/1戸(最低利用料月額20,000円。ボリュームディスカウントあり)
導入社数 約300社 ※2017年9月期実績
サービス形態 代行・アウトソーシング
対応業務 契約・更新・解約手続き税務署提出書類作成データ管理
物件エリア 全国

社宅向けUR賃貸住宅

●経費削減ができます!/UR賃貸住宅なら、入居時の費用負担が軽減されます。礼金・仲介手数料は不要です。さらに保証人も、契約更新の際の更新料もいりません。敷金は通常家賃の2か月分です。

●複数戸の契約では家賃割引制度があります!/2戸以上の同時契約を対象とした「複数戸割引制度」と、10戸以上ご契約中の法人を対象とした「大口割引制度」をご用意しております。

●資本金1億以上等企業様ならさらにおトク!/証券取引所に上場している法人や資本金1億円以上の法人等の場合は、ご希望により敷金が不要となります。ご提出書類は会社概要書(初回のみ)・申込書の2点で結構です。

費用 初期費用は、入居開始可能日の属する月の家賃及び共益費 + 敷金(家賃2ヶ月分)となります。
※敷金が不要となるケースもあります。
1LDKのお部屋が平均5、6万円の家賃でご契約いただけます。
導入社数 約8800社 ※2016年3月期実績
サービス形態 代行・アウトソーシング
対応業務 物件手配契約・更新・解約手続き
物件エリア 全国

アウトソーサーとの上手な付き合い方

社宅管理だけでなく、アウトソーシングを導入する際のステップと注意点をご紹介したい。 これまで、社内で行ってきた業務を外部に委託する場合、どのような点に気をつけたらいいのだろうか。

まず、どのような目的でアウトソーシングをし、どのような効果を期待するのか、自社の基準を明確にしておくとよい。

アウトソーシングの目的を明確にする

アウトソーシングの効果測定基準を明確にする

●アウトソーシングに何を期待するのか
●アウトソーサーのパフォーマンスをどう評価するのか

アウトソーシング対象業務を選定する際、必要となるのは業務プロセスの分析である。社宅管理業務のトリガーとなる「入居者の決定」から、具体的にどんなアクティビティが発生し、どのようなプロセスが必要なのかを洗い出す必要がある。また、他部署との連携が必要となる月次、年次で必要な業務も同様だ。

アウトソーシングする業務範囲を明確にする

アウトソーサー選定の前に自社を分析
●業務プロセスのマッピング
 ・アクティビティの洗い出し
 ・既存の組織構造の把握

●プロセス分析
 ・アクティビティ単位の工数
 ・アクティビティ単位の人件費
 ・アクティビティ単位の業務量
 ・パフォーマンスの評価基準

●見直す必要のあるプロセスを洗い出し、改定するプロセスのドキュメント化

●報告プロセス(いつ、誰に、何を、どうやって)

●データ提出プロセス(月次・年次 いつ、誰に、どんなデータを、どうやって)

最後に、自社の目的にあったアウトソーサーを選ぶための基準の一例を紹介する。実際のアウトソーシングの内容については、事前に提案書等で確認をするものとして、社内で検討すべき項目として以下の項目が考えられる。

委託分野とアウトソーサーの専門性・サービスクオリティの維持体制を吟味する

アウトソーサーの選定
●アウトソーサー毎の業務プロセスの把握
 ・プロセス分析
  ◇工数・人件費・関係者数・社内の業務量の比較

●アウトソーシング時の社内運用体制・組織構造のシミュレーション

●ガバナンス
 ・個人情報取扱、機密保持等に関し社内規定・外部認定を有するかどうか

●サービス提供のインフラ
 ・物件斡旋のための情報インフラ
 ・対応するスタッフの人数と業務内容
  ◇専門家を有しているか
  ◇必要に応じて委託する業務に専門家が対応してくれるか
 ・チーム(組織)構成
  ◇専任の担当者が委託する業務を担当するか
 ・オペレーションチーム全体の人数
 ・サービスを受ける会社の数
  ◇同規模の受託実績があるか
  ◇サービスのクオリティが保たれるかどうか
  通常時、繁忙期のスタッフ1名がかかえる取扱新規戸数
  サービスを提供するスタッフのプロファイル

●業務の移転方法
 ・移転完了までの日数
 ・移転にかかる工数

アウトソーシングする目的、アウトソーシングする業務、アウトソーサーに求めるパフォーマンス、アウトソーシングにより得ることを期待する効果を、事前に想定し、自社に合ったアウトソーサーと良好なアウトソーシング関係を構築したい。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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