キャリア人材よりも難しい「若者の転職相談」
職種を変えたい若手からの問い合わせ増 未経験が採用のネックに……
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契約社員からならチャンスがありますが…
こうしたキャリアチェンジを希望する20代の求職者のSさんに、紹介できそうな案件が舞い込んできた。管理系の仕事で、なおかつ「経験3ヵ月以上」という募集要項だ。実務経験3ヵ月というのは本当にかじった程度なので、未経験ではあるが熱意のあるSさんなら選考の土俵にあげてもらえるかもしれない。しかし、私は一つの見落としをしていた。
「しまった、契約社員の募集だった……」
キャリアの浅い人材を採用する場合、「最初は契約社員で」というケースは決して珍しくないが、現職で正社員として勤務しているSさんに紹介するのは少しためらわれた。
ただ、こうした案件の場合、「将来は正社員への登用の可能性あり」というケースも多い。よく見るとその求人にも同様の表現が付け加えられている。私はさっそく募集企業に電話で問い合わせてみた。
「先般いただいた募集の件で、一点うかがいたいことがあるのですが」
こういう場合に確認したいのは、「正社員に昇格するための条件は何か、これまで契約社員から正社員になった事例はあるのか、確率はどれくらいか」といった点だ。ここがクリアになれば、Sさんに紹介することができるかもしれない。
その返答は「今回の募集ポジションは初めての採用なので、昇格した実績はない。ただし他の職種の場合は大体1年程度でほぼ正社員になっている」というものだった。
こうなると最終的に応募するかどうかは、Sさん自身に判断してもらうしかない。
「契約社員ですか」
当然だが、Sさんの反応は思わしくない。
「そうなんです。確認したところ、これまで契約社員で入社した人も1年程度でほぼ正社員に登用されているそうです。キャリアチェンジを成功させるチャンスになるかもしれないと思い、ご紹介することにしました」
「少し検討させてください」
後日、Sさんからは「今回は見送らせてほしい」との回答があった。
「『ほぼ正社員になれる』ということは、なれないケースもあるわけですよね。もしそれで再度転職することになれば、20代で三社目になってしまいますから、慎重にいきたいと思います。次の会社はできるだけ長く勤務したいと思っていますので」
もっともな話なので、私も深追いはしなかった。在職中でもあるし焦って転職する必要はないというのもよくわかる。ここはじっくり腰を据えてサポートするしかないだろう。さまざまな可能性があるだけに、迷いの振れ幅も大きいのが20代の転職だ。キャリアコンサルタントはそれにしっかりと向き合っていかなくてはならない。
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