本誌特別調査
2017年度労働時間総合調査(労務行政研究所)
所定・総実労働時間、休日・休暇、時間外労働等の最新実態と長時間労働削減への取り組み状況
7 長時間労働削減に向けた取り組み状況
施策の実施状況[図表30]
93.2%と9割を超える企業が何らかの施策を実施
長時間労働の削減に向けた取り組みの実施状況について尋ねたところ、何らかの施策を「実施している」企業が93.2%と9割以上を占める。規模別に見ると、1000人以上99.0%、300~999人100.0%である一方、300人未満は81.7%にとどまる[図表30]。
参考までに、時間外労働の実績について回答のあった企業で比較してみたところ、「実施している」企業では1ヵ月当たりの時間外労働の平均は19.2時間、「実施していない」企業では同13.6時間と、5.6時間の差があった。実施していない理由は尋ねていないものの、時間外労働がそもそも少ないことが理由の一つにあると推測できる。
実施している施策の内容[図表31~33]
「管理職層に対する意識啓発への取り組み」が最多で76.9%。次いで「一般社員に対する意識啓発への取り組み」と「ノー残業デーの設定」が67.0%
長時間労働削減に向けた具体的な取り組み内容(複数回答)[図表31]を見ると、最も多いのは「管理職層に対する意識啓発への取り組み」で76.9%、以下、「一般社員に対する意識啓発への取り組み」「ノー残業デーの設定」が各67.0%、「自分の労働時間数が簡単に分かる仕組み」55.7%と続く。
規模別に見ると、1000人以上では、2番目に多い項目が「ノー残業デーの設定」で83.2%となっている。この項目について、300~999人は62.7%、300人未満は47.8%であった。1000人以上と300人未満を比較して実施率に大きな開きが見られたのは、「労使による時間外労働削減の検討組織を設置」で、1000人以上50.5%に対し300人未満は6.0%と、44.6ポイントの差があった。
産業別に見ると、製造業では「ノー残業デーの設定」が78.7%と最も高いが、非製造業では55.8%にとどまる。
2016年10月に「過労死等防止対策白書」が公表され、労働基準監督官による監督指導も強化されるなど、この1年間で長時間労働是正の動きは強まっている。そこで、現在実施している長時間労働対策のうち、2016年以降に新たに取り組んだものを尋ねたところ[図表32]、上位3項目は「管理職層に対する意識啓発への取り組み」34.5%、「経営層から社内に向けて長時間労働是正へのメッセージを発信」25.9%、「一般社員に対する意識啓発への取り組み」25.0%となっている。
[図表33]は、現在実施している施策のうち2016年以降に導入した割合が高い項目を示している。「長時間労働削減に向けた社内プロジェクトの設置」が61.0%で最も多く、組織的に対応を進める企業が多いことが分かった。そのほか、「36協定の協定時間の短縮」55.0%や、近年注目されている「勤務間インターバル制度の導入」も50.0%と半数に達しており、直近1年で導入・実施が進んでいることが分かる。
1. 調査項目:
(1)2017年度労働時間・休日日数(本社)
(a)1日当たり所定労働時間
(b)年間所定休日日数
(c)年間所定労働時間(対象期間は原則として2017年4月~2018年3月の1年間)。また、前年度の労働時間との比較のため、前16年度分も併せて調査
(2)年次有給休暇の取得状況(最近1年間)
(3)時間外労働の実績(2016年度)
(4)時間外労働の算出・確認方法
(5)出退勤時間の管理方法
(6)時間外労働の算定における端数時間の取り扱い
(7)長時間労働削減に向けた取り組み状況
2. 調査時期・方法:
2017年5月8日に調査票を発送、7月28日までに回答のあったものを集計。
3. 調査対象:
全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3546社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)289社の合計3835社。ただし、持ち株会社の場合は、主要子会社を対象としたところもある。
4. 集計対象:
上記調査対象のうち、回答のあった238社。集計対象会社の業種別、規模別の内訳は[参考表]のとおり。会社名・所属業種については、調査時点におけるものとした。なお、項目により集計(回答)企業は異なる(項目により回答していない企業があるため)。
5. 利用上の注意:
[図表]の割合は、小数第2位を四捨五入し小数第1位まで表示しているため、合計が100.0%にならない場合がある。また、本文中で割合を引用する際には、実数に戻り再度割合を算出し直しているため、図表中の数値の足し上げと本文中の数値とは一致しないことがある。
[参考表] 業種別、規模別集計対象会社の内訳
注)*ここでは、一般財団法人労務行政研究所が行った(調査期間:2017年5月8日~7月28日)「2017年度労働時間総合調査」をもとに、『日本の人事部』編集部が記事を作成しました。詳細は『労政時報』第3938号(2017年10月13日発行)に掲載されています。
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