本誌特別調査 2019年役員報酬・賞与等の最新実態
従業員身分の執行役員の年収は1511万円
民間調査機関の一般財団法人 労務行政研究所では、調査資料が少ない役員の年間報酬(報酬月額・年間賞与)その他処遇に関する調査を1986年以降継続して行っている。
本稿では、最新調査結果の中から従業員身分の執行役員の報酬・賞与について紹介する。
◎調査名:「役員の報酬等に関する実態調査」
1. 調査対象:全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3647社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上。一部「資本金5億円以上または従業員500人以上」を含む)70社の合計3717社。ただし、持株会社の場合は主要子会社を対象としたところもある。
2. 調査時期:2019年7月8日~9月17日
3. 集計対象:前記調査対象のうち、回答のあった142社。産業別、規模別の集計社数は下表のとおり。本調査は社名を秘匿扱いで行ったため、会社名を一切公表していない。所属業種については、調査時点におけるものとした。なお、項目により集計(回答)企業は異なる(項目により回答していない企業があるため)。
4. 利用上の注意:[図表]の割合は、小数第2位を四捨五入し小数第1位まで表示しているため、合計が100.0にならない場合がある。また、本文中で割合を引用する際には、実数に戻り再度割合を算出し直しているため、[図表]中の数値の足し上げと本文中の数値とは一致しないことがある。
従業員身分の執行役員の報酬と賞与
経営環境の変化が進む中で、取締役の機能を経営の意思決定と監督に集中させ、その意思決定に基づいて業務執行に専念する執行役員の制度を設ける企業が年々増加傾向にある。日本監査役協会の「役員等の構成の変化などに関する第19回インターネット・アンケート集計結果(監査役(会)設置会社版)」(2019年5月)によると、執行役員制度を導入している上場企業の割合は75.5%と全体の4分の3を占めている。
執行役員について、現行の会社法では明確な定めはないが、制度導入企業では取締役が執行役員を兼務するケースと従業員身分の執行役員を設けるケースの双方が見られる。本調査では2014年以来5年ぶりに、「従業員身分の執行役員」に絞って、報酬と賞与の水準を調べてみた(なお「指名委員会等設置会社」で設けられている「執行役」は本集計には含めていない)。
従業員身分の執行役員の選任状況[図表22]
回答企業の約7割が選任
今回の調査では、取締役兼務を含む「執行役員制度の有無」ではなく、「従業員身分(取締役兼務を除く)の執行役員の有無」として設問した。集計結果は[図表22]のとおりとなり、従業員身分の執行役員を選任している割合は、規模計で68.3%、規模別では1000人以上74.4%、300~999人79.2%、300人未満でも52.9%と半数超に達している。
役位別の年間報酬[図表23~24]
非役付の執行役員は1511万円
役位別の年間報酬は[図表23]のとおりで、専務執行役員3076万円、常務執行役員2415万円、非役付の執行役員が1511万円となった。参考まで、今回調査の取締役(兼務は除く)の水準(60社・1775万円)と比較してみると、非役付の執行役員の年間報酬は85%程度の水準となっている。また、最も集計社数の多い非役付の執行役員の年間報酬を規模別に見ると、1000人以上が1985万円、300~999人が1356万円、300人未満が1163万円となっている。
【図表24】賞与の支給有無別に見た
従業員身分の執行役員の報酬と賞与
執行役員についても、常勤役員と同様に賞与支給の有無による違いを、①支給あり、②(もともと制度はあるが)業績等都合で不支給、③賞与はもともとない――の3パターンに分けて集計した。集計結果は[図表24]のとおりで、集計社数が少ない専務執行役員(7社)以外について見ると「①支給あり」は常務執行役員で35社中23社(65.7%)、非役付の執行役員で88社中59社(67.0%)となり、常勤役員に比べて賞与を支給している企業の割合が高くなっている。
「①支給あり」と「③賞与はもともとない」企業の年間報酬を比較してみると、常務執行役員は、①2528万円に対し、③2220万円と300万円以上の開きが見られる一方、非役付の執行役員は、①1526万円、③1548万円と後者が上回り、その差も小さなものになっている。
年間報酬の分布[図表25]
非役付の執行役員は「1200万~1400万円未満」が最多
役位別の年間報酬分布は[図表25]のようになり、専務執行役員は最頻値の「3000万円台」に全体の5割が集中。常務執行役員は最低912万円から最高5150万円の幅で分布しており、最頻値は「2200万~2400万円未満」の17.1%。非役付の執行役員は、最低650万円から最高4610万円まで分布の幅が広いものの、最頻値の「1200万~1400万円未満」19.3%を含む800万~1600万円未満の範囲に全体の6割余りが収まっている。
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