本誌特別調査
2017年度労働時間総合調査(労務行政研究所)
所定・総実労働時間、休日・休暇、時間外労働等の最新実態と長時間労働削減への取り組み状況
5 出退勤時間の管理方法
一般社員層の出退勤時間の管理方法[図表22~24、事例1]
「自己申告」が56.5%と最多。自己申告の場合、71.3%が申告時間と実労働時間が合致しているかの確認を行っている
今回の調査では、一般社員層と管理職層に分けて、出退勤時間の管理方法を調べた。
労働時間の把握については、2017年1月に策定された「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」[参考3]において、使用者には労働時間を適正に把握する責務があると明記されている。また、原則として、(1)使用者自ら現認するか、(2)タイムカード・ICカード、パソコンの使用時間の記録等客観的な記録によって労働日ごとの始業・終業時刻を確認・記録しなければならず、自己申告制により確認・記録を行わざるを得ない場合には、一定の措置を講ずることとされている。
■一般社員層の出退勤時間管理
一般社員層での出退勤時間の管理方法を見ると(複数回答)[図表22]、「自己申告」56.5%、「タイムカード・ICカード」50.6%が半数を超え、以下、「出勤簿」13.9%、「各人のパソコンの起動・終了時刻」11.4%と続く。「その他」の中には “生体認証” (指紋や静脈の血管など、人の生体的な特徴・特性を用いて行う管理方式)と回答した企業が2社あった。
[図表23]は、各社の管理方法の組み合わせを見たものである。複数の方法を組み合わせることなく、一つの方法だけで全社員を管理している企業は全体の7割(「その他」は除く)に達している。中でも多いのが「自己申告」32.1%、次いで「タイムカード・ICカード」29.5%となっている。
■自己申告内容の管理方法
自己申告制を取り入れている場合、自己申告の内容をどのように管理しているか尋ねたところ[図表24]、「WEB媒体、管理ソフトなど」が72.5%と主流を占め、「紙」での管理は17.6%にとどまる。また、「紙」と「WEB媒体、管理ソフトなど」を併用している企業も1割弱あった。
また、自己申告制の場合、本人からの申告時間と実際の労働時間に乖離(かいり)がある場合も少なくない。そこで、申告内容と実労働時間が合致しているかの確認の有無についても尋ねたところ、「確認している」が71.3%と、7割以上の企業では何らかの方法で確認を行っていた。規模別に見ると、規模が大きいほどその割合は高く、1000人以上(85.5%)と300人未満(57.5%)では28.0ポイントの差がある。申告時間が実労働時間と合致しているかの確認方法については、具体的内容を[事例1](省略)にまとめたので、併せて参照いただきたい。
管理職の出退勤時間の管理方法[図表25、事例2]
8割が「一般社員と同じ」
前述のガイドラインでは、管理監督者は対象外となっているものの、「本ガイドラインが適用されない労働者についても、健康確保を図る必要があることから、使用者において適正な労働時間管理を行う責務があること」と明示されており、健康確保の観点から、管理監督者についても会社側で労働時間を把握する責務があるといえる。
回答のあった231社のうち、88.7%は何らかの方法で管理職の出退勤時間を管理していた(「一般社員と同じ方法で管理している」と「一般社員とは異なる方法で管理している」の合計)。一方、出退勤時間をまったく管理していない企業は11.3%と、約1割を占めている。
管理方法としては、「一般社員と同じ方法で管理している」が81.0%となり、多くの企業で管理職と一般社員の出退勤時間の管理方法に違いがないといえる。
[事例2](省略)では、「一般社員とは異なる方法で管理している」企業について、一般社員と管理職でどのように出退勤時間を管理しているのかをまとめている。
6 時間外労働の算定における端数時間の取り扱い
1日当たりの残業時間の端数取り扱い[図表26~27]
46.8%が端数処理の原則を決めており、端数の取り扱い単位では「15分」が最多
残業時間の申請に当たって、時間の単位を従業員個人に任せていると、残業時間や賃金の計算上などで煩雑になる場合が多い。このため、企業では端数の取り扱いを決め、残業時間管理を行っているケースが見られる。
1日当たりの残業時間の端数の取り扱いを見ると、「端数処理は行わない(自己申告やタイムカード等のとおり)」52.4%、「端数処理の原則を決めている」46.8%と、「端数処理は行わない」が5.6ポイント上回った[図表26]。
端数処理の原則を決めている場合、何分単位で端数を扱っているか尋ねたところ[図表27]、最も多いのは「15分」で46.6%。以下、「30分」25.0%、「5分」14.8%、「10分」8.0%と続く。なお、「15分」単位といっても、「切り上げ」と「切り捨て」では大きな違いがあるが、回答内容を見ると、「15分単位で15分未満は切り捨て」という内容も見受けられた(ただし、通常の労働時間制度では1分単位の計上が原則であり、「切り捨て」は違法である)。
1ヵ月当たりの残業時間の端数取り扱い[図表28~29]
「端数処理は行わない」が69.5%で主流
1ヵ月当たりの残業時間については、1ヵ月における時間外労働等の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合、「30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること」は労働基準法違反として取り扱わないとされている(<コラム>参照(省略))。
今回の調査では、「端数処理は行わない(1日の積み上げ合計のまま)」が69.5%と主流を占め、「端数処理の原則を決めている」は30.0%にとどまる[図表28]。
1ヵ月当たりの「端数処理の原則を決めている」場合、「法定どおり」に端数処理を行っている企業が52.9%と過半数を占める一方、「法定とは異なる」場合も45.7%に上る。その内容を見ると、「10分単位で切り上げ」「15分単位で切り上げ」「30分単位で切り上げ」等、端数部分を切り上げて処理するケースが多く見られた。
[図表29]は1日当たりと1ヵ月当たりの端数処理の関係性を示した。1日当たりの端数処理の原則を決めていて、1ヵ月単位での端数処理は行わないケースが37.3%と最も多く、1日当たり、1ヵ月当たりのどちらでも端数処理を行わないケースが32.2%と続き、この二つのパターンが全体の7割弱を占める。
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