株式会社ハブ:
内定時から「英国研修」を実施。
現場で働く人の自律性を引き出し、強い店長を作る
“ハブ流”人財育成術
総務人事部 マネジャー
余田 佳子さん
深夜の店舗会議で、クルーに対していかに思いや考えを伝えていくことができるか
店長になった後の人財育成で、力を入れているのはどういった点でしょうか。
店長の場合、新任店長と3・4年目、5・6年目で大きな差があります。そのため、レベル(時期)に合わせた研修を行っています。例えば、新任店長だと、まだ十分に自分の思いや考えをクルーに伝えることが苦手だと感じている人もいます。
例えば、毎月、店舗会議を深夜に行っていますが、「これからの店に必要なことは何か」「こういう方向性で店を運営していこう」など、店長がクルーとの話し合いを持つ場となっています。こういう時、店長の思いや考えを伝え切れるかどうか。まさしく伝える力が、とても大切になってきます。
弊社では、この毎月の店舗会議をとても大事にしています。閉店後の深夜2時から5時くらいまで行なわれますが、そのために残業代も支払っています。また、当日オフの人にも出勤扱いで参加してもらうようにし、出席率は100%を目指していますが、ここまで徹底してやっているのは、飲食業界ではあまり例がないと思います。
開催時間が遅いこともあり、店長とクルーがコミュニケーションを取れているかどうかによって、参加率は大きく違ってきます。ある意味、それがその店の持つ力とも言うことができます。事実、マネジメントやコミュニケーション能力に長けている店長は、こうした場でも、クルーが苦痛に思わず、むしろ深夜の会議に参加することを楽しめるような雰囲気作りができています。
クルーの多くは学生ですが、現在では、昔のようにお金に困ってアルバイトをしている学生は少なくなっています。それよりも、いかに楽しく仕事ができるか。あるいは、いろいろな社会経験を積むことができるかを、モチベーションとする人が多くなっています。同じ仕事でも、クルーである学生たちが楽しいと思える雰囲気を作り出せるかどうか、それは店長の伝える力次第なのです。
そうした伝える力を養えるよう、具体的には「ロジカルコミュニケーション研修」を行っています。ここでは、スピーチする状況を一人ひとりビデオに撮影し、その様子を皆で見て、意見交換を行うスタイルで進めています。これを見ると、改めていかに自分が思いや考えを伝え切れていないかがよく分かるようです。
店長の成長段階に応じて、研修メニューを変えていく
その後、3・4年目、5・6年目の店長に対しては、どのような施策を行っていますか。
3・4年目は、各店舗での課題を、自分たちの力で考えて解決していくことが求められます。具体的には、「問題解決実践研修」です。実際に今の店で課題となっていることを挙げてもらって、次の研修までの間に課題解決のアプローチを店で実践してもらいます。そして、次回の研修では、課題を解決できたかどうか、皆の前で発表するというもので、非常に現場に即した内容となっています。
マネジャーになる前の5・6年目では、感覚的にあれが売れている、これが伸びているといったことではなく、数字から的確に分析する能力が求められます。この力を養うために「マーケティング基礎研修」を行っています。
このようなメニューで約6年間をかけて、内定者から店長代行、そして初任店長から中堅・ベテラン店長へとステップアップしていくための研修を用意しています。
一方で、専門能力を身に付けてもらうために、「バーテンダースクール(基礎コース・マスターコース)」を開催しています。講師を派遣してもらい、ハブのオリジナルメニューで全5回に及ぶバーテンダー研修を行っています。入社前にエリアマネジャーについて、店舗におけるオペレーションの研修は受けていますが、それだけではなく、お酒に対して興味のある人が多いので、外部の講師を呼んでこのような講座を開くことも、専門能力を高めるためには必要だと思っています。
お客様とのコミュニケーションをどう図るかは、基本的に「笑顔で元気よく接客ができること」に徹しています。この点は、社員・クルーに関係なく、出来て当たり前というスタンダードステージを設定していて、店に配属された最初の段階で学んでもらいます。もちろん基本的な接客用語などはありますが、必ずしもそれにとらわれる必要はないと考えています。後は、その地域や店長の方針に合わせたサービスの工夫を、各店舗には一定の自由度をもって実践してもらっています。ハブ大学というのは、マニュアルに縛られず、お客様に即したサービスを自律的にできる人を育てていくための研修体系でもあるのです。