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【ヨミ】ダイバーシティ アンド インクルージョン

ダイバーシティ&インクルージョン

人には人種や性別、年齢などの外見的な違いはもちろん、宗教や価値観、性格、嗜好など、内面にもさまざまな違いがあります。「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」とは、個々の「違い」を受け入れ、認め合い、生かしていくことを意味します。

掲載日:2018/09/28 更新日:2024/02/07

1. ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティ&インクルージョンとは

ダイバーシティは、日本語で「多様性」という意味です。企業におけるダイバーシティとは、性別や年齢、国籍、文化、価値観など、さまざまなバックグラウンドを持つ人材を活用することで新たな価値を創造・提供する、成長戦略といえます。近年はグローバル化や顧客ニーズの多様化といった市場変化に対応するため、ダイバーシティ経営に取り組む企業が増えています。

一方、インクルージョンは「受容」という意味。企業におけるインクルージョンとは、従業員がお互いを認め合いながら一体化を目指していく、組織のあり方を示します。従業員一人ひとりの多様性を受け入れることに加え、組織の一体感を醸成することで成長や変化を推進する取り組みが「ダイバーシティ&インクルージョン」です。

ダイバーシティ&インクルージョンが
求められる背景・取り組むメリット

日本の企業がダイバーシティという言葉を用いるようになったのは、2000年以降のこと。当時の日本では、労働人口の減少および構成の変化により、労働力の確保が企業の課題として浮上していました。これを解決するため、それまで労働力の中心と捉えていなかった女性やシニア層、障がい者、外国人などの雇用に着目する企業が増えていったのです。

ここで問題となったのが、多様な人材を雇用するためのポストおよび働き方の整備です。ダイバーシティは、この問題を解決する考え方として注目を集めました。加えて、多様な価値観やライフスタイルを持つ人材の雇用は、組織内の発想やアイデアの活性化につながるというメリットがあります。プロダクトやプロセスにおけるイノベーション創出を目的に、成長戦略の一つと位置付けて、ダイバーシティに取り組む企業も増えました。

しかし、従来の日本型雇用システムでは、均質的な組織をつくり、それをマネジメントすることが合理的と捉えられてきた背景があります。均質性に慣れている従業員にとって、多様性を認めて受け入れることは容易ではありません。暗黙的な排斥が起きれば、環境を整備したところで定着させることは困難です。そのため、ダイバーシティを補完し、発展させるという意味において、インクルージョンの必要性が考えられるようになりました。

つまり、ダイバーシティによって多様な人材を受け入れ、インクルージョンによって一人ひとりが事業に積極的に参加する機会を創出し、個々の能力を最大限に発揮できる体制が整うわけです。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むメリットは、以下の通りです。

ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むメリット

  • イノベーションの創出が期待できる
  • 当事者意識が強くなり、労働意欲が高まる
  • 個々のスキルアップにつながる
  • 多様性を尊重する風土・文化により信頼関係を構築できる
  • 従業員の定着率に貢献

ダイバーシティ&インクルージョンは、経営上の成果につながる大きな役割を果たすものといえます。

2. ダイバーシティ&インクルージョンの分類

ダイバーシティ&インクルージョンの分類

ダイバーシティ&インクルージョンにおける組織マネジメントでは、まず人材の多様性について理解を深めておく必要があります。ここで注意したいのは、均質的でないものは全て多様性があるということ。つまり、「個の違い」は全てダイバーシティであり、厳密には、その種類は無数と考えられます。

ここでは、「属性」「発想・価値観」「働き方」の三つに分けて、それぞれの多様性を見ていきます。

属性

女性活躍推進

かつての日本企業は、出産や育児に追われる女性にとって、働きやすい労働環境が整っているとはいえませんでした。女性労働者を取り巻く問題の解消を目指すため、2015年9月に公布されたのが「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)です。企業に対して、仕事と家庭を両立できる環境を整えること、採用や昇進、配属における配慮が必要であることなどの基本方針を掲げています。

女性の活躍を推進するメリットには、多様化する市場ニーズへの対応力が挙げられます。家計における購買決定権は女性が握っているケースが多いため、女性ならではの視点を事業に生かすことが可能です。また、女性が活躍できる職場づくりは、ワーク・ライフ・バランスへの取り組みにつながります。労働意欲や生産性の向上という点においても、メリットがあるといえるでしょう。

外国人活用

グローバル化が進んだことで、日本企業では、国際的な競争力強化を目指して外国人を採用するケースが多く見られるようになりました。海外事業の推進はもちろん、外国人の雇用はダイバーシティ&インクルージョンにも大きな影響をもたらします。日本人とは異なる文化を持つ外国人は、日本人にはない視点や発想を多く持っています。外国人と日本人の知識や視点を融合することで、新たな文化の創造やイノベーションの創出を期待できます。

障がい者雇用

従業員数が一定数以上の企業には、障害者雇用促進法により障がい者の法定雇用率が定められています。ダイバーシティ&インクルージョンの観点で見ると、障がい者の雇用にはさまざまなメリットがあります。例えばユニバーサルデザインの商品開発においては、障がい者の視点や意見が大変重要です。また、障がいを持つ人が得意とする業務を切り出し、業務分担を進めることで、人材の効率的な配置や業務の効率化が可能になります。

シニア活用

少子高齢化が進む現在、シニア層の労働力に注目する企業が増えています。厚生労働省でもシニア層の活用に向けた「高年齢者雇用安定法」を定め、積極的な雇用を推進しています。シニア層の中には高いスキルを有する人材も多く、若手社員の育成を任せることが可能です。また、社会経験が豊富なため、組織づくりへの貢献も期待できます。

LGBTの受容

ダイバーシティ&インクルージョンでは、誰もが自分らしさを発揮できる環境が必要です。LGBT(性的マイノリティー)にとって、社内の理解を得られないことは苦痛を伴うことです。場合によっては、労働を継続することができずに退職してしまい、優秀な人材を失ってしまうこともあります。LGBTと職能はまったく関係がないことを理解し、一人ひとりの個性が尊重される風土を育てていくことが重要です。

発想・価値観の多様性

意見の多様性

意見の多様性とは、一人ひとりの意見や物事に対する見方を尊重し、組織の意思決定に生かしていこうとする考え方です。

これまで日本の企業は、共通の価値観を持つ均質的な組織づくりを行ってきました。マネジメントの効率を高められると同時に、企業のアイデンティティーを個々の従業員が共有することで、企業独自の強みを打ち出す経営戦略が取られていたためです。

しかし均質な組織では、人と違う意見をためらったり、場の空気を読んで発言しなかったりといったことがしばしば起こります。さらに、日本では協調性を重んじる意識が根強いため、人の意見に同調しなければ、少数意見者として暗黙的に排斥する同調圧力が働きやすくなっています。

こうした環境下では、よい意見やアイデアがあっても発言されず、個人の能力が十分に発揮されません。そういう状況が続けば、多様化・複雑化する現在の市場において、企業の競争力を維持できなくなってしまいます。

そういう意味でも、意見の多様性はダイバーシティの中で、とりわけ重要なテーマとなっています。一人ひとりのユニークな意見や見解があってこそ、役割やポジションを超えるシナジーが生まれ、組織全体の力が底上げされます。人と違う意見を発言しやすい雰囲気、環境をつくることは、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で必要不可欠な要素です。

経験・職能の多様性

蓄積されてきた経験や知識、スキルは一人ひとり異なるものです。多様な経験・職能を持つ人材が集まることで、均質的な組織にはなかった「知」の力が生まれます。

例えば、異業種からきた人材の提案によって業務プロセスが改善され、生産性向上につながるケースがあります。誰もが当たり前と考えて見落としていたことに、それまでとは違う視点が持ち込まれ、気づきが生まれるわけです。また、ユニークな人生経験を持つ人材が、業界の常識にとらわれない発想から、新たなソリューションを提案するケースもあります。

重要なのは、先入観で人材の価値を既定しないこと。誰もが異なる「知」を持っていると認識することが大切です。

宗教の受容

宗教や信仰は、個々のアイデンティティーに強く影響するものです。多様性を受容する上で、宗教を持つ人材への理解は欠かせません。

例えばイスラム教では一日に数回、決まった時間に礼拝します。そのため、小さな礼拝室を用意している企業もあります。礼拝は数分程度なので、ほかの従業員が仕事の合間に少しの休憩をとることと、さほど変わりません。食事の制約がある宗教の場合は、従業員同士での会食に配慮します。また、肌の露出が禁じられている場合は、会社のドレスコードより、宗教上の制約を優先させる必要があるでしょう。

日本では、会社のルールを最優先すべきという意識が強い傾向があります。しかし、宗教は人の精神に深く根づき、生き方の方向性を決めているものです。一人ひとりの個性を尊重するダイバーシティの取り組みでは、宗教への理解と対応が非常に重要です。

ライフスタイル・価値観の多様性

現在はライフスタイルの多様化が進んでいます。ライフスタイルの変化に大きく影響しているのが、価値観の多様化です。さまざまな働き方を選択する人が増えているだけでなく、モノを選ぶ基準や幸福を感じる基準においても変化が見られます。

例えば「所有」ではなく「シェア」することを選ぶ人が増え、さまざまなシェアサービスが生まれています。ここからは、モノの所有に豊かさを感じていた時代から、利便性や効率性を重視する時代へと変わりつつあることがわかります。このほか、環境問題を考えてモノを選ぶエコライフに価値を感じる人など、さまざまです。

また、世帯の構成が変化していることも、ライフスタイルや価値観に影響を及ぼしています。未婚・非婚による男性・女性の単独世帯、高齢者世帯は今後さらに増えると見込まれています。ここには、自身で選択したケースとやむを得ない事情で選択したケースの双方があるでしょう。

いずれにおいても、世帯構成はさまざまな場面の選択において、大きな影響を与えます。ダイバーシティの推進では、偏った見方で一方的に判断しないように注意しなければなりません。

働き方の多様性

ダイバーシティ&インクルージョンを推進する上で、ポイントとなるもう一つの視点が働き方の多様性です。多様な働き方の推進は働き方改革とも連動するため、企業にとって今後さらに重要度が増すと考えられます。

これまでは時短勤務、在宅勤務などといった働き方が注目されてきましたが、それらに加えて、昨今では、従業員の副業・兼業を認める動きが活発化しています。副業・兼業とは、会社に所属しながら自ら事業を行ったり、他社に雇用されたりすることをいいます。副業・兼業を解禁する企業側のメリットには、以下のものが挙げられます。

副業・兼業を解禁する企業側のメリット

  • 多種多様な知識やスキルが身に付き、イノベーション創出につながる
  • 従業員の自律性が高まる
  • 自己実現によりいきいきと働く従業員が増える
  • 優秀な人材の流出を防ぐことになる

働き方の多様性を認めることは、従業員の経験の幅を広げることにつながり、結果として企業へのリターンが大きくなることが期待できます。

3. ダイバーシティ&インクルージョンの進め方

ダイバーシティ&インクルージョンの進め方

ダイバーシティ&インクルージョンによって得られる企業のメリットには、労働力の確保、優秀な人材の獲得、イノベーションの創出、従業員満足度の向上などがあります。しかし、これらのメリットは短期間で成果を上げられるものではありません。

推進する上で重要なのは、まず「何のために行うのか」という明確なビジョンを持つことです。その上で、長期的に継続できる仕組みと運用方法を構築することが必要になります。人事担当者には、これらを踏まえて多様なニーズに対応できる選択肢を用意し、個々の能力を生かす「ワークデザイン」を行っていくことが求められます。

企業行動のプロセス

ダイバーシティに関する深い知見を持つ早稲田大学大学院の谷口真美教授によると、ダイバーシティにおいて企業が取る行動には段階があるといいます。

ダイバーシティに対する企業の行動
抵抗 違いを拒否する
同化 違いを同化させる、違いを無視する
分離 違いを認める
統合 違いを活かす、競争優位性につなげる

※出典:谷口真美『ダイバシティ・マネジメント 多様性をいかす組織』p.265 図表4-12

日本企業の多くはいまだに、違いを拒否する抵抗の段階、または違いを無視するなど防衛的な反応を示す同化の段階にあります。ダイバーシティ&インクルージョンを推進するには、組織の状態を見極め、一歩ずつ前進することが必要といえそうです。

続いて、実際の進め方について解説していきます。

【手順①】行動計画を策定

ダイバーシティ&インクルージョンは、企業の競争力を高める戦略の一つとして位置付けられます。行動計画を策定するにあたっては、経営理念と行動指針の関係性を明確にし、ダイバーシティ&インクルージョンが目指す方向を定めることが必要です。自社が置かれているビジネス環境においてどのような組織をつくっていくべきなのか、実現するために必要なものは何なのかを具体的な計画として落とし込んでいきます。

【手順②】人事制度の整備

多様な人材を生かすための重要な鍵となるのが人事制度です。個々の人材が活躍できる人事制度を整備するには、以下の点に留意する必要があります。

  • 職務を明確にする
  • 公正で透明性の高い評価制度を構築する
  • 多様性を生かして適材適所を図る

ダイバーシティ&インクルージョンを進める上では、誰もが納得できる改革が必要です。しかし、従来の人事制度は、画一的な働き方をベースに仕組み化されてきました。そのため、多様な働き方に対応する柔軟なものへと改革する必要がありますが、その際に社内から抵抗を受けることも考えられます。こうした事態を避けるためにも、個々の従業員に期待する役割を明確にし、適切な評価を行う人事制度を確立することが重要です。

【手順③】勤務形態・職場環境の整備

勤務時間や通勤に制約がある人材が活躍できる働き方を整備します。例えば、育児や介護のために時間が制約される人材や、障がいにより通勤が難しい人材などに対しては、フレックスタイムや在宅勤務など、勤務時間・勤務場所の自由度を高める工夫が必要になります。

また、従業員同士のコミュニケーションを円滑にするための取り組みも検討します。例えば、外国人の雇用で問題となるのが言葉や慣習の壁です。マニュアルや研修を用意するなど、スムーズなコミュニケーションを促す施策を考えるとよいでしょう。環境の整備においては、実際に従業員が働きやすい制度になっているか、施策は十分かを見直しながら、改善していきます。

【手順④】社員の意識改革

多様性を受け入れ、一体感のある組織風土をつくるには、社員の意識を改革していかなければなりません。これには、受け入れる側だけでなく、これまで主流ではなかった多様な人材の意識レベルを引き上げることも含まれます。例えば、女性管理職のポストを増やして能力を発揮できるようフォローアップする、といった取り組みも方法の一つです。

また、実践にあたって重要となるのがマネジメント層の意識改革です。制度や環境を整えても、管理職の意識が低ければ従業員の能力を生かすことができず、意欲の低下につながります。さまざまな事情を持つ人材に対応するマネジメントスキルは、ダイバーシティ&インクルージョンを成功に導く上で重要なポイントになります。

【手順⑤】継続的なコミュニケーションを促進

社内における「少数派」は、意見を言いにくい状況にあります。このことを認識した上で、日ごろからコミュニケーションを取りやすい仕組みをつくることが必要です。

さらに、情報共有の方法も検討が必要です。せっかく多様な意見を引き出して成果につなげていても、一部の社員にしか共有されていなければ、全体の意識向上や一体感にはつながりません。ロールモデルとなる人材の活躍を社内に周知するなどして、ほかの従業員のモチベーションアップにつなげていきます。これらの行動を継続することで、ダイバーシティ&インクルージョンの考えが浸透し、企業内に好循環を生み出します。

マネジメントのポイント

単に制度をつくり人材を集めただけでは、ダイバーシティ&インクルージョンを成功させることはできません。初期の段階では現場の拒絶や防衛反応が起こることを視野に入れ、多様性を生かすためのマネジメントが重要です。

次に、マネジメントのポイントを紹介します。

経営トップのメッセージ

ダイバーシティ&インクルージョンを実践する際は、経営戦略との整合性を取りながら中長期的な目標を設定します。そのため、計画・体制づくりに際しては、経営トップの意思を反映する必要があります。また、経営トップ自らが従業員に対して、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組むことをメッセージとして伝えることが極めて重要です。社内外に対して企業のビジョンや目指す姿を打ち出し、進んでいく方向を示します。

価値観の統合

例えば、ある上司が仕事よりも育児を優先している従業員を非難していた場合、その職場は「暗黙的に仕事を優先することが求められている」と思われてしまいます。このような言動は、ダイバーシティ&インクルージョンを妨げる要因になります。これを防ぐには、決められた行動パターンを要求するのではなく、行動指針のベースとなる価値観を統合し、従業員一人ひとりが行動を選択できるよう、マネジメントしていく必要があります。

意思決定の仕組み

少数派の意見が排除されてしまうと、従業員が発言をためらったり、モチベーションが下がったりするなどの悪影響が生じます。こうした事態を避けるため、全ての従業員が等しく発言できる場を設けるなど、意思決定のプロセスを透明化する仕組みをつくる必要があります。

混乱・衝突への対応

違いを受け入れられない従業員が現れ、組織内に混乱や衝突が起こるという事態は珍しくありません。マネジメント層は、的確かつ迅速に対応できるよう、事前に対策を講じておく必要があります。また、無意識に暗黙的な排斥が起きていることもあります。一人ひとりの違いを尊重しながら、共通のゴールに向かってベクトルを合わせていくアプローチが必要です。

評価項目の設定

評価制度と従業員のモチベーションは連動します。例えば、ダイバーシティ&インクルージョンに関する事項を評価項目に設定するという方法は有効です。「コンピテンシー(※)」として項目を設定し、評価制度に反映する方法を採用している企業もあります。

※コンピテンシー……仕事などで実際に成果を収めている人物に見られる行動や考え方の特性。ここでは、多様性を受け入れるような考え方・行動を、評価項目として定めていること。

キャリアパスの明確化

全ての社員が活躍できる環境づくりを前提に、キャリアパスを示していくことも重要です。そのためには、多様な人材のスキルアップを支援する仕組みが必要です。例えば資格取得の支援、場所にとらわれずに学習できるeラーニングの導入、学びを促進するための休暇制度など。それぞれの従業員が自発的に学べる仕組みをつくります。キャリアプランの選択肢を広げていくことも、マネジメント層に求められる要件といえるでしょう。

4. ダイバーシティ&インクルージョンに関する法律・制度

ダイバーシティ&インクルージョンに関する法律・制度

多様な人材が活躍するダイバーシティ&インクルージョンの実現は、労働人口が減少している日本経済の成長を促す上でも必要不可欠な取り組みといえます。そのため、政府はダイバーシティ&インクルージョンを推進する施策となる、さまざまな法令や制度を整えてきました。

くるみん

「くるみん」は、子育て支援に取り組んでいる企業の証として、厚生労働大臣が認定する制度です。出産・育児を理由に退職する女性が多いことを受け、企業において女性労働者が仕事と子育てを両立しやすい環境を整える重要性が高まったことから導入されました。

くるみんは、次世代育成支援対策推進法に基づき、一定の要件を満たすことができれば、規模や業種にかかわらず申請することが可能です。くるみんの認定を受けている企業は年々増加しており、2021年2月末時点で3,528社にのぼりました。さらに、くるみんの認定企業の中でより高い水準の取り組みを行っている企業は「プラチナくるみん」の認定を受けることができます。

くるみん認定企業は、自社のパンフレットや広告物にくるみんマークを掲出することが可能。企業のイメージアップや、人材の獲得につながるというメリットもあります。

女性活躍推進法

妊娠・出産などを機に一度離職した女性が、その後、働きたい意思はあるのに再就職できない、または正規雇用をしてもらえない、というケースが多くなっています。「女性活躍推進法」(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、働きたいと願う女性が自由に活躍できる社会を実現するために制定された法律です。基本原則として、以下の内容が提示されています。

  • 女性の採用、昇進などの機会を積極的に提供および活用し、さらに職場の慣行への配慮をすること
  • 仕事と家庭の継続的な両立に必要な環境を整備すること
  • 仕事と家庭の両立に際し、本人の意思が尊重されること

女性活躍推進法の施行に伴い、300人を超える企業は女性の働き方に関する現状を把握し、行動計画を策定することが義務付けられています。また、300人以下の企業においても、努力義務となっています。

女性活躍推進の現状と課題を整理
女性活躍推進法による企業の義務化が進む中、多くの企業が本格的に女性活躍推進への取り組みを始めています。『日本の人事部』では、女性活躍推進における現状と課題を整理するとともに、企業が取り組むべきことをまとめました。

女性活躍推進を支援するサービスの傾向と選び方

障害者雇用促進法

「障害者雇用促進法」は、正式には「障害者の雇用の促進等に関する法律」といい、障がい者の安定雇用を促すための法律です。障がいがない人と同様に、能力や適性に応じた雇用機会を創出することで、誰もが自立して生活できる社会を目指すことを目的としています。

事業主は一定以上の割合で障がい者を雇用する義務があります。2021年3月には、民間企業において2.3%に引き上げられました。また、障がい者を雇用する企業は、設備投資などの負担を軽減する「障害者雇用納付金制度」を利用することができます。

参照:令和3年3月1日から障害者の法定雇用率が引き上げになります|厚生労働省

高年齢者雇用安定法

高年齢者雇用安定法とは、働く意欲のある高年齢者が長く働き続けることができるよう、雇用の確保や職場環境の整備を目的として1971年に制定されました。時代に合わせて、制定後に何度か改正が行われています。

2021年4月の改正では、新たに以下の五つの努力義務が課されます。現行の65歳から70歳に引き上げられる点に加え、4と5については雇用確保措置として新設されているため、特に注意しておく必要があるでしょう。

企業に求められる五つの努力義務

  • 定年を70歳まで引き上げ
  • 70歳までの継続雇用制度の導入
  • 定年制の廃止
  • 高年齢者が希望する場合に、70歳まで継続的に業務委託契約を締結できるようにする
  • 高年齢者が希望する場合に、70歳まで継続的に以下のどちらかに従事できるようにする
    • 事業主自身が実施している社会貢献事業
    • 事業主が委託や出資した団体が行う社会貢献事業

参照:
70歳までの就業機会確保(改正高年齢者雇用安定法)(令和3年4月1日施行)|厚生労働省
65歳までの雇用確保(義務)70歳までの就業確保(努力義務)|厚生労働省

外国人の雇用

外国人を雇用する際は、在留資格を確認し、ハローワークに雇用状況を届け出ることが義務付けられています。届け出なかった場合や虚偽の届け出を行った場合は、30万円以下の罰金が科されることもあるため、注意が必要です。

外国人を雇用したときに受けられる助成金には、中小企業を対象とした「中小企業緊急雇用安定助成金」と、大企業が対象となる「雇用調整助成金」があります。いずれも教育訓練経費の補助を受けられるため、外国人労働者のスキルアップを図りながら雇用を促進することができます。

パートナーシップ制度

パートナーシップ制度とは、戸籍上は同性のカップルに対して、婚姻と同等のパートナーであることを地方自治体などが承認する制度のことです。ただし、法的拘束力はありません(2021年2月現在)。

また、制定する自治体ごとに効力に差があるのが実情です。例えば、東京都渋谷区のようにパートナーシップ制度を「条例」として位置付けている自治体もあれば、東京都世田谷区のように、あくまでも「要綱」であるとする自治体もあります。

自治体以外にも、企業内で社内規定を改定する動きもあります。ソフトバンクやKDDI、アクセンチュアやPwC Japanグループ、NTTグループなどでは、社内規定で同性のパートナーを法律婚の配偶者と同じものと認めたり、結婚祝い金を贈呈したりしています。

参照:

5. ダイバーシティ&インクルージョン推進の事例

ダイバーシティ&インクルージョン推進の事例

野村證券株式会社

野村證券では、リーマン・ブラザーズの欧州・アジア部門のビジネスを継承したことにより、多様な背景を持つ社員がともに働くことになりました。その際、多様性を受容し、強みに変えていくという目的で三つの施策を実施しています。

一つ目は制度面の整備です。倫理規定を改定し、「人権の尊重」の項目に人種や国籍、宗教、障がいの有無に加えて、LGBTについても明文化しました。二つ目は社員ネットワーク活動で、リーマン・ブラザーズで行われていた取り組みを引き継いだものです。部門を超えた社員が交流し合う機会を設けることで、多様な人材が活躍できる風土をつくっています。三つ目がダイバーシティ&インクルージョンへの理解を深めるための研修です。新入社員や管理職は必須参加とし、身近な課題として浸透するよう意識付けを行っています。

これらの施策を講じた結果、同社が行った社内調査では、ダイバーシティという言葉の意味を「理解している」「やや理解している」と答えた割合が92%という高い数値になりました。また、LGBTへの取り組みについてもポジティブな回答が全体の約9割を占めるなど、取り組みの成果がしっかりと表れています。

6. ダイバーシティ&インクルージョンの課題

ダイバーシティ&インクルージョンの課題

ダイバーシティ&インクルージョンを妨げる要因

多様性を受け入れる意識が希薄

ダイバーシティ&インクルージョンを妨げる要因として、多様性を受け入れる意識が希薄な企業文化が挙げられます。

従来の日本の雇用システムは、個別性を前提とする考えや仕組みを持っていませんでした。労働力の主となるのは男性の正規雇用社員であり、女性は男性と分業することが当たり前の社会が形成されてきたことなどの影響です。そのため、ダイバーシティ&インクルージョンの重要性が認識されるようになった現在でも、仕組みを整えるための基盤づくりに苦慮する企業が多くなっています。

また、ダイバーシティ&インクルージョンを「女性の活躍」と同義に認識している企業も存在し、成長戦略としての優先順位が下がっていることも、推進を妨げる要因の一つです。

アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の影響

アンコンシャスバイアスとは、「無意識の偏見」と訳され、無自覚に固定観念や先入観が入り込んでいる状態をいいます。本人の意識を超えた奥深くに潜んでいる物事に対する見方であり、これまでの経験や情報から形成されます。

ダイバーシティの先進国である米国で、多様化を阻害する要因として取り上げられたことがきっかけで注目されました。米国で行われた調査によると、ダイバーシティの取り組みが十分に推進されている、あるいは従業員の意識レベルが高い企業でも、採用やポストにおいて偏りがあることがわかりました。分析した結果、アンコンシャスバイアスが組織に悪影響を及ぼしていることが示されました。

例を挙げると、「女性は管理職に向いていない」「シニアは柔軟性がない」「短時間勤務者は家庭を優先する」といった思い込みです。「男女は平等」「家庭の事情と仕事意欲は関係ない」とわかっているつもりでも、無意識に選別している状態です。

アンコンシャスバイアスは誰もが持っているものです。しかし、これが悪い方向に働くと、さまざまな意思決定にバイアスがかかり、不公平感を生みます。また、無自覚に差別的な表現をしてしまうと、人間関係が悪化する要因になります。ダイバーシティ&インクルージョンを推進するには、排除すべき思い込みや先入観に気づかせ、改善していくことが重要になります。

ダイバーシティ&インクルージョンをいかに推進していくのか

ダイバーシティ&インクルージョンは米国で生まれた考え方で、現在では先進国で広く採用されています。しかし、日本を見てみると、言葉自体は認知されているものの、本格的に取り組んでいる企業はまだ少ないのが実情です。

『日本の人事部 人事白書2017』によると、「ダイバーシティを推進する上での問題や困難」に対する回答で最も多かったのは、「管理職の意識や能力の不足」(45.0%)でした。以下、「従来の一律的な価値観が重視される風土」(30.0%)、「個人の意識や能力の不足」(27.4%)、「柔軟な働き方が困難な状況」(26.5%)、「経営層の意識や能力の不足」(24.4%)と続きます。この結果から、マネジメント層の意識や従来の価値観など、これまで組織に根付いてきた風土の改革を困難に感じている人が多いことがわかります。

少子高齢化や採用難、グローバル化における競争力強化など、日本の企業は多くの課題に直面しています。これらの課題を解決するためにも、ダイバーシティ&インクルージョンに取り組む真の意味と享受できるメリットについて正しく理解した上で、成長戦略の中核に据えていくことが求められます。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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概論
属性
障がい者雇用

障がい者雇用は、「障害者雇用促進法(障害者の雇用の促進等に関する法律)」で定められた義務です。民間企業の場合、常用労働者の2.2%以上(2018年4月1日時点)の障がい者を雇用しなくてはなりません。障がい者も、さまざまな能力・スキルを持っています。人材不足の中、適切にサポートすることによって、貴重な戦力として生かすことが期待されています。人事担当者は法律の趣旨を正しく理解し、障がい者雇用を適切に進めていく必要があります。(2005/1/31掲載)

LGBT

ダイバーシティに取り組む企業が増え、日本でも多様な価値観を尊重する意識が高まっています。多様な人材を雇用し、その能力を生かしていくには「目に見えない部分への配慮」も必要です。 ダイバーシティ推進のポイントの一つとなるのが「LGBT」への理解です。ここでは、LGBTの意味やセクシュアリティのさまざまな分類、国内外でのLGBT割合、LGBTに対する企業の取り組み事例を解説します。