テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査
パーソル総合研究所
【調査内容】テレワーカーの不安感や孤独感の実態を把握し、それらの解消法を探る。
調査対象:
■共通条件:全国、正社員、20~59歳男女、企業規模10名以上
■個別条件:
(1)テレワーカー【メンバー層 n=1000】テレワーク勤務の条件は以下。
【1】モバイルワーク・在宅勤務・サテライト勤務のいずれかの実施者
【2】テレワークの勤務時間は問わず、1時間でも実施したら「1日」とカウント
【3】テレワーク3形態の合計頻度(カウント方法は【2】)で、2019年12月~2020年2月の期間内に1ヵ月あたり平均2日以上テレワークを実施した者
(2)同僚にテレワーカーがいる出社者(非テレワーカー)【メンバー層 n=1000】
(3)テレワーカーをマネジメントしている上司層【n=700】条件は以下。
2019年12月以前から、1ヵ月あたり平均2日以上テレワークを実施した部下をマネジメントしていること
※(1)(2)は性年代構成比が極力同質になるようにコントロールしてサンプル回収を実施
調査時期:2020年3月9日 - 3月15日
調査方法:調査モニターを用いたインターネット定量調査
調査実施主体:株式会社パーソル総合研究所
テレワークに関する不安
1)テレワーカー本人の不安
テレワーカー本人が抱いている不安の1位は「相手の気持ちが察しにくい」で39.5%、2位は「仕事をさぼっていると思われないか」で38.4%(図表1)。
テレワーカーの不安に関する設問として12項目を用意したが、いずれの項目についても30~40%程度の人が不安を抱えていた。また、12項目のうち1つでも不安を持っている人の割合は64.3%であり、何かしらの不安を持っている人は多い。
2)テレワーカーをマネジメントしている上司の不安
テレワーカーをマネジメントしている上司の不安の1位は「業務の進捗が分かりにくい」で46.3%、2位は「相手の気持ちが察しにくい」で44.9%(図表2)。上司の不安に関する設問として9項目を用意したが、いずれの項目についても30%後半~40%後半の人が不安を抱えていた。9項目うち1つでも不安を持っている上司の割合は75.3%であり、テレワーカー本人よりも多い。
3)テレワーカーに対する出社者の疑念・不満
テレワーカーに対して出社者が抱いている疑念・不満の1位は「さぼっていると思うことがある」で34.7%、2位は「相談しにくい」32.3%(図表3)。テレワーカーに対して1つでも疑念・不満を持っている出社者の割合は58.1%。
4)テレワーカーと出社者の気持ちの比較
テレワーカーが不安に思っているほどには、出社者はテレワーカーに対して疑念・不満を抱いていない(図表4)。ただし、出社者も20~30%程度の人が疑念・不満を持っているため、注意は必要。
5)テレワーカーの孤独感
テレワーカーで「孤立していると思う」と回答した人は28.8%(図表5)。また、テレワークの頻度が高いほど孤独感は高くなる(図表6)。
職場のテレワーカー比率と心理的ストレス
1)テレワーカー比率と不安感・孤独感
職場におけるテレワーカーの比率が2~3割のときに、テレワーカーの不安感や孤独感がピークとなった(図表7)。職場においてテレワーカーと出社者が混在している「まだらテレワーク」がもたらすテレワーカーへの心理的ストレスには注意が必要。
2)テレワーカー比率と出社者の疑念・不満
職場におけるテレワーカーの比率が高くなるとともに、テレワーカーに対する出社者の疑念・不満も高くなっていく(図表8)。
テレワーカーの不安と転職リスク
テレワークで評価面の不安を持っている人は転職意向が強くなっている。上司からの公平・公正な評価に対する不安が当てはまる人は、当てはまらない人に比べて転職意向が1.8倍。仕事をさぼっていると思われないかという不安が当てはまる人は、当てはまらない人に比べて転職意向が1.7倍(図表9)。
テレワーカーのマネジメント
上司とのコミュニケーションについて、リアルな場で顔を合わせる「対面」の場合と、リアルな場で顔を合わせない「非対面」の場合を比べると、「非対面」の方が「報告」「連絡」「相談」「雑談」のすべてが行われない傾向にある。また、「非対面」の中でも、テレワークでよく使われるだろう「Web会議、テレビ会議」では、それらがさらに行われていない(図表10)。
観察力が高い上司は、テレワーカーと信頼関係を築いている。上司と部下の信頼関係はテレワーカーの評価面の不安や孤独感を抑制していた。さらに、出社者のテレワーカーに対する疑念・不満感の抑制も確認された。
「まだらテレワーク」のリスクに注意すべき。マネジメントに工夫が求められる
今後、テレワーカーと出社者が混在する「まだらテレワーク」と言える職場が増えていくだろう。「まだらテレワーク」の職場では、テレワーカーが少数派になることで周囲の目が気になって心理的なプレッシャーが増し、不安感が増す。最も不安感が高いのはテレワーカーの比率が2~3割程度の職場だ。出社者がテレワーカーに対して疑念・不満を抱いている点も無視できない。マネジメントとして以下が求められる。
1)観察力(部下に関する情報を把握するスキル)を高める
上司が把握すべきなのは、部下についての「スキルに関する情報」「業務に関する情報」「キャリアの意向に関する情報」である。これらをきちんと把握することで、テレワーカーが抱える評価面の不安を緩和できる。また、ただ上司が把握すればよいわけではなく、部下に「見ていること」が伝わることも重要だ。きちんと見ていることを共有することで部下と信頼関係を築き、不安感や孤独感を軽減することにつながる。
2)部下とのコミュニケーションを意識的に増やす
遠隔地での部下とのコミュニケーションは、実際に顔を合わせたときよりも、量と質を一層充実させる必要がある。雑談から部下の情報が得られることもある。
3)出社者の疑念・不満感も無視しない
「まだらテレワーク」の職場では、テレワークが原因となって職場の人間関係に“ギスギス感”が生まれる可能性がある。このことを念頭に置き、テレワーカーだけではなく、出社者をフォローすることも忘れてはいけない。一人ひとりに寄り添ったフォローをしていくことがマネジメントの鍵になる。
※本記事は、株式会社パーソル総合研究所が行った調査をもとに作成しました。
※本調査を引用する場合は、出所を明示してください。
記載例:パーソル総合研究所「テレワークにおける不安感・孤独感に関する定量調査」
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