楽しく働き、成長することができる
「プレイフル」な学び方・働き方とは?(後編)[前編を読む]
同志社女子大学現代社会学部現代こども学科 教授
上田信行さん
「プレイフルスピリット」と「リフレクティブ・インテリジェンス」の両輪を持つ
内省するような行為も必要ですか。
僕は常々、「ラーニングデザイナーになろう!」と言っています。自分の学びは自分で開拓していくからこそおもしろいのです。自律した人たちが共に生きるからこそスリリングなのです。このような人たちがプレイフル・カンパニーの企業風土をつくっていきます。プレイフル・カンパニーがあるわけではなく、気がついたら、いつの間にか、カンパニーがプレイフルになっているのです。「ラーニングデザイナーになろう!」と言いましたが、「ラーニングデザイナー」になるためには二つの要件があります。一つは「プレイフルスピリット」。行け行けどんどんの精神。圧倒的な知的好奇心です。いまこの瞬間を思い切りアクティブに生き抜ける精神がないといけません。もう一つは、「リフレクティブ・インテリジェンス」。省察的知性ということで、一度立ち止まって、これまでの自分を振り返り、省察(リフレクション)するということです。
「ラーニングデザイナー」には、この両輪があることが大切です。つまり、いろいろな体験をして、その体験を再構成していくこと。やったことを振り返って、吟味していくことです。言い換えれば、「体験」を「経験」に昇華させていくということ。体験したことに意味付けがされて、初めて経験となるからです。
その際、身体だけで覚えるのではなく、1回立ち止まって言葉にする必要があります。言葉にして、リフレクティブに振り返り、「次はこうすればいい」という思いを新たにし、また全力で動いていくのです。その際、動きながらリフレクションを行ってみてください。動きながらリフレクションすること、止まってリフレクションすること、この両方が必要です。いま、僕も話をしながら、自分の中でリフレクションしながら考えています。
「メタ認知」という概念がありますが、これは物事を俯瞰したり、多角的な視点から眺めてみることです。メタ認知を行うことで、自分を取り巻く状況を冷静に把握し、状況に応じて振る舞いを変えていけるようになります。こうしたことを全て含めて「プレイフル・インテリジェンス(PI)」と言ってもいいのかもしれませんが、「プレイフル」な知性というものは、どんどん動くだけではなく、それを俯瞰し意味付けするメタ認知の力がすごく大事だと思います。身体と認知が両輪として動きながら、どんどんといろいろな人にぶつかっていく。このような人たちが、「プレイフル・カンパニー」のカルチャーを創っていくように思います。
時代が、上田先生のおっしゃっていることにようやく追い付いてきたような気がします。最後に、企業の人事・教育担当者の方に対して、メッセージをお願いします。
いま大きな変化の中で、人事や教育担当の方も方向性が定まらず、行き詰っているのではないでしょうか。そこで「プレイフル」という概念を提案したわけですが、これまではかなり異端扱いされてきました。「楽しいだけではダメで、勉強をちゃんとしないとダメです」「よく考えてから、行動に移すことが大事です」とよく言われましたから(笑)。
誤解があると困るのですが、猪突猛進がいいということではありません。自分が本当に楽しいと思って動くことが、大事なのです。周囲は「あの人は、行け行けどんどんだから」と言うかもしれませんが、本人は全然そうは思っていません。「めちゃくちゃ楽しい」と思っているのです。そういう意味でも「プレイフル」がいままでのモーレツ主義とは、一線を画すものであることは明らかです。
本当に意味があって、自分が楽しいと思える「プレイフル・カンパニー」だから、早く月曜日に会社に行きたくなるのです。また、そう思える人は、「オン」と「オフ」の両方をうまく楽しめる人です。自分で自分を「プレイフル」にし、周囲も「プレイフル」にしてしまう人。また、周囲を「プレイフル」にしようと思うからこそ、自分も自然と「プレイフル」になるわけです。そのような意味でも、これからの時代は「プレイフル・インテリジェンス」、すなわち、「ものごとをドラマチックに楽しむセンス」が求められるように思います。いずれにしても、働く人がワクワク・ドキドキする気持ちを、仕事の場で本気で感じられるように環境をデザインすることが、これからの人事・教育担当者の方たちに求められるのは間違いないと思います。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。