「一人三役」制度でシニアも女性も大活躍
すべての人が活躍できる、イキイキとした働きがいのある職場をつくる(前編)
三州製菓株式会社 代表取締役社長
斉之平 伸一さん
女性企画を成功させるため、5年がかりでヒットさせた「揚げパスタ」
社員からの意見が引き出される中で、どんどん新商品が生まれています。その一つが「揚げパスタ」ですね。これはどのように生まれたのでしょうか。
女性社員から「新しいお菓子として、パスタを揚げてみたらどうでしょう」という提案があり、「揚げパスタ」が生まれました。量産されたことのない商品であり、製造機械から自社で作るしかなく、過程は実に大変でした。そのうえ、出荷しても5年間売れなかったのです。世の中になかったものはなかなか売れない。しかしここでやめてしまうと「女性が企画する」という流れが途絶えてしまうので踏ん張りました。味を変えたり、小分けにして食べやすくしたり、パッケージデザインを工夫したり。また、何度も製造機械をバージョンアップし、おいしい揚げパスタが作れるように改良しました。そうして5年目を過ぎてようやく売れるようになったのです。
最近ではオヤツとしてだけでなく、有名なホテルのバーでビールやワインのおつまみに出されたりしています。揚げパスタは会社の売上の1割を占める主力商品に育っており、これからはギフトの需要でも期待しています。先日、米国のフードショーに出品したところ、パスタを揚げるという商品は世界でも例がないということがわかりました。この市場はまだまだ広がると思っています。
社員一人ひとりが個々に選んだテーマについて勉強する「一人一研究」という活動も行われています。これはどのような内容ですか。
社員全員が一人ずつ自由にテーマを選んで、1年間にわたって研究を行い、そのうち選ばれた人は社員全員の前で報告します。ただし、研究のテーマは自由にしており、仕事に関係のないものでも問題ありません。なぜかというと「会社のため」としてしまうとやらされ感が出て、よいアイデアが出なくなるからです。私はこの「一人一研究」を、社員によいアイデアを出せるようになってもらう脳の回路をつくる練習と考えています。
私も参加していますが、前回は「熟成玄米の炊き方」というテーマで研究しました。きっかけは、会社の1階に新しいカフェがオープンして、そこで健康に良いメニューとして出されていた熟成玄米に興味を持ったことです。このように仕事に関係なく、自分で知りたいと思ったテーマについて深く調べてもらうことで、個々で知識を増やしてもらっています。
話をお聞きしていると、斉之平さんは社員の自主性を信用し、そこに期待していると感じます。なぜ、そう考えるようになったのですか。
私は教育関係の活動で学校を訪問する機会も多いのですが、そこで学校時代に活躍した女子生徒が、社会に出て男性社会の中で苦労しているといった話をよく聞きました。学生時代に生徒会や部活動などで、リーダーシップを取ってイキイキと活動していたのなら、社会に出てからもそのまま元気に活躍してほしい。そこで、どうすれば性別や学歴、社員やパートなどの立場に関係なく、すべての人がイキイキと働けるような仕事環境が作れるのかを考えるようになりました。それこそが企業という集団をまとめる社長の仕事ではないかと。そのような思いから、今の一連の制度が形になっていったのです。
社労士監修のもと、2025年の高齢者雇用にまつわる法改正の内容と実務対応をわかりやすく解説。加えて、高年齢者雇用では欠かせないシニアのキャリア支援について、法政大学教授の田中研之輔氏に聞きました。
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