就職率100%! 国際教養大学の教育プログラムに学ぶ、
“全人力”を養う人材育成の極意とは
国際教養大学 理事長・学長
鈴木典比古さん
社員教育にも通じる学生が主役のクラスマネジメント
同じ人を導く立場にある企業の教育担当者やマネジャーにとっても、おおいに参考になると思うのですが、対話による授業の進め方とはどういうものなのでしょうか。
「クラスマネジメント」という言葉を使うのですが、クラスをいかにマネジメントするかは、教員の技量にかかっています。リベラルアーツで個を磨く授 業は、教員と学生が一緒につくりあげていくものであり、教員が一方的に講義をし、学生がそれをただノートに写すだけではまったく対話になりません。ですか ら、教員から何かを投げかけるとして、学生がそれに進んで受け答えしたくなるような状況を用意しておかないといけません。言い換えれば、学生をいかに“主 役”に仕立てあげるか、それがクラスマネジメントの要諦でしょう。
学生を主役にするために、例えばどういう用意をして授業に臨むのですか。
学生が自ら進んで学び、意見を言いたくなるような状況をつくるのに、最も重要な道具立ては「シラバス」です。シラバスとは、いわば授業運営の工程表 であり、一学期15週間で、担当科目にどう起承転結をつけて展開していくかというイメージを、学生と共有するためのシナリオでもあります。例えば、この授 業ではこういうディスカッションをするから、この本を読んでおきなさいというようなことも書かれていないといけません。参考文献は授業の中で示します、な んていうのはとんでもない。学生が指示待ちになってしまうでしょう。シラバスは、学生が予習できるものでないとダメなんです。教員も学生もイメージを共有 し準備万端で授業に臨んでこそ、対話が進み、思考が深まっていく。シラバスが充実していれば、学生が授業中に居眠りをしたり、教室の陰に隠れたりすること もできないはずなんですよ。
ありがとうございました。最後に企業の人材開発担当者にむけて、鈴木先生からぜひメッセージをお願いいたします。
教えることは学ぶことです。誰かに何かを教えるということは、その何かについて責任が持てなければいけません。相手に教えるべきことが、自分の中に ストーンと落ちていないと、自信を持って教えることもできません。だからこそ、教える自分がもっと学ばなければいけないんですね。
私はアメリカでも教鞭を取りましたが、アメリカの大学ではティーチングとリサーチ、教育と研究は一体と考えられています。教えるのが下手な人に研究 ができるはずがない、研究をしていない人が上手に教育できるはずがないというわけです。研修などで人に「これからの時代はグローバルで、雑木林型で、チー ムですよ」とお説教する前に、本当にそうなのか、そうだとすれば自社ではどう取り組めばいいのか、まずは自分自身でしつかりと学び、自前の意見を確立する ことが大切だと思います。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。