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大人の発達障害だからこそ“天職”に巡りあえた!!
働きづらさを働く喜びに変える、特性の活かし方とは(前編)

発達障害の「生き方」研究所‐Hライフラボ

岩本 友規さん

うつ病、双極性障害を経て、33歳で「大人の発達障害」が発覚

その会社で私が最初に配属されたのは、購買部でした。社内各部署のリクエストに応じて、業務に使うパソコンや販売用の携帯端末などを、業者から適切な価格で仕入れる仕事です。しかし、そこで求められたのは、「同じような数多くの案件」を「期限に間に合うように」「同時に並行して」「他の部署の人とも連携しながら」進めるスキルでした。私にとっては苦手なことだらけで、うまくいくはずがありません。ADHDの傾向がある人は、物事に優先順位を付けたり、計画的に順序立てて進めたりすることが下手で、私の場合は作業の処理スピード自体も遅い。実際にこうして話している印象以上に作業速度が遅いんです。何とか業務についていこうと、毎日始発で出勤して終電までがんばっても、私のデスクの書類受けには、仕掛かりの伝票の山がどんどん積み上がっていきました。疲れと焦りからミスも連発、普段は穏やかな上司を怒らせたことも一度や二度ではありませんでした。

 がんばっても成果が出ないという状況は、岩本さんにとって、人生初の経験だったのではありませんか。

そうですね。大人の発達障害と診断される人の中には、学生時代はむしろ学業優秀だった人も少なくありません。私の場合も、勉強や運動、サークル活動に打ち込み、それなりの成果を上げることで自分の居場所を確保してきたようなところがありましたから、それがうまくいかないのはつらかったですね。他にも、中途入社だから仕事ができなければいけないというプレッシャーや、気軽に他人に相談できないコミュニケーションの問題など、いろいろな要因が積み重なったのでしょう。朝、私が異常なほど寝汗をかいていることに、妻が気づいたのは、それまで感じたことのない大きなストレスに追い詰められる日々が、半年ほど続いた頃でした。数週間後にはとうとう起き上がれなくなり、受診したメンタルクリニックの指示で休職を余儀なくされてしまったのです。

 当初は「うつ病」、後に「双極性障害Ⅱ型」と診断名が変わり、休職生活ものべ1年におよんだそうですね。

復職支援のデイケアなどに通い、最初の休職から約10ヵ月でいったん復職したのですが、職場の状況や担当業務が以前と変わらないので、結局は再休職と復職を繰り返すことになってしまいました。体調が安定しない上、コロコロ変わる薬との相性も悪く、この時期が一番きつかったですね。なかば“廃人”のような状態で、引きこもっていたこともあります。

そんな中、業績不振で勤務先が買収されることになり、勤務地も変わったので、新しく移行した会社の産業医から、勤務地に近い現在の主治医を紹介してもらいました。いま思えば、それが大きな転機となったのです。転院して2、3ヵ月後、「今度はこれを試してみましょう」と、ある薬を処方されました。何の薬だとは聞かされていなかったので、インターネットで検索してみたら、「ADHD」の治療薬として使われるものでした。そこでさらに調べていくと、これはまさに自分のことじゃないかと。ADHDも、発達障害も、そのとき初めて知ったのですが、仕事が遅い、段取りが下手、うっかりミスや先延ばしが多い――特徴的な症状がほぼすべてあてはまり、疑いは確信へ変わっていきました。思い切って主治医に「ADHDの傾向があるのですか?」と質問し、イエスの答えを受けた瞬間、ようやくスッキリできたのを覚えています。

 根底に発達障害があり、うつ症状も、双極性障害も、その“二次障害”だったというわけですね。

そうなんです。自分が大人の発達障害であるとわかったことで、私は若干のあきらめと同時に、大きな救いを得ました。社会へ出てから痛感してきた生きづらさや働きづらさ。仕事がうまく進まなくて周囲に迷惑をかけたり、ストレスをためて体調を崩したりしたことも、自分のやり方だけのせいではなかったのかもしれない。そう思えるようになっただけで、気持ちがすごく楽になっていったのです。

岩本友規さん 発達障害の「生き方」研究所‐Hライフラボ

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

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