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となりの人事部人事制度掲載日:2019/08/08

個の多様性を広げ、働き方を変えるきっかけに
日本ユニシスの「目標値なし」「男女問わず」の
育児休暇推進

日本ユニシス株式会社 組織開発部 ダイバーシティ推進室 室長 兼 CEOアシスタント

宮森 未来さん

属性による多様性でなく、個の多様性を

男性の育休取得を後押しする一方で、目標数値を設定していないのはなぜでしょうか。

宮森 未来さん(日本ユニシス株式会社 組織開発部 ダイバーシティ推進室 室長 兼 CEOアシスタント)

男性が育休を取ることの本質は、働き方を見直すことにあります。社員それぞれが自分や家族にとって心地の良い働き方を追求するため、あえて取得率や日数を目標にはしていません。例えば1週間の育休を対象者全員が取ったところで、復職後の働き方が変わらなければ、あまり意味はないと思うのです。育休を取ることが、全員の正解とは限らない。自由に働き方を選択したい人がいるときに、それを認める土壌があることが大切です。

個の生き方を尊重するための取り組みなのですね。

ダイバーシティというと、性別、国籍、年齢、障がいの有無といった「属性」による多様性で論じられることが多いと思います。属性によって不当な扱いを受けないことはとても重要なことですが、属性の前に、一人ひとりが多様であることを理解してほしい。同じ女性という属性でも、価値観や環境は人それぞれです。「みんな違う」という考えに基づいたダイバーシティを目指しているので、何日取得しなさいといった指標はないし、何割が取得すべきという目標値もありません。自分の人生なので、会社がどうするかを指示するのではなく、社員一人ひとりが決めたことを会社がサポートする、という構図でありたいですね。大切なのは、みんなが「お互いさま」の意識を持つこと。社長の平岡も日頃から言っていますが、個の尊重がめぐりめぐってビジネスに役立つはずだと考えています。

社員の皆さんにダイバーシティ推進の本質を浸透させるために、何か取り組んでいることはありますか。

弊社の場合、トップからのメッセージの力が強大ですね。ダイバーシティ推進室という一部署が核となる思想を発信しても、届く範囲は限られますが、企業のトップが発信することによって、届く範囲や深度が変わってきます。社長の平岡は「個人の中の多様性(イントラパーソナルダイバーシティ)」という概念を大切にしています。育児経験も個の多様性を広げる一つの要因であり、経験の幅を広げてほしいという思いが根底にあります。そして、それを細かな施策に落とし込んでいくのが、私たちダイバーシティ推進室の仕事です。施策の一つひとつに納得感があり、トップメッセージと接続していることが大切です。トップメッセージだけでも施策だけでもダメで、この両輪がそろうことが社員の理解を促していくと考えています。

育休取得が査定でマイナスにならない配慮

管理職研修の内容についてお聞かせください。

主にミドルマネジメント層向けになりますが、育休を取る社員の直属上司にあたる層を対象に研修を実施しています。男女にかかわらず部下が育休を取るときの対応や、育児と仕事を両立している部下をマネジメントする際に押さえるべきポイントを、外部の講師を招いて講義してもらっています。よく「小1の壁」と言われますが、子育てで壁にぶつかりやすいタイミングなどの基礎知識から、フルタイムと時短勤務といったさまざまな勤務形態の社員が混ざり合ったチームをどうマネジメントするか、という実践まで網羅するようにしています。

日本ユニシス「管理職研修ロールプレイング風景」の様子

▲育休前から復帰後のマネジメントまでを網羅的
に学ぶ管理職研修(提供:日本ユニシス株式会社)

また、男性社員に育休を取りたいと相談されたときのロールプレイングも行っています。「男なのに育休を取るのか」といった反応は、絶対にしてはいけません。そういう状況を、一度体験しておくことに意味があります。社員の中には育休を取るかどうか、迷っている人もいるでしょう。そこで背中を押すことができるのは、上司だと思います。「おめでとう、いつ取るの」「この時期に取れるよう一緒に仕事のスケジュールを調整しよう」といった適切な言い方も学びます。

ほかに管理職研修で注意されていることはありますか。
時短勤務の部下がいる場合は、勤務時間に合わせて仕事のレベルを下げるのではなく、本人の能力に応じてアサインメントをすることが絶対だと伝えています。もともと最前線にいた人が育休からの復帰直後はサポート役に回ったり、事務作業に徹したりすることは望ましくありません。復帰前の三者面談で、育休取得者と中長期のキャリアについて話し合うのもそのためです。

育休を取ったことが、賞与や昇格といった査定にマイナスの影響を与えないようにする仕組みもあります。1年間休んだ場合、その期の評価はつきませんが、期の途中で休みに入ったり復帰したりした人に関しては、勤務した期間のみを評価対象にしています。また昇格の査定をするときに、育休を取っていた年度の評価が不利になる場合はその年度を評価対象から外す、というルールを設けています。育休を取ることが評価や昇格に悪影響を及ぼす可能性があると、取得することがリスクになってしまいます。精神的なハードルを取り除くためにも制度の整備は必要です。

最後に、今後目指していきたい方向性についてお聞かせください。

目標値を持たず数字にはこだわらないと言いつつも、男性の育休取得率をもう少し上げたい、という思いはあります。本質である個の尊重という考え方は残したまま、もっと育児に関わりたいと思っている、またはパートナーがそう思っているのにできていない層を引き上げていきたい。弊社のダイバーシティ推進もまだまだ道半ばです。世の中の流れにキャッチアップするのではなく、社員一人ひとりと向き合うなかで必要だと感じた制度を積極的につくり上げていき、社会の流れに先行するような会社にしていきたいですね。

宮森 未来さん(日本ユニシス株式会社 組織開発部 ダイバーシティ推進室 室長 兼 CEOアシスタント)

(取材は2019年7月11日、東京・江東区の日本ユニシス本社にて)


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