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キーパーソンが語る“人と組織”

ダイバーシティ・リーダーシップが会社を変える、日本を変える
「自分で決められる人材」の育て方とは [1/4ページ]

小島 貴子さん

東洋大学理工学部生体医工学科准教授
埼玉県雇用・人材育成推進統括参与

日本の企業文化を良くも悪くも特徴づけてきたのは、「日本人・男性・正社員・新卒」が多数派を占める同質性の高さでした。しかし21世紀は、年齢、性別、国籍などを超えて、国内外のあらゆる人材がパートナーとなり、あるいはライバルになりうる時代。そうした変化と多様性の時代に、職場のキーパーソンとして求められるのは「自分で決める、決められるダイバーシティ・リーダーシップの持ち主」であると、東洋大学グローバル・キャリア教育センター副センター長の小島貴子准教授はおっしゃいます。元埼玉県庁の伝説のキャリアカウンセラーとして知られ、現在は企業の新人・若手教育支援にも力を注ぐ小島先生に、“本気”の人材育成論を熱く語っていただきました。


Profile
こじま・たかこ●1958年生まれ。三菱銀行(現・三菱東京UFJ銀行)勤務。出産退職後、7年間の専業主婦を経て、91年に埼玉県庁に職業訓練指導員として入庁。キャリアカウンセリングを学び、職業訓練生の就職支援を行い、7年連続で就職率 100%を達成する。2005年3月に埼玉県庁を退職。同年5月に立教大学で、社会と大学を結びつける「コオプ教育コーディネーター」に就任。07年4 月、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科 特任准教授。10年4月より埼玉県雇用人材育成統括参与に就任。11年4月より東洋大学経営学部経営学科准教授。12年4月より東洋大学理工学部生体医工学科准教授、東洋大学グローバル・キャリア教育センター副センター長。多数の企業で採用・人材育成コンサルタントおよびプログラム作成と講師を務める。二男の母。近著に『子育てが終わらない 「30歳成人」時代の家族論 』(共著、青土社)がある。
子育てが終わらない 「30歳成人」時代の家族論



“自分で決めた経験”に裏打ちされるダイバーシティ・リーダーシップとは

―― 新人や若手社員に主体的な意思決定を促し、「自分で決められる人材」を育てる――小島先生はこれからの人材育成において、「自分で決める」を最も重要なテーマに挙げていらっしゃいますが、私たち日本人はあまり得意ではありませんね。

そもそも日本の人材教育はこれまで学校であれ、企業であれ、子どもや若者たちに「自分で決めていい」という承認を与えてこなかったんです。じゃあ、誰が決めるのかというと、“みんな”で決めるんですね。私たちの社会は集団生活、集団行動が基本だから、みんなに諮って、みんなで合意できる選択肢を導き出していく。そういうと聞こえはいいけれど、要は、やたらと稟議を回す日本式の決済システムです。

日本では、個人が意見を持っていても、自分からはまず言い出しません。ほとんどの人が受け身で、「こんな問題がありますが、どうしましょうか」と他人から意見が出てくるのを待っている。「空気を読む」とか「あうんの呼吸」で落としどころを探り、そうこうしているうちになんとなく物事が決まっていくという感じでしょう。「自分で決める」ことへの承認を与えられないまま、日本人はそういう意思決定の方法に慣れきってしまったんです。

―― 日本的な物事の決め方では、どうしても時間がかかってしまいます。

激しい環境変化への対応が求められる時代に、スピードという点では明らかに不利でしょうね。ましてこれからはもう、ビジネスでも何でも、日本国内だけで完結することはありません。社会的、文化的背景の異なる世界中の多様な人々と協働して、さまざまな問題解決にあたらなければならないのですから、当然、従来のようなやり方では通用しないんですね。

まずは自分の考えを決めた上で、進んでそれを発言し、意思決定プロセスに参加していくことが重要です。「こうしましょう」「こうすべきです」と自分の意見を明確に表明し、「なぜならば」と根拠を述べて、その決定を実行したらどういう結果になるかという展望や予測を説明する。そうした一連の作業を短いスパンでどんどんやっていかないと取り残されてしまうでしょう。想定外のことが次々とおこり、あたりまえだと思っていた常識や環境もじつは危うい、そんな正解のない時代だからこそ、自分で自分の意見や行動を決められる能力が求められるんです。若いうちにそれをトレーニングしないまま、労働市場へ出て、求められたときに応えられないとどうなるか。使われるだけの、ワーカーになってしまう可能性が高いでしょうね。

―― つまり、決めるのではなく、決められたことに従う側に回らざるをえないということですか。

小島 貴子さん Photo

そうなんです。自ら決める仕事、つまりクリエイティブなことをやる側に回るか、決められた仕事だけをやる側に回るか――この違いを生むのがまさに「自分で決められる力」があるかないか、そして過去に自分で決めた経験がどれだけあるかだと、私は考えています。

何であれ、決断には責任が伴います。それが組織やチーム全体に関わる問題ならなおさらでしょう。だから自分で決めるためには勇気が必要ですし、その勇気があるからこそ、立場や意見の違う相手をも引き付け、巻き込み、より大きなことが決められるようになっていく。私は、これを「ダイバーシティ・リーダーシップ」と呼んでいます。変化と多様性(ダイバーシティ)に直面する社会や組織において求められるリーダーシップの要件は、他者を率いるとか、束ねるではなく、まず自分で決められること。実際に自分で決めた経験によって裏打ちされるのが、ダイバーシティ・リーダーシップなのです。


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