「一人三役」制度でシニアも女性も大活躍
すべての人が活躍できる、イキイキとした働きがいのある職場をつくる(後編)[前編を読む]
三州製菓株式会社 代表取締役社長
斉之平 伸一さん
社員の助け合い事例を発表し、「お互いさま」の文化を醸成
「一人三役制度」(前編参照)で、女性の活躍推進には助け合いの風土が必要とお聞きしました。他に行われている施策はありますか。
育児や介護をする社員も、助けてもらうばかりでは申し訳ない気持ちになってしまいます。その人にも人を助ける場面をつくりたいと考え、「一善活動」と称して、毎日朝礼で社員同士の助け合いの事例を発表しています。職場のグループウェア上にも事例を記載して情報を共有。月に1回、もっとも良い事例を表彰しています。ここでの助け合い事例は育児や介護だけが理由ではありません。「残業になりそうなところを助けてもらった」「仕事でミスをしそうになったときに助けられた」など、いろんな形の助け合いが生まれています。
人と人が競争ばかりさせられている会社では、常に緊張しなければならないし、そこには足の引っ張り合いも生まれます。「一人三役」という制度によって、職場に「お互いさま」という雰囲気ができて居心地がよくなれば、会社に来ることは楽しくなり、仕事へのやりがいも生まれるでしょう。助け合える風土にはそれだけ全社員、そして会社へのメリットがあるのです。
また1年に1回、パートも含めた全社員を集め、一日かけて「事業計画発表会」を行っています。事業計画や決算内容、理念、全社員のプロフィールなどが載った手帳が配られ、皆で共有します。このことで、理念へのさらなる理解と、企業風土の醸成が進められていると思います。
そのような施策は、どのようにして作られたのでしょうか。
年2回、社員に制度についての満足度調査を行い、シートに思いを書いてもらっています。意見は記名でも無記名でも可。例えば「子どもが小学校3年生になるまで、残業なしにできないか」など、社員からさまざまな要望が上がってきます。私がすべて目を通して、就業規則の変更などで早めに対応するべきものがあればすぐに決定し、掲示、発表するようにしています。話し合いや調整が必要なものであれば、委員会で話し合って決めていくこともあります。このように素早く判断する理由は、変化のスピードこそが中小企業のメリットだと思うからです。最近では介護の相談も増えてきており、在宅勤務の整備にも取り組んでいます。
女性と共に、新たな働き手として注目されるシニア人材の活用は進んでいますか。
当社には、77歳まで継続して勤務できる仕組みがあります。以前はシニア社員を嘱託と呼んでいましたが、今よりもっと輝いて仕事をしてほしいという願いから、70歳以降を「プラチナ社員」と呼ぶことにしました。現状、十数名が活躍中で最高齢は74歳です。これからも社員には年齢や性別の違い、障害などの有無に関わらず、活躍してもらいたいと思っています。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。