珍しい転職理由もある
企業での面接ではそのまま言えないことも
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巻き込まれたくない「面倒なこと」
「これから言うことは絶対に外部には公表しないでください。私のクビがとんでしまいますから」
大手企業の関連会社で営業課長として勤務しているBさん。転職理由を聞いたところ、急に声をひそめて話し始めた。
「実は、会社で不正を発見してしまったんです」
ごく簡単にいうと、Bさんの会社は業績を底上げするためにグループ会社を使って架空の売上を計上しているのだという。大手関連なので親会社は当然上場している。この問題が表沙汰になると、経済事件として大きく報道されるかもしれない。
「それは誰がやっていることなんですか」
さりげなく私は質問してみた。もしBさん自身が関与しているとすると、不正の片棒を担いでいた人を別の企業に紹介していいのかという問題が出てくるからだ。
「おそらく私の上司の部長だと思います。役員の指示もあるかもしれません。このままだと近い将来、私にも手伝え、という話になるかもしれない。そんな面倒なことに巻き込まれるのはごめんなので、そうなる前に転職したいと思ったんです」
すごい話になってきた。不正の話も、Bさんは関与してないという話も、どちらも証拠はない。かといって「証拠はありますか」と聞いて、出てくるような性質のものでもないだろう。ここはいったんBさんの言うことを信じるほかないようだ。
「こんなこと、企業での面接では言えないですよね。転職理由をどう伝えるのがいいんでしょうか。そのへんもぜひご教示いただきたいのですが」
確かに、本当の転職理由を企業に話すわけにはいかない。かといって、まったく嘘の理由を話しても、どこかでボロが出てしまうかもしれない。
「不正の話はいったん置いておいて、Bさんが新しい職場に希望することもあると思います。そのあたりから一緒に考えていきましょうか」
本当のことが言えない転職というのもたしかにあるなと思いながら、私は面談を続けたのだった。
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