職場のモヤモヤ解決図鑑【第95回】
こんなはずじゃなかった!
新入社員の入社後ギャップ

自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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児玉 夏樹(こだま なつき)
社会人3年目の25才。志田の部下。ネットとサブカルが好き。
後輩の町田さんの話から、入社後のギャップに考えを巡らせる児玉さん。研修での座学期間が長かったり、想像していた業務と実際の業務が異なっていたりするなど、新入社員が理想と現実のギャップに戸惑う理由はさまざまです。リアリティショックと呼ばれる現象について、発生する仕組みや影響を整理します。
リアリティショックとは
リアリティショックとは、「『職務に対する高い期待』と『職務で失望する経験』とが衝突」すること。職場環境や人間関係、業務内容などさまざまな要因によって引き起こされます。入社前と入社後で生じやすいことから、「入社後ギャップ」とも言われます。
リアリティショックが発生する仕組み
リアリティショックの要因は、主に「同僚・同期」「仕事」「評価」「組織」の四つに分類されます。
四つのなかでも組織と評価に起因するリアリティショックは、離職の要因となる可能性が高いと言われています。新入社員が何に対してショックを感じているのかを把握し、フォローすることが重要です。
さまざまなリアリティショック

リアリティショックには、主に三つの種類があります。一つ目は、「楽観的な期待に対して厳しい現実が待っていた」ケース。「華やかな部署で働けると期待していたのに、現実は地味でハードな部署に配属された」といった状況があてはまります。
二つ目は、「肩透かし型」のケース。成長したい・鍛えたいと期待していたのに、実際は自己成長を促す環境ではなかった場合に発生します。たとえば、「ばりばり仕事ができると期待していたのに、仕事が少なく暇だった」といった状況があてはまります。
最後は、看護師や教師など「専門職型」のケース。事前に仕事の厳しさを想像していたにもかかわらず、それを超える厳しい現実に直面することがあります。たとえば、「実習で現場の厳しさを知っていたが、働き始めるとさらに厳しい現実が待っていた」という状況があてはまります。
リアリティショックの影響
リアリティショックは、心理面や行動面でさまざまな影響を及ぼします。
心理的影響 | 行動的影響 |
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リアリティショックを放置すると、早期離職の増加、育成コストの増大、生産性の低下など、組織に影響が拡大する可能性があるため注意が必要です。
ショックを受けても辞める人、辞めない人がいるのはなぜか
多くの新入社員がリアリティショックに直面しますが、すべての新入社員が離職するわけではありません。離職につながるリアリティショックには、以下のような特徴が見られます。
【離職につながるリアリティショックの特徴】
- 個人では乗り越えられないもの
- 正当化できないもの
- 成長に結びつかないもの
一つ目は、職場全体の関係性が悪く、毎日ギスギスした空気の中で働かなければならない、といったケース。新入社員が主体的に働きかけても、一人では解決できない状況が当てはまります。
二つ目は、労働条件が入社前の説明と異なり、かつ納得感のある説明がなかった、というケース。会社から納得できるフォローがなければ、新入社員の不信感は高まっていくでしょう。
三つ目は、評価制度や組織の状況などが、自分のキャリアにマイナスになると感じるケース。その業務や壁を乗り越えたとしても、将来の見通しが立たなければ、離職につながってしまいます。
リアリティショックのポジティブな側面
マイナスのイメージが強いリアリティショックですが、ネガティブな側面だけではありません。ショックを経験することは、適応力や問題解決能力を向上させ、自己成長する機会になり得ます。長期的に見れば、ショックを乗り越えることで自己効力感やキャリア形成が加速することもあります。
リアリティショックをポジティブな効果につなげるには、企業が入社後のオンボーディング研修を強化したり、変化に適応するためのサポートをしたりすることが重要です。
【まとめ】
- リアリティショックは理想と現実が異なることで起こる悩みや困難
- 個人で乗り越えられないショックや正当化できないショックは離職につながりやすい
- リアリティショックをポジティブな効果につなげるためには、企業の支援が重要
後編では、リアリティショックへの対策について紹介します。

自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!