有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll”【第43回】
CHROを考える(その7)
明るく楽しく元気!
株式会社日本M&Aセンターホールディングス CHRO/株式会社日本M&Aセンター 取締役 常務執行役員 人材本部長 人材ファースト管掌
有賀 誠さん
人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。
みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠
7月27日、丸の内の某所に、日本の著名なCHROや元CHRO、人事・組織論を専門とする代表的な大学教授、そして人材業界のリーダーたちを集め、懇親会「人と組織を語り合う会」を開催しました。
CHRO または元CHRO 34名、大学教授 8名、人材企業社長 5名に声をかけたところ、全員が参加を希望。当日はスケジュール的に都合がついた方34名が参加しました。日本の人事・人材分野のリーダーが集合しましたが、そのほとんどは「HRカンファレンス」常連の登壇者です。
会場の雰囲気はまるで「同窓会」。久しぶりに会った親友や同志と肩を抱き合う光景が、あちらこちらで見られました。誰もがリモートやズームに辟易(へきえき)としており、リアルなコミュニケーションを心の底から欲していたのでしょう。
懇親会では、会話のきっかけとして、以下の4点を掲げました。
- 日本にCHROは不足している?
- 自分は後継者を育てた?
- そもそもCHROって育てるもの?育てられるもの?
- 業界や企業を越えてできることってある?
これらのテーマに沿ってどのような議論がなされたのか、ここでは詳細は述べませんが、最も印象的だったのは、一人ひとりの経験や見識が優れているのは当然のこととして、全員が強くポジティブなパワーを発していたこと。これは、人と組織に関わる人にとって非常に重要なことだと思いました。
ポジティブ・パワー
日本を代表するCHROたちは、ただ一人の例外もなく、「明るく楽しく元気!」で、極めてポジティブでした。全員が「宴会部長タイプ」と形容してよいかもしれません。
本連載の中では、CHROに求められる経営視点や戦略構築面での人物要件、さらには望ましいキャリア・パスや経験値について述べてきました(参考:第37回、第38回)。しかし、そのような理屈よりも大切なことに気づかされた思いです。
CHRO(そして、それが率いる人事部門)は、CEO/社長に次いで企業の組織文化への大きな伝播影響力を持つ存在です。そのリーダーが暗い人物であったとしたら、組織全体も暗いものになってしまうのではないでしょうか。
CHROは「明るく楽しく元気!」であることが必須であり、常にポジティブなパワーを発信していなければならないのです。私にとって今回の「人と組織を語り合う会」は、この当たり前のようでありつつ、シンプルで根源的なことを学ぶ機会となりました。
組織文化とリーダーシップ
CHROのキャラクターが組織文化を決定するという点について、いろいろと検索してみましたが、体系的・包括的な研究は存在していないようです。一方、CEO/社長の場合は、その言動こそが組織文化を形成するということが、もはや世の常識となっています。
本年1月に天に召された経営・組織心理学の大家 エドガー・シャインは、その古典的著作「組織文化とリーダーシップ」の中で、組織において文化が支配的な力を持つことを示唆し、特に信奉された信条・信念・価値観だけでなく、メンバーによって無意識のうちに当然のものとして保たれている考え方や認識の重要性を述べています。そしてシャインは、組織変革を含めて「戦略的意図をもって組織文化をつくること」はリーダーの役割だと定義づけています。
私はここに、CEO/社長と一緒に、あるいはそのシナリオ・ライターとして、「戦略的意図をもって組織文化をつくること」は、CHROの極めて重要なミッションであると加えたいと思います。そして、ポジティブな企業組織を目指すのであれば、CHROは「明るく楽しく元気!」でなければならない、と。
有賀誠の“Rock & Roll”な一言
まずは「明るく楽しく元気!」
それこそ、優れたCHROの前提条件かもよ
- 有賀 誠
- 株式会社日本M&Aセンターホールディングス CHRO/株式会社日本M&Aセンター 取締役 常務執行役員 人材本部長 人材ファースト管掌
(ありが・まこと)81年 日本鋼管入社。97年 日本GM入社。部品部門デルファイの取締役副社長兼AP人事本部長。03年 三菱自動車常務執行役員人事本部長。ユニクロ執行役員を経て06年 エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長。その後、日本IBM理事、日本HP取締役人事統括本部長、ミスミ統括執行役員人材開発センター長。23年4月より現職。ミシガン大学MBA。
HR領域のオピニオンリーダーによる金言・名言。人事部に立ちはだかる悩みや課題を克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。