<特別企画>人事オピニオンリーダー座談会会社のためだけではなく
社会のために生きる人が増えている
個人と企業が対等な時代に人事が考えるべき
「エンゲージメント」とは
自己肯定感と好奇心を持ち続けるためには副業・兼業もありなのか
鈴木:「自分自身がバリューを生み出している」という実感を持てることは重要ですよね。
そこは人事が提案しなければいけないとも感じます。
アキレス:ある程度お膳立てはあった方がいいと思います。IT業界などはあまりにもスピードが早いので、実際にどこまでいけるのかという疑問もありますが、「60歳を過ぎても新しいことに挑戦するんだ!」というモチベーションを持てるようサポートしたいですね。
伊藤:働く本人からすると「セカンドステージは自分が本当にやりたいこと、楽しいことに取り組みたい」という思いが強いのに、人事がそうした人を適材適所で配置できていないのが現状です。そういう意味でも、副業や兼業をOKとするのは、自社でできないものを補完できることになるので、良いことだと思います。
髙倉:少し違った角度からの話になりますが、副業・兼業を解禁することは非常にいい流れだと思っています。会社の中だけでは視野が狭くなり、イノベーションは生まれにくく、自分の価値観は必ずしも満たされなくなる。また、60歳くらいになって大事なのは、自己肯定感と好奇心です。「自分もまだまだいけるんじゃないか」という気持ちを持つべきで、その気持ちを維持して自己発見するためにも、副業・兼業に挑戦してみるべきではないかと。それはNPOでの活動や、コミュニティへの参加などでも可能だと思います。
樋口:個人としては副業・兼業で満足度や生きがいが高まると思いますが、一方で会社へのエンゲージメントという観点では、「本業の会社にちゃんと貢献してくれるのか」という不安もありますね。自分の興味の先が会社にない場合、いろいろなものを見せてあげたいとは思うものの、自社へのエンゲージメントとのバランスはどう取っていくのか。もちろん副業によって会社に還元されるものはあると思いますが。
田中:社内で「世の中とのつながり方」について議論したときに、外国人のメンバーから「会社がどこまでバックアップすべきなのか?」とたずねられたことがありました。やりたいと思うなら個人が動けばいいだろうと。そういう意味では、確かに日本では「会社が何か制度としてサポートや後押しをしないといけない」という感覚が欧米よりも強いように思います。会社へのエンゲージメントは大前提ですし、会社として最低限のルールや仕組みは作るにせよ、世の中とのつながりは、個々人がもっと日常的・自律的に作っていく性質のものなのかもしれません。
源田:確かにそれはあるかもしれませんね。ソフトバンクでは2017年11月に副業を解禁して、2018年12月時点で約360人の申請を承認していますが、今のところトラブルはありません。「ソフトバンクなら自分のやりたいことを制限されない」という点で、採用ではプラスになっていますし、社内の雰囲気もよくなっていると思います。副業の許可などを通じて、挑戦や自己成長の機会を増やしていくべきだという立場です。