職場のモヤモヤ解決図鑑【第91回】
忙しすぎる管理職。部下への権限移譲をどうする?
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
-
山下 健悟(やました けんご)
関東圏のメーカー課長職45歳。20人ほど部下がいる。部下がもっと働きやすく、活躍できるチームを目指し、試行錯誤の日々。
20人ほどの部下を抱え、毎日奔走する山下さん。今日もあれこれ部下から呼び止められて忙しそうです。部下の資料の確認やクライアント対応、会議への出席などに追われ、ひと息つく暇どころか、自分のタスクを進める余裕もない様子です。現場の仕事にマネジメントと、膨大な業務を抱える管理職。仕事を軽減するよい方法はあるのでしょうか。
管理職業務はなぜ膨大になるのか?
現代の管理職は、従来のプレッシャーに加え、さらに膨大な業務を抱えているといわれます。管理職が忙しすぎる理由には、管理職に求められる役割の変化があります。
一つは、管理職のプレイング・マネジャー化です。少子高齢化や就職氷河期などの影響を受け、ミドル層が少ない組織では業務を任せられる人材が限られています。また、働き方改革の流れを受け、残業時間が制限される部下の仕事を巻きとる必要もあります。
もう一つは、部下に対するマネジメントの比重の高まりです。現代では、部下をそれぞれ個人としてとらえ、生活スタイルや価値観などを踏まえ、個別の対応をすることが求められています。指導方法一つとっても、傾聴力や話す力を駆使し、適切な対応が求められます。さらに、働き方が多様化しているため、異なる立場や働き方の部下たちの利害調整をする必要もあります。
- 【参考】
- 管理職にはどのような役割があり、どんな課題を抱えているのか。その解決のために人事リーダーができることとは(「日本の人事リーダー会」第19回会合レポート)
- 管理職とは|定義、役割、スキル、給与・残業代、負担について解説
管理職の負担を減らす鍵は、業務の整理
多くの業務を抱える管理職ですが、なかには「その人ではなくてもできる」ものもあります。あまりにも手が回らないと感じる場合は、管理職自身が業務を可視化し、優先順位をつけて整理することが重要です。とりわけ、担当業務を抱えているプレイング・マネジャーは、部下への権限委譲が負担軽減の鍵。部下を育成する際も、一人で抱え込むのではなく、チームで役割を分担することで、管理職の負担軽減につながります。
権限委譲の具体的なフロー
部下に仕事を任せる場合、適切な権限委譲が必要です。適切とは、部下の裁量範囲が明確であり、業務を遂行するうえで必要な要素が整っていること。丸投げでもマイクロマネジメントでもない、中間を狙う権限委譲が求められます。そのためには、部下のスキルを把握しつつ、個々のパフォーマンスを引き出せるようにサポートを行います。
部下のスキルを把握
権限委譲を行うまえに、部下のスキルを把握します。部下の得意・不得意や、業務経験、現在の業務量によって、適切な裁量範囲は異なります。相性のよいメンバーなど、職場内の人間関係の把握も重要です。ほかにも、部下の仕事に対する考えやモチベーションを日頃から観察します。
権限とゴールの共有
権限を委譲する際にポイントとなるのは、達成してほしいゴールを共有すること。ゴールがずれていると、権限委譲しても管理職が期待していた結果とずれてしまう可能性があります。また、途中でやり直しなどの指示があまりにも多く入ると、部下のモチベーションにも影響を与えます。
権限の範囲を明確にしておくことも重要です。「ここまでは一人で決めても大丈夫」と線引きすることで、部下は自由に動けるようになります。
環境整備・実行支援
部下がゴールを達成できるよう、環境を整備します。具体的には、必要なリソースをそろえるなど、管理職のほうが調整しやすい物事があれば、積極的にサポートします。全体の業務・スケジュールを把握し、進捗が遅れている場合は、直接手伝うことも必要です。
ツールや仕組みの使い方
効率的な権限委譲にはITツールが役立ちます。たとえば、部下の情報を一元管理できるタレントマネジメントシステムは、部下の状況把握に活用できます。部下のキャリアへの要望や過去の経験など、一人ひとりの情報を覚えておくのは難しいものです。ITツールがあることで、細かい部下の情報をもとに、適切な仕事の割り振りを考えられるようになります。
また、進捗を可視化し、チーム全体で共有するようなプロジェクト管理ツールも有効です。一人で仕事を抱え込むことを防ぎ、管理職の仕事の負担減につながります。こうしたITツールの活用は、あくまで一例であり、なにが適切かは職場によって異なります。現場の課題から、必要と思われるものに取り組むことが大切です。
【まとめ】
- 仕事の価値観の多様化など、さまざまな理由から管理職の負担は増えている
- 管理職の負担を減らすには、適切な権限委譲がポイント
- 権限委譲を行う際は、部下の経験やスキル、モチベーションなどに合わせて実施する
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!