好況時に優秀な人材を採用する難しさ
転職希望者の状況の変化を受けて 紹介会社、企業に求められる柔軟な対応とは
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支給されなかった賞与を、転職先で補てんしてもらえる?
一般的に賞与は、査定対象期間の働きに対して支払われるものだ。その考え方でいけば退職を予定していても全額支給されることになる。しかし、毎月の給与と違って賞与に関する厳密な法律はない。企業によって規程が異なるため、転職すると減額されてしまうかもと心配する人が出てきても不思議はない。
そんな時は、こう説得することにしている。
「ここは長期的な視点で考えてみませんか。一回の賞与の金額はどれくらいでしょう? それに対して転職してキャリアアップに成功した場合、年収はいくら上がるでしょうか。しかもその年収は毎年支給されるものです。今回の賞与がゼロでも、トータルではキャリアアップを選んだ方が有利ではないですか」
人材紹介会社からすると賞与が支給されるかどうかで悩んでいるのは、あまりにも近視眼的だ。しかし、現実に家族がいて、住宅ローンや子供の教育費が、という話になると、ボーナス一回分は小さいとは言えない。転職した場合、査定期間の関係で冬のボーナスも全額は出ないことが多い。つまり、タイミング的にまる1年間賞与なしという可能性もあるのだ。
「転職によって賞与が支給されなかった場合、新しい会社でその分を補てんしてもらえるのでしょうか」
Eさんは、真剣にそんな質問をしてきた。もちろん無理なお願いだが……。
「では、転職先の会社に、入社をしばらく待ってもらうのはどうでしょう」
「そんなことが出来るんですか?」
「その条件で交渉しますよ」
賞与が支給されてから退職手続きを開始すると、引き継ぎなどでさらに1~2ヵ月は必要になるだろう。面接から入社までに、半年ほどかかるケースも出てくるが、好況時に優秀な人材を採用しようと思ったら、企業側にもそれぐらいの柔軟な対応が求められるのである。
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