週末出勤や夜勤が前提の転職
社会を支える大事な仕事だが
残業が多い仕事や休日出勤が頻繁にある仕事だと言われたら、できるだけ避けたいと考えるのが、転職活動をしている人の本音だろう。では、もともと平日が休みで週末は出勤という会社、あるいは業務の性質上夜間の勤務があるような会社はどうだろうか。サービス業や社会のさまざまなインフラを守っている業界には、そういった勤務体制の会社も少なくない。しかし、今まで平日や昼間の勤務しか経験したことがない人にとっては、その働き方がイメージしにくいようだ。
始業時刻は午前2時
「ぜひ人材の紹介をお願いしたいと思っています。詳しい募集条件をお話ししたいので、一度弊社までお越しいただけますか」
ある企業から求人依頼の連絡があった。ただ、わざわざ人材紹介会社にコンタクトしてくる企業は、採用が難しい募集をしていることが多い。例えば急な欠員が出たので大至急入社してほしいとか、業種や職種が不人気で公募しても候補者が集まらない、といった事情がある場合だ。
後日訪問したT社は、勤務時間帯がやや特殊な業界だった。鮮魚を中心とした食品を扱う商社で、事務所も大きな市場の中にある。訪ねたのは午前9時頃だったが、オフィス内には社員の姿はまばらだった。
「この時間帯は管理部門の社員くらいしかいないんですよ。営業はもっと早い時間がピークになります。今は取引先に出向いていますね」
採用担当の役員が事務所内を見渡しながら説明してくれた。人事や経理は午前8時始業だが、営業などはまだ深夜の午前2時から業務が始まるという。
「今回は営業と人事を募集したいと思ってお願いしました。営業はちょっと時間帯の関係で難しいかもしれないですが……」
同業での経験は問わないという。とはいえ、やはり勤務時間が気になる。営業はほとんど夜中に働くことになるし、管理部門の午前8時始業も、都内の会社としてはかなり早いほうだ。
「人事も8時くらいには来てもらわないと、営業の社員と全く顔を合わせないまま終わってしまうことになるんですよ。それでは仕事になりませんからね」
そのかわり、社員食堂ではおいしい定食を好きな時間に無料で食べられるという。市場の中にある会社らしい福利厚生だ。
結局、T社に面接可能な候補者を紹介することはできなかった。転職希望者に企業を紹介するキャリアアドバイザーが、「あまり特殊な勤務条件の会社を紹介したくない」と二の足を踏んでしまったのだ。
「最近の転職希望者は、ブラック企業を紹介されたくないという意識が強いですからね。勤務時間が午前2時からというだけで、とんでもない会社を紹介されたと感じる人もいるでしょう。紹介する側も、どうしても用心深くなってしまうんですよ」
同僚のキャリアアドバイザーの言葉だ。