突然の申入れにどう対応するか?
合同労組からの団交申入れのパターン&基本的対応法
弁護士
山田 洋嗣
(2) 事件類型ごとの特徴
以下、事件類型ごとに、合同労組が関与する事件の特徴的な点等について、簡単にご紹介します。
1. 解雇事件
合同労組の関与の中核は、やはり解雇事件および後記の雇止め事件であると思います。解雇により会社への帰属意識がなくなった後、インターネット等で合同労組の存在を知り、合同労組での労働相談を経て紛争に至るという場合です。
企業別労働組合が関与する事件との比較において、特徴的な点としては、真摯な復職要求というよりは、経済的 な利得を目的として、紛争に至るというケースが一定数あるという点が挙げられると思います(実際、復職命令を出したところ、労働者側がそれを拒否し、結 果、会社側がその後の和解交渉等を優位に進められたという事案を複数件経験したことがある)。
また、近時は、リーマンショック後の景気低迷により、整理解雇が行われ、その解雇の効力が争われるケースも多数あります。
2. 雇止め事件
企業内組合を有する会社においても、非正規労働者については、組合加入資格を認めていない、という場合は多数あります。そして、リーマンショック後、それら非正規労働者について雇止めが行われ、合同労組がその雇止めの有効性について争ってくるというケースが多数あります。
3. 労災事件
セクハラ・パワハラによって精神的疾病を発症したとして、労災を主張するとともに、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をしてくるケースや、解雇・雇止めの問題に付随して、解雇直前・雇止め直前に「転倒した」等の労災事故の発生を主張するケース等があります。
小規模な合同労組の場合、「労災の発生=会社の損害賠償義務」と考えているケースも間々見受けられます。
4. 賃金(時間外・休日労働手当)請求事件
賃金の請求は、通常、労働契約関係の継続を前提とすること、合同労組への加入は、個人でなされる場合が大半 であるため、解雇事件、雇止め事件と比して、請求金額が大きくならない割に、請求に要する労力が大きいこと等から、時間外・休日労働手当の請求が単独で問 題となるケースはそれほど多くないという印象です。
しかし、解雇・雇止め等の労働契約関係の終了の問題に伴って生起することは多数あります。そして、合同労組 が関与する賃金請求事件では、会社が合同労組の主張を全面的に認める場合でもない限り、ほとんどの場合で合同労組による労働基準監督署等の行政機関への申 告等が行われ、会社は、それに対する対応を求められることになります。
5. 不当労働行為救済申立事件
合同労組も労働組合である以上、その最大の交渉手段は団体交渉であり、個別的労使紛争の解決過程で生じた使用者の不誠実団交、団交拒否を理由にした不当労働行為救済申立が行われるケースは多数あります。
また、解雇・雇止め事件に関連し、当該解雇・雇止めが不当労働行為に該当する旨の主張を裁判上行うために(行っているために)、不当労働行為救済申立が行われるケースもあります。
さらに、正規労働者等で組織された企業内組合が存する会社において、同会社の非正規労働者が複数人組合加入した場合に、企業内組合との平等取扱いを主張し、組合事務所、組合掲示板の設置要求がなされ、それが不当労働行為救済申立事件に発展するケースもあります。
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