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有賀 誠のHRシャウト!人事部長は“Rock & Roll”
【第21回】多様性を競争優位に(その4)

株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

有賀 誠さん

有賀 誠のHRシャウト! 人事部長は“Rock & Roll

人事部長の悩みは尽きません。経営陣からの無理難題、多様化する労務トラブル、バラバラに進んでしまったグループの人事制度……。障壁(Rock)にぶち当たり、揺さぶられる(Roll)日々を生きているのです。しかし、人事部長が悩んでいるようでは、人事部さらには会社全体が元気をなくしてしまいます。常に明るく元気に突き進んでいくにはどうすればいいのか? さまざまな企業で人事の要職を務めてきた有賀誠氏が、日本の人事部長に立ちはだかる悩みを克服し、前進していくためのヒントを投げかけます。

みんなで前を向いて進もう! 人事部長の毎日はRock & Roll だぜ!――有賀 誠

なぜ、ビジネス戦略の中に多様性を盛り込む必要があるのか、イノベーションという観点で、私の考えをお伝えしたいと思います。

同質性と多様性

伝統的な日本の大企業では、同質性を大切にしてきました。すべての社員が等しい価値観をもつこと、行動様式に統一性があることが求められてきたのです。誰が出てきても同じようなことを言うため、「金太郎飴」と称される有名企業の組織文化があることは、ご存じの通りです。

社員の気質が同質な企業において、組織編制は容易です。マネージメントからすると、乱暴にいえば、「誰をどこへもっていっても大丈夫」だからです。当然、職場や職務のローテーションも容易です。そして、「与えられた枠をきれいに塗りつぶすこと」を得意とする組織文化になるでしょう。(図A)

図A:同質な組織
図A:同質な組織

一方、多様性や異質性を内包する企業での組織編制は楽ではありません。社員一人ひとりのキャリアの志向やビジネス・パーソンとしての価値観が異なっているからです。また、枠内には収まらない人材もいます。マネージメントは、適材適所、人と人との噛み合わせを考え抜かなければ、機能する組織を実現することができません。このような「枠の中で塗り漏らしが発生するかもしれない一方、枠からはみ出る者がいる」という環境でのチーム作りにおいては、マネージャーの腕(と頭)が問われます。(図B)

図B:多様な組織
図B:多様な組織

私は社会人となって最初の16年間を日本の鉄鋼メーカーで過ごしました。典型的な「A:同質の組織」です。38歳で外資系企業に転職をしたとき、初めて「B:多様な組織」を目のあたりにして、心底驚きました。「部下が上司に歯向かうなどということがあるんだ!」という発見です。

多様性こそがイノベーションを創出する

生産工場のように、同じことを安定的・高品質に繰り返すオペレーションが求められる職場では、「A:同質の組織」を目指すことになるでしょう。ただし、「与えられた枠をきれいに塗りつぶすこと」だけに注力をしていると、時間とともに、そしておそらくは気がつかないうちに、その枠自体が縮小していくリスクに直面するのではないでしょうか。つまり、企業としての成長が見込めない、ということになります。

一方、イノベーションを起こすことが責務である研究開発部門であれば、「B:多様な組織」は必然です。「言われたことをきちんとこなす」というルーティーンの中からは、新しい発想など出てきませんし、変化への迅速な対応も難しいものとなるからです。「枠からはみ出る」部分こそが、企業としての器や枠組みを広げること、つまり非連続的な成長をけん引する存在となりえるのです。(図C)

図C:イノベーションをけん引する「多様性・異質性」
図C:イノベーションをけん引する「多様性・異質性」

女性管理職登用、外国人採用、障がい者雇用などを追求するのはよいことです。積極的に推進すればよいでしょう。しかし、それらはあくまでも手段であり、経営上の目的はより大きなところにあります。すなわち、真にイノベーションと成長を目指すのであれば、経営的にも、人事的にも、多様性を意図的・戦略的に組織の中に取り込むことを考えるべきだと思うのです。多様性を競争優位に昇華させるべく。

有賀誠の“Rock & Roll”な一言
世の中を変えてきたのは尖ったやつ。
必要だぜ、あんたの組織にも!

有賀 誠
有賀 誠
株式会社日本M&Aセンター 常務執行役員 人材ファースト統括

(ありが・まこと)1981年、日本鋼管(現JFE)入社。製鉄所生産管理、米国事業、本社経営企画管理などに携わる。1997年、日本ゼネラル・モーターズに人事部マネージャーとして入社。部品部門であったデルファイの日本法人を立ち上げ、その後、日本デルファイ取締役副社長兼デルファイ/アジア・パシフィック人事本部長。2003年、ダイムラークライスラー傘下の三菱自動車にて常務執行役員人事本部長。グローバル人事制度の構築および次世代リーダー育成プログラムを手がける。2005年、ユニクロ執行役員(生産およびデザイン担当)を経て、2006年、エディー・バウアー・ジャパン代表取締役社長に就任。その後、人事分野の業務に戻ることを決意し、2009年より日本IBM人事部門理事、2010年より日本ヒューレット・パッカード取締役執行役員人事統括本部長、2016年よりミスミグループ本社統括執行役員人材開発センター長。会社の急成長の裏で遅れていた組織作り、特に社員の健康管理・勤怠管理体制を構築。2018年度には国内800人、グローバル3000人規模の採用を実現した。2019年、ライブハウスを経営する株式会社Doppoの会長に就任。2020年4月から現職。1981年、北海道大学法学部卒。1993年、ミシガン大学経営大学院(MBA)卒。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

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デザイン思考
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