個の多様性を広げ、働き方を変えるきっかけに
日本ユニシスの「目標値なし」「男女問わず」の
育児休暇推進
日本ユニシス株式会社 組織開発部 ダイバーシティ推進室 室長 兼 CEOアシスタント
宮森 未来さん
ダイバーシティ推進が会社の成長につながる
それだけのサポートを行ってきた背景には、どのような問題意識があったのでしょうか。
はじめから男性社員の育児への意識が高かったわけではありません。育休の取得率は長い間一桁台でした。女性に関しては復職率がほぼ100%で、出産や育児を理由に退職する女性社員はほとんどいません。共働きが当たり前の時代、女性が職場で活躍するには、男性が育休を取ることを当たり前の慣習にしていく必要があると経営層は考えていました。
経営層の方々は、どのような理想を描かれていたのでしょうか。
「Foresight in sight 2020」、これが2018年から20年までの中期経営計画のキャッチフレーズです。業界の変化やお客さまのニーズ、これからの社会課題を先んじて想像し把握するという意味で、「in sight」には「見える」と「洞察力(insight)」という二つの意味が掛かっています。これからの時代は、少子高齢化社会によって女性の社会進出が進み、外国人労働者や高齢の労働者も増えていくでしょう。ESG、Society5.0、SDGsという概念も企業が果たすべき責任として広まってきていますが、複雑化する社会のなかで、企業が持続的に価値を発揮し続けるには、ダイバーシティの観点が不可欠です。2016年度に代表取締役社長に就任した平岡昭良による強い思いもあり、中期経営計画の重要項目としてダイバーシティ推進を据えています。さまざまな個を認めることが、会社の成長につながると考えています。
そこで女性だけではなく、男性の育休も後押しされているのですね。
取得日数や取得割合といった数値も大切ですが、社員が「この会社に入ってよかった」と感じ、人生を豊かにすることこそが本質だと思っています。制度があっても、実際に使われなければ意味がありません。形骸化させずにきちんと運用するには、風土改革が必要でした。管理職研修を行ったり、一人ひとりと面談をしたり。草の根レベルの活動ではありましたが、数年も経つと着実に変化が見られるようになってきました。
どのような変化がありましたか。
徐々にではありますが、男性の育休取得率が上がってきました。以前は一桁台だった取得率が、2015年度に10%を超え、2018年度には18%になりました。それでも取得対象者の5人に1人なので改善の余地はありますが、全国平均取得率の3倍以上になっていることは評価に値するのではないかと思います。平均取得日数が長いことも一つの特徴です。2~3ヵ月が平均で、長ければ1年取る人もいます。
また、管理職へのアンケートで「男性の育休はどれくらいの期間が望ましいか」を聞いたところ、「1~3ヵ月」という回答が最も多くなりました。この取得期間が理想的かどうかはさておき、育休で数ヵ月休むことが当たり前だと捉える管理職は増えてきているようです。
育休を取った男性社員の反応はいかがですか。
とてもよいですね。特に「育児の大変さがわかった」という声をよく聞きます。仕事を離れて家事・育児に専念したことで「パートナーのキャリアを意識するようになった」「子どもがいる同僚への理解が深まった」という人もいます。育休を取った時期によっては「自分にできることがあまりなかった」という感想を聞くこともあります。女性と比べて男性は取得時期を自由に決めやすいので、育休希望者には、例えばパートナーの職場復帰に合わせるなど、柔軟に制度を使うよう伝えています。