紹介会社による求職者の「入社意思固め」は可能?
人材紹介サービスに寄せる期待 不人気な職種ほど、手厚い採用支援を求められるが…… 人材紹介の紹介料は、一般的な求人サイトを利用して採用するよりも割高になることが多い。その主な理由は、実際に入社した場合にだけ費用が発生する成功報酬制だからだ。企業によっては、割高な紹介料は「面接以外のすべての面倒を見てくれるサービスだから」と勘違いしている場合もある。その中でも多いのが、候補者の入社意思固めも紹介会社の仕事だと思っているケースだ。
「他社は入社意思まで固めてくれますよ」
「これからは、ちゃんと入社意思の固まった候補者を紹介してください。面接して良い人材だと思っても、最終的に辞退されたら、時間と手間ばかりかかってしまうことになりますから」
いいところまで進んでいたR社での選考。しかし、候補者から辞退したいという連絡がきてしまった。しかも、R社を辞退する人材は今回が初めてではない。以前にも内定者が辞退している。採用担当が機嫌を悪くするのも仕方のないことだった。
こういう時、紹介会社はひたすらお詫びするしかない。
「役員面接までセッティングしていたのに急に辞退されたら、そんな頼りない紹介会社は使うなと言われてしまいます」
採用担当者はある程度の事情を理解してくれているとしても、役員や他部門の部長クラスになると、「高い紹介料を払っているのになぜ辞退されるのか」と考える人も少なくないのかもしれない。
先述のように、人材紹介の手数料が割高なのは完全成功報酬制だから。採用できなかった場合は費用が一切発生しない。しかし、企業側からすると、忙しい管理職や役員が何度も面接をしたり、内定した場合には初年度給与の計算をして内定通知書を作成したりと、かなりのコストが発生しているという意識があるのだろう。紹介会社は、あくまでも候補者の意思を尊重するのが基本的なスタンスなのだが、企業側としては、「もっと積極的に候補者に働きかけて、入社につなげるのが紹介会社の仕事だ」と考えるのも自然なことかもしれない。
R社は、業界の中では人気がないといわれる「セールスエンジニア」や「サポートエンジニア」の募集に力を入れていた。技術者の場合、どうしても開発職に就きたいという人が多く、上場企業で業績も悪くないR社も採用には苦労している。それだけに「これだ」というスペックを持った人材を目の前で逃してしまうのは許されないという思いもあるのだろう。
「○社はちゃんと入社意思を固めた人を紹介してくれますよ。次の人材がまた辞退することになったら、本当に契約を見直すことになるかもしれません」
同じ人材紹介会社の○社は辞退がない、と採用担当者は強調するのだった。
「次回は頑張ります。もう一度チャンスをいただけますか」
これは大変なことになったな……と私は思った。